『エヴリデイ・ドリンキング』読了

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世界の名酒事典座談会に出てきた本。
『酒について』*1と重複した箇所もあると聞いていたので、
手を出さずにおいていたのですが、座談会でほめていて、
(訳者が事典に執筆してる事情のせいもある?と思いました…)
で、訳者が吉行淳之介でなく山本博であるということで、
なら読んだ方がいいかなということで読んだ本。
カクテル自作好きな人がまず楽しめる本だと思います。
ほかはどうだろう。以下後報
【後報】
ときどき、訳に苦労してるなと思ったのが、
頁30最高にナウいやり方
あと、付箋をつけ忘れたのですが、どうにも、どの時代の言葉を使えばよいのか混乱した、
かのような部分があり、印象に残りました。
吉行淳之介訳との違いを見せなければいけない辛さ、ですか。

頁145
ジャック・ダニエルは、品質の点でトップの座を確立している。ところが厳密にいうと、これはバーボンでなくテネシーウイスキーなのだ。ムーア郡のリンシュバーグでつくっているのデスゾ。オドロイタカ?
 リンシュバーグなどはおよそ、わざわざ行くところではない。もっとも私は行ってしまったが。ムーア郡は禁酒法が施行される地域になってしまったから、ボボ夫人の下宿屋で暮らす長い一日の間、飲めるものといったら冷たい紅茶の一杯くらいだったのである。今でもこの事態が変ったとは思えない。

新聞コラムを順序を変えず並べた本ですから、当節のパブやジュークボックスなどへの苦言有、
家飲み、それも、カクテルの創意工夫に日々並々ならぬ情熱を傾けている様が
興味深かったです。
プチ禁酒する回もあるんですが、そもそも禁酒を試みるという発想がある、
禁酒する人が市井に普通にいる、という文化土壌や社会風俗のなかでそれを行なっている、
その描写が日本と違うところだな、と思いました。

頁79
この二人の偉人は(いうまでもなく、アメリカ人だ)、一九六〇年代のある時期に、「アルコールが西欧文明に及ぼした影響」というとほうもない調査をやってのけたのだ。アルコールに起因する若死だとか、地位の喪失だとか、家庭の崩壊というような悲惨な事実を数かぎりなく並べたてた後で、それでも、若しソレが、つまりアルコールがなかったら、一九一二年頃までに、われわれの社会は心理的なストレスのために内部から崩壊してしまっただろうと結論づけている。だから、何かの試練を前にして、ジン・アンド・トニックを一杯ひっかけたいと思ったところでそう肩身の狭い思いをしなくてもよいのだ。

普通の人がそんなこと考えるところが西欧だと思いました。
日本じゃ般若湯飲む坊さんすらそんなこと考えない。
イスラム飲酒紀行によると、原始仏教は酒アカンのに。

頁166
ロシアに革命がおきたのも、いや、少なくとも革命があんなに血なまぐさくなったのも、皇帝ツァーリが戦時措置として三年間アルコールを禁止したからだ、と喝破した奴がいる。

あと、『酒について』には、二日酔いの対処法として、
延々セックスしまくる、という方法を挙げており、いろんな人が引用しているのですが、
この本にも同じ出典と思われる箇所があるのですが、その方法は削除されてました。
家庭に配達される、エッチ部分が釣り情報に替わっているスポーツ新聞のようです。
新聞コラムの酒エッセイといえば、道新の下記を、どうしても読まねばならない、
と改めて思いました。キンドルは買いませんけど。

さらば愛しき女と男よ (光文社文庫)

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札幌 深夜プラス1 (光文社文庫)

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以上
(2014/11/25)