『一銭五厘たちの横丁』読了

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一銭五厘たちの横丁 (岩波現代文庫)

一銭五厘たちの横丁 (岩波現代文庫)

『下町酒場巡礼 もう一杯』*1頁112、
コラム 消えゆくルポライターで紹介されていたので読んだ本。
足で稼ぐタイプの事件屋から、立花隆のような収集データ分析タイプへの変遷を
綴ったコラムでした。前者の代表作としてこの本を紹介しています。

<変遷>

淋しき越山会の女王―他六編 (岩波現代文庫―社会)

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田中角栄研究―全記録 (上) (講談社文庫)

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田中角栄研究―全記録 (下) (講談社文庫)

田中角栄研究―全記録 (下) (講談社文庫)

島田一男や梶山季之の本でも加えようかと思いましたが、適当なのが思い浮かばない。
後者の発展形の前都知事の没落は、寂しいです。
都知事も、もともとは自民党イスラエル与党の比較研究とかやってた浮世学者だったから、
早く本業に戻れと思います。

岩波現代文庫から復刊されたのを契機に紹介ですが、
私が図書館で借りたのは1975年晶文社版。
ハードカバー。定価980円。しっかりしたつくりで、とても丈夫。
頁80で、小田急線新原町田と書いてあったりして、歴史を感じます。

出征軍人に留守家族のポートレートを送るボランティア業務があり(フィルムは配給)、
従事したアマチュアカメラマンが残したネガをもとに、
戦後作者が一軒一軒足で被写体とその縁者を訪ねて回るルポルタージュ
http://ecx.images-amazon.com/images/I/6168TPGW39L._SL500_AA300_.jpg空襲でまるごと
焼けた地帯もあり、
写真の大半が、
身元判明せず終わります。
まるで、JOJO28巻あらすじページの、
アブドゥルイギー花京院の画像のよう。
生き残ったひとひとりひとりには、
エピソードがあります。
が、
取材拒否も少なくなく、
また、自らの体験を言語化出来ず、
紙に書きえない人もいました。
転記しえたとして、例えば。

頁33
 この町には珍しい中学生の彼は、勤労動員先のゴム工場で八月十五日の放送を聞いた。
「女学生が泣いていた。良く晴れていた日でネ。B29がブンブン飛んでいてキレイだったなあ」
 一年たって、父は中支から帰ってきた。
「そう、夜だったな。土蔵のなかで勉強していたら『弘さん、弘さん!』って呼ぶんで飛び出していった。すると親父が立っていた。そりゃあ嬉しかった」
 だが、その嬉しさを写真のころに遡ると、彼にはもう一つの想い出がある。昭和十七年九月二日の夕方のことだった。家の前の公園で遊んでいると、母が格子をあけ、
「一緒に行かない?」
と声をかけた。
 彼は
「遊んでいる」
と答えた。
「そう」と短かく答えたまま、夕暮れの横丁から出て行ったその夜、母は隅田川に身を投げた。死体は見せてもらえなかった。

岩波現代文庫版も読んでみて、追記があれば後報で。
【後報】
岩波現代文庫版は、鶴見俊輔が解説してるだけ。
新しく不明写真が誰か判明したりとか、そういうことはないです。
(2014/2/12)