『バッカーノ!The Rolling Bootlegs』"BACCANO!The Rolling Bootlegs" Written by Narita Ryogo Illustrated by Enami Katsumi 成田良悟 イラスト:エナミカツミ(電撃文庫)読了

済東鉄腸サンの本*1に出て来た本の中の一冊。どういう文脈で出て来たのか、もうまったく忘れてます。が、読みました。たぶんこのシリーズをいちばん熱く語ってたんじゃいか。

装丁者 荻窪裕司(META+MANIERA) Design:Yoshihiko Kamabe 第6回電撃ゲーム小説大賞〈金賞〉受賞作

電撃文庫創刊に際して  文庫は、我が国にとどまらず、世界の書籍の流れのなかで“小さな巨人”としての地位を築いてきた。古今東西の名著を、廉価で手に入りやすい形で提供してきたからこそ、人は文庫を自分の師として、また青春の想い出として、語りついできたのである。  その源を、文化的にはドイツのレクラム文庫に求めるにせよ、規模の上でイギリスのペンギンブックスに求めるにせよ、いま文庫は知識人の層の多様化に従って、ますますその意義を大きくしていると言 ってよい。  文庫出版の意味するものは、激動の現代のみならず将来にわたって、大きくなることはあっても、小さくなることはないだろう。 「電撃文庫」は、そのように多様化した対象に応え、歴史に耐えうる作品を収録するのはもちろん、新しい世紀を迎えるにあたって、既成の枠をこえる新鮮で強烈なアイ・オープナーたりたい。  その特異さ故に、この存在は、かつて文庫がはじ めて出版世界に登場したときと、同じ戸惑いを読書人に与えるかもしれない。  しかし、<Changing Time, Changing Publishing> 時代は変わって、出版も変わる。時を重ねるなかで、 精神の糧として、心の一隅を占めるものとして、次 なる文化の担い手の若者たちに確かな評価を得られ ると信じて、ここに 「電撃文庫」を出版する。 1993年6月10日 角川歴彦 バッカーノ! The Rolling Bootlegs  禁酒法時代、ニューヨーク。  裏組織“カモッラ”は重要な儀式を数日後に控えていた。  泥棒カップルはグランド・セントラル・ステーションに着いたばかりだった。  マフィアの三兄弟はちょっとした問題を抱えていた。  チンピラの少年は思い通りにならない現実にムカついていた。  職務に忠実な警部補はそんな彼らを疎 ましく思っていた。  そして、錬金術師の野望は200年を経て、未だついえる事はなかった。  彼らはまだ、互いに関わりの無い者同 士であった。  このマンハッタンに“不死の酒”が蘇るまでは――。

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頁58、『白旗計器』の意味が分かりませんでした。検索しても出ない。成田サンは今をときめくいい加減にしてよアグネス大学、もとい林真理子理事長の日大文理学部地球システム科学科のリモートセンシング研究室(中山裕則研)を卒業とのことですので、理系用語だとは思うのですが、それ以上分からない。昼行燈みたいな意味でしょうか。

頁176、バリツの意味を私は完全に曲解していて、私が数えるほどしか行かず買わずのコミックマーケットで購入した同人誌『少年チンプ』にシャーロック・ホームズがスタンドみたいのを使う荒木飛呂彦パロディまんがが載っていて、そこでのスタンドが「バリツ」と呼ばれていたので、それだと思ってしまったです。たしか少年チンプはその号で主力作家さんが商業誌デビューすることになったのでこれでおしまいとあり、そうか、それが成田良悟サンか、と勝手に脳内暴走してストーリーを作ってしまいました。少年チンプで検索すると、主催者の人は同人歴30年でサラリーマンとのことですので、成田サンではない。ちがった。

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このシリーズはチャイナタウンの話もあると脳内で模造記憶が構築されていて、この第一作がおもしろかったらそれも読もうと思っていたのですが、今検索してもチャイナタウンの話がヒットしませんので、模造記憶上等なだけかもしれません。頁184にリア・リンシャンという華人の姑娘が出ますが、「リア」なんて北京語は〈俩〉"lia"しかないので、てきとうにリア・ディゾンとリンシャンカイホウ(嶺上開花)を足して作ったキャラだと思います。このページに北京ダックみたいな料理が出ますが、ロティサリー・チキンみたいにそのまま身まで食べる感じです。皮だけを味噌と胡瓜と葱でクレープに包んで食べる感じではない。

頁187、密造酒時代のもぐり酒場は酒税を払わなくて済むので儲かるはずが、マフィアへの用心棒代や警察や禁酒法執行官への鼻薬、政治団体ほかへの賄賂等が月に五百ドル(当時)にも達してしまうので、禁酒法前よりかえって店の営業は高くつくことになったとか。成田サンは異世界ものをイチから構築するのがめんどうなのでリアル世界を舞台に書くことにして、考証の多さに後悔したそうで、こういうねたを集めて蘊蓄するのは確かに大変そう。

成田サンは上記を、この地区担当の警官で主要キャラのひとり(にしたかった、銭形的キャラ?)は清廉潔白で絶対ワイロ受け取らないという、その一行の補強に使っています。こういう描写を読むと、ラノベだなあと思います。ふつうの小説でも賄賂を受け取らない警官は出るでしょうが、「なんとなく気が進まないのだ」など、ぼやき調で説明したりする気瓦斯。あるいは、須賀田さんのように、小銭はナンボでもちょろまかす、プチダークヒーロー登場。

イラストと文の描写の齟齬として、エリスの外見が、せりふなどを読んで想像したのと違うな、というのがあります。もっと、ブレードランナーのレイチェルみたいなイメージでした。女子アナ的な。

まったく関係ありませんが、私は在日イタリア人がナポリ出身者ばかりなので、本気でカモッラと関係あるのかと勘ぐったことがあります。「オーノー、トンデモナーイ」とか言われましたが。

WELCOME TO NEW YORK!

裏表紙。何故日の丸。矢車老人が出るからなのか。『愛の矢車草』はLGBTQ?を描いた橋本治の小説。

バッカーノ! - Wikipedia

成田良悟 - Wikipedia

以上