国木田独歩『牛肉と馬鈴薯・酒中日記』 (新潮文庫 (く-1-2))読了

牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (新潮文庫)

牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (新潮文庫)

昔の酒飲みは、酒飲み続けの状態になると、ちゃんと(神様のはからいかなんかで)、
すぅっと死ぬんだなあ、と、思いました。まあ小説なんで、実際の世相は分かりませんけど。
それに、酒中日記の主人公こそ、吾輩は猫であるの猫並みに事故死ですが、
困窮由来のほかの小説だと縊死とか飛び込みだし、発達障害の少年は、鳥になってジャンプ。
すぅっと死ぬわけでもないですね。やはり苦しむ。
酒中日記だけ、そんな簡単に財布が落ちてるわけないだろう、ご都合主義だ、の展開で、
最後も、いくらでも酒飲ませてくれる田舎で若い娘に種付けして事故死という落ちで、
ちょっと鼻白みました。幸せでよかったですね。うらやましい。(棒。みたいな。
人こそ死にませんが、運命論者という話の出だし、隠れ酒のシーンが、
いちばん分かりやすかったです。コクリコ坂みたいな飲酒理由なぞもう主客転倒して、
酒にガッチリ嵌められてしまったなこの人、と冒頭で思いました。
今みたいに簡単に酒が手に入る時代じゃないですけど、運命論者の主人公は、
酒が簡単に手に入る経済力がまだお話時点ではあるみたいなので、もうおえんなと。
明治時代、爵位のある人。
でも、もう少しすると溶けるし、何もかも失うかもしれませんが、
それは小説が終わったあとの別の話。独歩先生はその後渠に二度と遭えてない。
結局、牛肉と馬鈴薯みたいに、ステーキ食べたいな、と思いました。
http://bf-king.com/menu/images/02.jpg
作者が飲酒という視座を持ちえたのは、キリスト教との関連なんですかね。
伝統日本からは出にくい問題意識のような気が…
【後報】
明治期の日本は欧米に追い付け追い越せの風潮のなか、
欧米並みの禁酒で肩を並べようという人たちもいたみたいです。
酒を富国強兵生産力増大の阻害要因と見做した人たち。
下記の本で読みました。

禁酒法と民主主義』 (社会の科学入門シリーズ)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20141127/1417090305
(2015/2/28)