『酔いどれの誇り』 (1984年) (Hayakawa novels)読了

酔いどれの誇り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

酔いどれの誇り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

図書館でふとタイトルを見て借りました。
原題“The Wrong Case”からこの邦題はどうでしょう。
訳も、誰がどの台詞を喋っているのか分からなくなったり、
つなぎがおかしくなったりで、どうも感心しなかった。
検索で、まだ馳星周を名乗る前の馳星周パソコン通信時代、
この本にハマっていたとか出ましたが、
う〜ん。彼は原書読んだんでしょうか。原書は1975年刊。

頁85
「あの人、あなたなら力になってくれるといったんです」
「まあまあ、そうムキにならないでください」
「わたし、ときどき……なぜかムキになってしまうことがあって……」
「まあまあ」
「でも、気をつけます」
「けっこう」

ムキになっている語気や口調なしで、
ムキになってると判断しなければならないのはつらいです。

アル中に関しても、ファンタジー中心で、酒に関する愛があまり感じられませんでした。
酒を飲んだ、という描写はあるのですが、それがウイスキーなのか、
スコッチなのかバーボンなのか、ひとつひとつ丁寧に書かれない。
スピードマリファナヘロインはきちんと書き分けて、
「ドラッグ」のひとことで括るような乱暴なことはしてないのに、
酒に関して同様のこまやかな愛を見せないのはダメ。
銘柄も、カナディアンクラブが何回かと、あと、ワイルドターキーくらいかな。
http://www.ontariostyle.com/campaign_cc1314/images/main_head.jpg
主人公の名前がミロドラゴヴィッチで、
西武開拓地である地元の英雄(有名な悪党を退治した)の子孫というのは、
映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』で、
滅びゆく高潔なネイティブアメリカン文明から離れた主人公が、
野蛮な、英語もキレイに喋れないインチキ移民白人と遭遇するラストシーンを彷彿とさせます。

サイモンというキャラが結構その辺にいそうなアル中キャラでしたが、
ロクに活躍しないままアル中以外の理由で死んでしまったりで、
そういうのもなんだかなぁ、でした。
サイモンの死で、断酒してたレオがスリップして病院行きになるところくらいかな、
ありがちだと思ったのは。あと、頁95の、酔いどれのほとんどが自力で稼いでるという台詞は、
インディアンテリトリーとかの設定を考えても、ウソくさいです。
お話としては、人は酒とかドラッグとか関係なくトラウマサイコ、ということです。
他の話読むべきかなぁ、どうしよう。酒への愛がない酒飲みの話だからなぁ。
かといってまだ依存症描写とかもないし。