『久里浜『アルコール病棟』より―臨床30年の知恵』読了

久里浜『アルコール病棟』より―臨床30年の知恵

久里浜『アルコール病棟』より―臨床30年の知恵

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『酒乱になる人、ならない人』*1で取り上げられていた本。
序文は盟友なだ いなだ。

頁25
私が時に「やめたくなければやめなくていい。泥酔して早く死んでしまえ」などというのはこのことです。私はこれを酔生夢死といっています。「正気で働く」ことは、人生の目的である“人生に酔う”ための手段です。

頁28
そしてAさんはアル中になり、治療を受けて治し、復帰してまじめに働くが課長にはなれない。これが世の中の厳然たる事実です。アル中が治ったから課長にしようとは、普通、社会ではありえない。

初期の文章はきついです。スカッともしますが、きつい。
頁78には、酒が止まったのにその後飼い殺しになってスリップした人の、
上司と医者の会話があります。飼い殺しはひどいと思いましたが、
よく考えると、この頃はリストラも派遣もなかったわけで、今とは物差しが違う。

この本は理論中心で、経験談はないです。そういうものを求めて読んだので、残念。

真先敏弘さんが引用してる部分は、頁88、114にありましたが、
やはり、なぜ覚醒剤が自発性と結びつくのか、分かりませんでした。

未成年の飲酒に絡んで、自販機規制についての議論が熱かったのだな、
ということは分かりました。某社のペンギンのCMが、ボランティア団体の抗議で、
なくなったとは知りませんでした。この団体の雑誌は病院などで見たような気がします。

久里浜は現在、病院の役割はデトックス、解毒だけ、みたいな方向と聞きます。
定年退職後、なんの備えもなく酒にはまる人が陸続と登場するので、
おのずとそうならざるをえないのでしょうか。
はたまた、ほかのアディクションが深刻さを増しているあらわれでしょうか。

この本に回顧談がないのは、すがすがしいですが、やはり読みたかった気がします。以上