『肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見』 (中公新書 92)読了

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公新書 (92))

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公新書 (92))

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)

これも、世界の名酒事典よりぬきエッセイに入っていた、
麻井宇介『酒書彷徨』で取り上げられていた本。

田豊Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AF%96%E7%94%B0%E8%B1%8A%E4%B9%8B

こんな本です。

ルース・ベネディクトとか、欧米人が、欧米のものさしで日本を解析した本には、
おうおうにして日本人も目からウロコの良書があるのに、
日本人が欧米を解析した本は、無理して欧米のモノサシをつこてるから、
あちらの丸写しみたいになってる。
なので、「肉食」をキーワードにひとつ日本人のものさしから書いてやろう。

まず、ほんまに欧米は「肉食」なんか。日本人の物差しでは、そうだ。
欧州はコメが育たない気候だ。ムギは連作障害があり、
タネモミに対する収穫量もコメよりヒトケタ下だ。
そして欧州は、家畜の放し飼いに向いた気候だ。
だから、穀物と肉どっちが主食ということもない。
というか、主食副食という概念がたぶんない。乳製品も含めて。

肉食中心(家畜が常にいる暮らし)だとどうなるか。人間と動物の境界線線引きが厳格になる。
パン食中心だとどうなるか。粉挽きは個人では出来ないので階級が厳格になる。

てな感じで、婚姻やら動物愛護やら階層やら革命やら義務教育やらに翼を広げて
考察した本です。家畜の去勢から宦官、とかは出てこないです。欧州の考察だから。
一夫一妻制で動物との線引き、という考察のところで、イスラム圏はどうなのかな、
と思いましたが、それも出てこなかったです。
ただ、階級のところで、インドのカースト制との比較はあった。

欧州革命は階級の流動撹拌メルティングエントロピー増大を狙うより、
階級自体の地位浮上を狙った、という考察が面白かったです。
で、この本は翻訳されて欧米で読まれたのか?という点が少し心残りでしたが、
検索しても確認出来ず(そもそもどういうワードで検索したらよいか分からず)、
作者のWikipediaが日本語しかないわけなので、翻訳されていたとしても、
たいして影響なかったのかもな、と思いました。確認出来ませんが。
以上