- 作者: 宇野千代
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むかしの文庫本は活字が小さいとさかんに言います。
で、この本は旧版を借りたのですが、活字がいまの文庫本より大きかったです。
毎度のことでなんなんですが、寝ます。あとは後報で。
【後報】
青山二郎について、敬して遠ざけるタイプの人だという確信を強めた本。
頁65によると、青山二郎は痛風になったことがあるそうです。
頁74によると、宇野千代は酒を飲まない。
頁151に、睦ちゃんについての記述があり、白洲正子は宇野千代には何も言っていないですが、
この本の記述も、大岡昇平について言ってるのかなあ、とも思えるので、
結局、大岡が批判されるのは大岡の批判が甘いせいではないか、
もしくは、睦ちゃんについての部分が批判されるのだろう、と思いました。
頁53によると、今のウォッシュレットのようなものを自作して、
それを使っていたそうです。温水がいつも出るようにしてそれにホースをつないで、
肛門にあてる。昔のことだからカイチュウが出てきて、
それをコップに入れて体温と同じ温度で保存して、何日生きるか観察したとか。
別にそういうのはおかしなエピソードではない気がします。
頭脳と心臓の間に、通せん棒するものが全くないのである。(頁55)
それは、成功する人の条件のひとつな気がする。
頁30
父親に対して、世間普通の扱ひをしなかつたのは、兄の民吉も青山さんも同じであつたと思はれる。民吉は父親が眼の前にゐると、「下れ。」と言つたと言ふ。これは、戦前、伊東の青山さんの家で私が聞いた話であるが、青山さんもまた、親爺さんが眼の前に現はれると、「ハウス」と言つたと言ふ。こんなところへのこのこ出て来ないで、決められた自分の部屋にひつこんでゐろ、と言ふ訳である。青山さんは犬好きで、いつでも犬を飼つてゐる。飼犬に命令する言葉で、冗談に父親を制したのかも知れないが、或ひは冗談ではなかつたのかもしれない。
父親はこの当時夜釣りと外食生活だったみたいですが、
別に惚けてたわけではないようです。
頁69
青山さんの唯一つの金の出どころであるお母さんが亡くなつて、一体どうして生活を立てて行つたら好いか分らない。お母さんの死は青山さんにとつて、金の出どころがなくなつたばかりでなく、言つて見れば、生きてゐる気力の大半が失はれた。この頃の青山さんは独身ではなかつた。その結婚生活の全部をお母さんから支給される金によつて賄つてゐたのに、それでもなほ、青山さんにとつて、金は大切なものではなかつた。
私は無論銀の匙をくわえて生まれてきたわけではないですが、
さてこの人は何の匙をくわえて生まれてきたのだろう。
多少羨ましいが、自分は自分、他人(ひと)は他人、という言葉を、
これほど実感出来る他人は滅多にないと思いました。以上
(2014/11/19)