『纏足の発見―ある英国女性と清末の中国』 (あじあブックス)読了

纏足の発見―ある英国女性と清末の中国 (あじあブックス)

纏足の発見―ある英国女性と清末の中国 (あじあブックス)

積ん読シリーズを一冊読み終えると、ひとつほっとします。
我が家のスペースがまたひとつ増える。

http://lowres-picturecabinet.com.s3-eu-west-1.amazonaws.com/38/main/62/239716.jpgこの本は、
中国における反纏足運動指導者のひとり、
リトル夫人を描いています。
不思議なことですが、
彼女のオウンネームは、
この本に全く記されていないです。
ミセス・アーチボルド・リトル。
アーチボルド・リトルの奥さん。
彼女は、
女性は「家庭の天使」であるべき、
というビクトリア朝に生き、
男女人口比が大きく不均衡だった
「余った女」問題を背景に、
本国を遠く離れた、
半植民地中国の長江中上流域で
貿易を営むアーチボルド・リトル
のもとに嫁ぎます。
http://www.npgprints.com/image/239716/-cornelius-jabez-hughes-alicia-ellen-neve-little-nee-bewicke-mrs-archibald-little

柳模様の世界史―大英帝国と中国の幻影

柳模様の世界史―大英帝国と中国の幻影

http://a2.mzstatic.com/us/r30/Publication/v4/a0/22/e6/a022e603-ebe0-51ab-30d2-ae4dc59c2141/4428_large.225x225-75.jpg欧米人の少ない中上流域に暮らしたことと、
彼女の異文化適応力が、
彼女を反纏足運動に向かわせます。
彼女は在中欧米女性の力を結集し、
西太后への上奏、李鴻章との会見、
孔子子孫からの反纏足発言を引き出すなど、
目覚ましい活動を続け、
本国に帰ってからは、その勢いそのままに、
英国における英国婦人参政権運動に没入、
そのためか、
英国人名辞典に収録されないなど、
http://a4.mzstatic.com/us/r30/Publication6/v4/46/dc/53/46dc5359-de06-2fd2-757e-b8af8185b1d0/14066747.225x225-75.jpg功績が埋もれたまま現在に至っているとのことです。

植民地に渡った本国女性と、
現地妻と宗主国男性の難しい関係は、
オリエンタルと白人の関係性もあいまって、
今でも脈々と続いていると思います。
例えば下記で、リービ英雄は幼少期台湾で過ごした時の母を、
そのようなバランスと、
バランス喪失にまつわるエピソードで回想しています。

我的中国 (岩波現代文庫)

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中国奥地紀行1 (平凡社ライブラリー)

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中国奥地紀行2 (平凡社ライブラリー)

中国奥地紀行2 (平凡社ライブラリー)

作者は、イザベラ・バードとリトル夫人を比較して、
ビクトリア朝の半植民地、植民地における女性自己実現を考察しています。
で、この本で書かれなかったのは、確かバードは腰だかどっかが悪かった話と、
あくまで旅行者だったバードと生活者だったリトル夫人の違いかな、と思います。
旅行者の現地との関わりは永遠にオブザーバー。深く交わり、変革を促すことは、ない。
だが生活者は、現地に根を張り、そこに水をやり、うねりを、波を生み出す。

どこに生きるにしろ、うねりを感じていたい。そう思います。