『至福の本格焼酎 極楽の泡盛―厳選86蔵元』 (ちくま文庫)読了

至福の本格焼酎 極楽の泡盛―厳選86蔵元 (ちくま文庫)

至福の本格焼酎 極楽の泡盛―厳選86蔵元 (ちくま文庫)

著者
http://www.jozo.or.jp/iikamo/%E8%91%97%E8%BF%B0%E5%AE%B6%E5%B1%B1%E5%90%8C%E6%95%A6%E5%AD%90
以前に読んだ酒場本が、執筆当時の時間(物価や、登場人物の体調、年齢)を
封じ込めた本だったのに対し、この本は文庫化のさい、
きちんと注釈で情報更新しています。
価格だけでなく、出荷量、高齢の杜氏の逝去と代替わり(頁86)、
耐用年数の短い木桶の設備更新(頁93)まで、こまかく情報更新。
勿論Webのhtmlのようには更新し続けられないわけですが、
ロハスなテーマは取材もロハス(持続可能な形で継続)ってことでしょうか。
焼酎ブームの出ハナの単行本と、すっかり流通にのっかった時点の文庫化ですので、
情報更新作業は非常に意味があったと思います。
http://www.shochu-kikou.com/festa_2006/seisyu/images/kouza_rankmap03.gif
http://www.shochu-kikou.com/festa_2006/seisyu/kouza.html
コラム至福極楽に近づく話7 焼酎の味を引き出すユニークな酒器は、
吞めないのでテイスティングとか後味とかのみくちとか、
それに伴う「常圧蒸溜」と「減圧蒸留」の違い、甕とホーロータンクの違い、
麹の違いなどから来る味の差異についてアウトオブ眼中せざるを得ない私でも、
楽しめました。(佐藤を読んで、結局味を決めるのは水だな、と思いましたが)

頁158
沖縄のカラカラと抱瓶
 焼酎の酒器として最も古いのは、沖縄の「酎家(ちゅうかぁ)」と呼ばれる胴が平たい陶器の土瓶だといわれる。ただ持ち手が壊れやすく、改良されて作られたのが、持ち手のない急須のような形の「カラカラ」。名前の由来は、宴会で酒器を「カラ!カラ!(貸せ、貸せ)」と声をかけたからという説と、中に陶器の玉が入っていて、空になるとカラカラと音がなるからという説がある。現在使われているカラカラは、玉ありと玉なしがある。
 ちなみに、酎家(ちゅうかぁ)が鹿児島に渡って、改良されてお燗をするための黒ヂョカになり、カラカラは鹿児島を経て、球磨地方に伝わり、直燗をするガラになった。
 沖縄特有の酒器としては、上から見ると三日月形をしている「抱瓶(だちびん)」という酒瓶もある。農夫が畑仕事に携帯したもので、カーブが腰に沿うようになっている。現在では贈答用や花器などとして使われている。

ガラが白磁製が多いというのは、さすが城下に蔚山町を抱える朝鮮飴の国。
お猪口をチョクと呼んだりソラギュウと呼んだりするのも面白いと思いました。
http://www.matsuyafoods.co.jp/menu/upload_images/cry_original_gyuu_130711.jpg
http://www.matsuyafoods.co.jp/menu/curry/cry_original_gyuu.html
これはカレギュウ

飲酒理由を「だれやめ*1」、
だれ(疲れ)をやめ(とめ)るためという九州の思想も面白かったです。
主婦が家族の膳と別に寝酒するため、みりんに焼酎を混ぜた本直しを水屋に置く文化。
酒屋の紹介もあり、ここ*2など野津田観戦のついでに、
行ってみようかと思いました。

作り手の写真をみていて、百年の孤独の人の写真にはっとしました。
今検索で出てくる画像と全然違う。この本に収録されている写真は、
間違いなくこの人のある時代を切り取った秀逸なポートレートだと思います。
以上