『折り紙衛星の伝説 (年刊日本SF傑作選)』 (創元SF文庫)読了

SFというより、ことばを巡るあらそい、ものがたりをかたりべはどうかたるべきか、
に逡巡した作品群な気がしました。だから諸星大二郎の水着JKを収録したのかと。
同人誌作品まで手を広げて収録作品を探してる割に、概況からマンガを割愛するなど、
よく分からなかった。みんな、そのうち、コンピュータが小説を作れると信じてる気が。
プロットを決めて出だしの一行を書くと、あとは最適化最適化で最善の文章が続く。
そういうものにヒューマンな文章力がどう対抗してゆくか、悩み過ぎてるのかも。

頁322 三崎亜記『緊急自爆装置』
「それでは、自爆する権利は、自爆装置を買える金持ちにしかないということですかな? 彼も立派な市民の一人なんだよ」
 貧相な男の様子からすると、納税も免除されていることだろう。「市民の一人」ではあったが、「健全な市政」を支える市民ではなかった。もちろん、そんな内心の思いを吐露できるはずもなかったが。
「公共の場における自爆装置は、一種のセーフティネットとしても機能しているんですよ。予算がどうこうではなく、もっと市民目線で考えてほしいものですなあ」
 議員は、含みを持たせた声で身を乗り出した。

頁213 堀晃『再生』
 大阪駅北側にある家電量販店一階のこの商標のコーナーで一番安いモバイルルーターを買ってきてほしい。このノートパソコンを持っていけばわかる。半年前に解約したから名前をいえば前機種がわかるかもしれない。最低料金でネット接続できればいい。本人が行けないから、妻名義の契約でいい。
 三十分後に携帯に電話があった。
 今はスマートフォンテザリングを使う方が同じ値段で便利。月額料金は半年前まで使っていたモバイルルーターより安いそうです。ではそちらでもいい。番号の引き継ぎができません。しかたなかろう。私名義での購入になります。しかたなかろう。
 野菜の多い夕食が片づけられた頃に、妻がパソコンとスマホを持って戻ってきた。
 その夜は遅くまでスマホを試用した。テザリング機能も予想以上にスムースに作動した。これで病室の書斎化はできたことになる。
 消灯時間を過ぎてからは、ベッドに入ってスマホ単体を試用する。ポケットパソコンというべきもので、画面は小さく、入力は不便で、初めて関数電卓を使った時やMS−DOS機でプログラムを組んだ時の興奮はなかった。

商業出版社が同人誌作品を再録したアンソロジーを出すのって、
マンガでも盛んにその手の出版社で行われてましたが、同人誌でも本当は許されない、
パクリ作品をそのまま商業出版したアンソロジーを読んで、あきれてものがいえなかった、
想い出があります。しりあがり寿の幕末合唱団を、コマ割りもタッチも同じで、
聖闘士合唱団とした描いた作品とか。そういうことはノベルではないでしょうが、
やはり商業誌の枠内で再録してほしい気がします。根拠はないですが。

ことばの話に戻すと、だから魚籠の中に加奈の首なんて作品が収録されるわけで、

頁345 ■筆者のことば 諸星大二郎
 いわゆるSF小説というものを読まなくなって久しい。昔、たちの悪いSFマニアに散散たかられて、うんざりしたせいだ。

18編収めて本体1,300円とか、スマホ代も払わなならん今の高校生には、
少し高いんちゃうかなあ、五、六百円で買えるくらいの価格設定にしてあげないと、
アベノミクスの成果も薄れる気がします。高島雄哉『わたしを数える』が一番好きで、
オチは読めるのですが、そのオチを、いちばんきれいな台詞で表現したと思います。
もう少しだけ、このことばが美しいです。以上