
- 作者: 清水克行
- 出版社/メーカー: 講談社
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それで作者の本を読んでみようと思い、『日本神判史』*2についで二冊目です。
あとがきで、NHK大河日野富子が歴代大河で視聴率堂々のワーストワンだったことや、
司馬遼太郎の手に掛かっても室町時代を題材にした作品は凡庸で読むのに苦戦する、
室町時代を扱ったドラマや小説自体が少なく、かつ面白いものは皆無、とした後で、
頁223
これはべつにドラマの制作者や作家個人の力量の問題というよりも、きっと室町時代の人々の思考や行動が、そもそも近代の<物語>構造にはそぐわない性格をもっているからではないかと思う。彼らは現代人の「常識」とは遥かに異なる「常識」に生きていたのであって、それを現代的な枠組みに当てはめて考えること自体にまちがいがあるのではないだろうか。逆に言えば、そうした物語作家が汲みとれない深部に迫ることができるというのが歴史研究の醍醐味であって、歴史研究者の腕の見せどころなのである。
太平記を現代語訳で読んで面白いと思った人は多いと思うのですが、
あれは南北朝時代で、義満後が室町時代なので、違うようです。
太平記は義満で終わっていて、私が読んだ白話版の解説は、
義満後も戦乱は終わってないのだが作者がうんざりして打ち切ったのではないか、
でないと永遠に話が終わらないので、みたく書いてた記憶があります。
それは別にヒューマンな理由だけでなく、頁9、一五世紀という時代は、
地球規模の環境変動により巨大飢饉が頻発した時代だったから。
そんな時代にトラブル調停法として試行錯誤を重ねたあげく、
戦国時代各大名が成文法にとり入れた「喧嘩両成敗」が誕生普及し、
世界にも類を見ない日本人の「痛み分け」思考を法文化したものとなって、
いまの高校日本史で必ず出てくる単語になっている。ということです。
法人類学なんて学問があるのかとか、アジールを避難所の意味に読んでなかったとか、
「衡平」概念について学んだり、追ってゆくだけで過ぎゆく本でした。
耳そぎの本は未読ですが、ネットで喧伝される中国の凌遅刑を連想します。
(ちがうものですが)本書でも、頁12笑われるとキレる中世人など、
今の中国でもそうではないか、
アホやった子に親戚が説教に来て、レンジャーシャオニーア、
ひとのええわらいもんやでおまい、とのたまわるところなど、
似ているけれどもやはりどこか冷やかに違う、と思います。
喧嘩両成敗から三方一両損*3、大岡裁き*4といろいろ連想し、検索して、
ネットではソロモン王がどうのといろいろやってんにゃなあ、
と感心し、それで、貴州省で捕虜になって八路と間違えられた駒田訳『棠陰比事』、
東洋文庫オンデマンドの『鹿洲公案』、どちらも積ん読状態なのを思い出し、
いや、前者は読んだが後者が読みかけで積み上げたのか、
いつ読めるかなあ、どこに重ねたかなあ、と思いました。

- 作者: 桂万栄,駒田信二
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*1:
*2:読書感想 http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150630/1435670153
*3:http://dic.pixiv.net/a/%E4%B8%89%E6%96%B9%E4%B8%80%E4%B8%A1%E6%90%8D
*4:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%B2%A1%E5%BF%A0%E7%9B%B8#.E5.A4.A7.E5.B2.A1.E6.94.BF.E8.AB.87