『東京スナック飲みある記 ママさんボトル入ります!』読了

作者のブログと実話ナックルズの記事の加筆改訂と書き下ろしによる本とのこと。

頁293
 今年の1月から半年あまりにわたったスナック街飲み歩きの旅は、思い返せば「再開発」という名の文化破壊行為に追いかけられ、追い立てられる旅でもあった。

頁306
『東京スナック魅酒乱』ではママやマスターへの長いインタビューから、スナックという場所の魅力をにじませたかったが、今回の主役はママでもマスターでもなく、「スナック街」である。
 長引く不景気にもかかわらず、東京都心部ではいまも、ものすごい勢いで再開発が進んでいる。昭和の香りを漂わせていた駅前飲食街や商店街が次々と壊されて、アトレやルミネや、どれもまったく見分けのつかない高層複合施設に姿を変えていく。そういうビルの中に入るのは、もちろん地元の喫茶店や魚屋や八百屋や本屋ではなくて、ドトール成城石井TSUTAYAだから、そこはもう新宿も錦糸町も北千住も、なんの違いもない。そうして小さな店、小さなビルを蹴散らして出現する高層ビルの街は、そこに育まれてきた歴史を、生活感を、コミュニティを完全に破壊する――森ビルが六本木文化を殺したように。

こないだはに丸のテレビ見てたらグーグルジャパンが出てきて、
調べたら森ビルの六本木ヒルズなんですね、グーグルジャパンの所在地は。

「はに丸」くん、NHKで復活 なぜかジャーナリストになりGoogleを突撃取材
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1408/12/news135.html

そういう本なので、各スナック街の形成と消長、執筆時点の状況について細かいです。
各地の赤線青線は無論、実際に指定された性の防波堤区域の話も書いてありますが、
立石の売血の話は初めて知りました。興味深かった。
つげ忠男五木寛之を引用して売血史を綴っています。
大宅壮一文庫ではないと思います。ウェブからの引用だから…

西新宿再開発の箇所を読んで思ったのは、リュームラカミのこの小説。

イン ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫)

イン ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫)

立ち退き家屋にステイする危険なエトランゼ。
確かにいそう、と、
飼い猫が全部ノラになった西新宿を歩きながら思ったことがあります。

頁230の「確立」は「確率」の誤字。
小田急線の駅はひとつも出てきません。新宿は出てきますけど。
梅ヶ丘とか、作者のイメージするスナック街じゃないのかな。

何人か、チャイパブならぬ中国人ママのスナックが出てきます。
台湾人ママの店まで出てくる。(日暮里)
そこを読んで思ったのが、押忍!空手部というマンガ。
連載完結にあたって編集者がまとめた全43巻登場人物一覧を見たことがあるのですが、
中国系は話が詰まると刺客助っ人としてちょいちょい出てくるのに、
コリアンがまったく「見えない」
このスナック本も、中国人ママは出てくるけど、
ニューカマーオールドカマーを問わず、コリアンのママやマスターは、
「見えない」もしくは、いない。
不思議です。
全然関係ないけど、押忍!空手部最強最後の敵は、
チベット独立を支援するために日本を出るんだよな、最後…

酒が飲めないママやマスターって、けっこういるんですね。
逆に、ずっと飲み続けてまだ吞まれてない古希のママとか、
人間以上のシオドア・スタージョンかと思いました。超越。
次はこれを読もうかと思います。どっとはらい

山田なおこ 写真集『スナック』

山田なおこ 写真集『スナック』