『大奥 17 』"oooku"(ヤングアニマルコミックス)読了

初出はメロディの2018年12月号 2019年2・4・6月号 

デザイン 湯浅レイ子 mP.inc ←目が悪くなってこの社名がなかなか読めないです。arD.inc?

時代考証 大石学(学芸大副学長)大石こずえ 正木理恵(学芸大院)

大奥 17 (ヤングアニマルコミックス)

大奥 17 (ヤングアニマルコミックス)

 

 こういう、人は見た目が十割的な、社交を意識した幸せそうな満面の笑みを漫画が描くようになったのは、実はごく最近、21世紀になってからではないかという仮説を建ててるのですが、誰かAIによる大規模解析などで実証してくれないかな~と。苦虫を噛み潰したような顔をしてると、辛気臭いので、幸せが逃げていきますが、昔の漫画は、作者の喜怒哀楽をはっきりと代弁していて、文台に置いた鏡に映った自分の顔、怒いかりとか激怒げきどとか憤怒ふんぬとか涙とか、幸せを描くにしても、ちばてつやが今でも描いてるみたいな、片目ウインクして舌出してピースサイン、みたいな笑みを写しとっていた気がするんですよね。こんな儚い幸せを漫画が表情として写しとるようになったのは、そんな古いことではないと思う。少なくとも作者が鏡に映った自分の顔を見て設計した表情ではない。他者を見て、こうあれかしと考えた、いっしゅんの至福の表情。

大奥 17 (ヤングアニマルコミックス)
 

参考文献

「徳川の夫人たち」「続 徳川の夫人たち」吉屋信子朝日文庫)「大奥婦女記」松本清張講談社文庫)「江戸城大奥列伝」海音寺潮五郎講談社)「徳川将軍家十五代のカルテ」篠田達明(新潮新書)「徳川将軍家の結婚」山本博文(文春新書)「絵で見る江戸の女たち」原田伴彦・遠藤武百瀬明治柏書房)「江戸城大奥100話」安西篤子監修(立風書房)「大奥の謎」邦光史郎(光文社・知恵の森文庫)「江戸城村井益男中公新書)「江戸城・大奥の秘密」安藤優一郎(文春新書)「江戸奥女中物語」畑尚子(講談社現代新書)「大奥の奥」鈴木由紀子(新潮新書)「大奥よろず草紙」由良弥生原書房)「江戸城『大奥』の謎」中江克己(KKベストセラーズ)「『江戸』を楽しむ」今野信雄(朝日文庫)「標準日本史年表」児玉幸多編(吉川弘文館)「江戸東京年表」吉原健一郎・大濱徹也(小学館)別冊歴史読本徳川将軍家歴史大事典」「徳川将軍家人物系譜総覧」(新人物往来社)「維新侠艶録」井筒月翁(中公文庫)「骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと」鈴木尚東京大学出版会)「江戸の性風俗氏家幹人講談社現代新書)「徳川『大奥』事典」編/竹内誠、深井雅海、松尾美恵子(東京堂出版)「2時間でわかる 幕末・維新の日本史」編/歴史の謎を探る会(河出書房新社)「歴史の読み解き方」磯田道史朝日新書)「新しい江戸時代が見えてくる」大石学(吉川弘文館)「幕末の将軍」久住昌也(講談社選書メチエ

なんとなく参考文献を引き写してみましたが、とりあえず性を超克した慶喜が惡、という展開でこれから暫く続くことは予想がつきました。実際の慶喜って、鴛鴦夫婦だったと聞いたような聞かないような。晩年の駿府生活は、自転車に乗ってたことしか覚えてません。

で、表紙のはかなげな家茂の、コスプレ全開が本巻の見どころだと思いました。頁89、頁119、頁125、頁130、頁175。男装したり女装したり武者だったり衣冠束帯だったり髪まで切ったり。家茂は、百合の理想のパートナーでしょうか(という詮索)

また作者の国語能力というか、セリフの作り方が、ちょっと21世紀離れしてるので、そこがこの漫画の魅力であることは言うまでもないと改めて思いました。日本語検定一級の最高敬語とかスラスラ解けるんじゃいか。

シーボルトの娘がカメオ出演してますが、誰へのオマージュだろうと思いました。みなもと太郎だったら凄い話で。

英語タイトルは表紙カバー折から。以上