『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』読了

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録

大王製紙事件 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E7%8E%8B%E8%A3%BD%E7%B4%99%E4%BA%8B%E4%BB%B6
アマゾンレビューに私がつけ足すことは、特にない気もします。
どこの製紙会社か忘れてたので、検索した時に出て来た本。
読んだのは同年12月の6刷。よく売れたんですね。
デザイン 木村英二郎(Studio MORROW) カバー写真 貴田茂和
真っ黒に網目模様の表紙で、そういう紙なのかと思いますが、写真……???

佐野眞一のルポを詳細に批判しており、本書出版はハシシタ騒動の後です。
作者佐野記者すべてに、尾玉なみえのマンガキャラの台詞、
「男なら巨大な敵を討ちなさいよ!」を送りたいと思わないでもないです。

頁249
(前略)私は、ストーカーのようなこの記者を一喝した。

私「いい加減にしろ! 野間さんに言っておけ!」
記者「野間というのは、ウチの社長のことですか?」
私「ほかにいるのか!」

このくだりも、連載ルポでは割愛というか、ちがうことにされているとか。

頁192に、チタンカードというのが出てきて、ブラックカードよりすごいものなのかと、
おどろきましたが、機能はブラックと同等で、材質がチタンだそうです。
チタンなので折れないのですが、ATMに入れられないとか。なんだそれ。
そこにはほかに、クリスタルやスケルトン、パープルというカードもあると、
書かれていて、そう言われるとあちらの人の支払いで、スケルトンは見たことあります。
こんなもんホンモノなのかとひやひやしながらレジ通した。

不思議だったのは、ほかのギャンブルについても書いてるのですが、
パチンコパチスロが一切出てこなかった点です。

頁175
 学生と違って、社会人は翌日のことを気にせず麻雀ばっかりやっているわけにはいかない。月曜日からの仕事のことを考えると、金曜日の夜から土日ぶっ通しで麻雀をやる人間はそうそういないものだ。相手のことを気にせず心ゆくまでギャンブルを楽しみたい、そんな気持ちが心の奥底にあったのは事実だ。
「カジノで一度腰を下ろせば、日がな一日ギャンブルを楽しむことができるのだが……」

パチンコ台の前じゃダメなのか、と思いましたが、静謐なVIPルームの環境、
マカオシンガポールのカジノシステムである金を借り乍らギャンブル出来る環境、
がないから、作者にはパチンコは我慢出来ないのかな、と思いました。
106億八千万円横領して大半パチンコだったらそれはそれでスゴいと思います。
この金額も、Wikipediaでは借入総額約165億円で、作者は異論ありそうと思いました。
訴訟金額は計55億三千万円で、作者としては、利息も含めて完済した、
との思いがあるそうで、だから執行猶予なしの実刑判決がアレで、
上告まで争ったそうですが…自己資産で返済したとありますが、持ち株を、
会社救済で業界の別企業が買い取った…のではないのかな?だったら威張ることでは、と。
閑話休題。競馬競輪競艇等も出ません。競馬場などもVIPルームありますけど。
カネは貸さないと思います。コーヒーとか出すコンパニはいる。
知り合いが警備員バイト募集で行ったら競馬場のVIP接客だった。
(いねむり先生みたく地元の「若い衆」と行けばそういう人の処が貸してくれると思います)
で、競馬やなんかが出ないのは、作者がハマったのが、
頭脳を必要としない?バカラだという説明で納得出来る気もします。
パチンコは分かりません… やっぱりVIPじゃないからかな。
つまり作者はVIPPERだった。それで、全編横溢する、おかしな高揚感が説明出来ます。

頁093
 現場の苦労を知る部長の気持ちもわかったが、私は敢えて心を鬼にした。
「お前の言い分もわかるし、日本流の浪花節ではそういう言い訳も通用する。だが、もしアメリカだったら浪花節は通用しないよな。ここは日本だが、俺はビジネスにおいてそんな浪花節で言い訳をしていては駄目だと思う。
 180店舗で商品展開することは、約束として決まっていたじゃないか。お前と営業マンが販売店と相談して決めたことなのに、約束が反故にされました、売上が目標に達しません、これ以上何をしていいのかわかりません……そんな言い訳をしたら、アメリカだったらこの場でファイアー(解雇)だよ」
 言葉を失う部長を前に、私はさらに厳しく畳みかけた。
「どうせなら、こういう言い訳をしたほうがよっぽどマシだ。『すみません。実はサボっていました。本気を出せば、ちゃんと数字は予定どおり達成できます。ちょっと気を抜いていましたが、ここから引き締めてやり直してみせます』とかな」
 新製品発売でスタートダッシュをかけなければいけないときに、部長が子どもじみた泣き言を言っているようではこれ以上の伸びしろはない。「一生懸命やったからいいじゃないですか」で乗りきれるなら、ビジネスではなくなってしまう。

頁111
 大王製紙の経営者として、私は空虚な言葉だけの議論を徹底的に排除することにこだわった。会議の席上、こんなことを言う人間がたまにいる。
「コストを削減し、営業部員との意思疎通、コミュニケーションを密にします」
 こういう抽象的な言葉が飛び出したときには、私はすかさず具体性を問うようにしていた。
「『コストを徹底的に削減』って、どこのコストをいつまでにいくら削減するの? 『営業部員との意思疎通、コミュニケーションを密にする』って、メールを毎日1通は必ず送るという意味? それとも週に1回は必ず会って話をする?」
 美麗な言葉を口にしてその場をごまかそうとする人間は、このような指摘をされると、とたんに言葉が詰まってしまう。「コミュニケーションを密にする」など、何も言っていないに等しい。「テレビ会議でも構わないから、週に2回は必ず開発部と営業部の会議を開く」といったように、具体論を述べなければ仕事は先へは進まないのだ。

働いたら負けだと思ってないから、VIPPERではないのかなと思いましたが、
自宅警備も自分ひとりが全責任を負う経営者だしな〜、とか思いました。
2011年三月期に大王製紙は連結決算で182億3400万円の赤字を出し、
その責で同年六月作者は社長を辞任して会長職に退いたそうですが、
2011年三月時点では借入は50億円に満たないので、赤字は他にも理由があると思います。
同年3.11の影響が連結決算に出るには速いし。そこスルーで企業経営者として優秀だったと、
いろんな人からほめられたと回想するかたちで、本書に描いてゆく心理が、
ハンカチなしで読めました。先代の父親の目の黒いうち、存命中に、ここまでやってんすね。
父親も弟も激怒したけど許容した、許してくれた見放さなかったみたいに書かれてて、
底はついてないんだと思いました(本人のなかでは)若いうちに禅譲してもこうなるって、
珍しい気もしますが、専門家は説明出来るのだろうと思いました。

頁149
 女優の岩佐真悠子さんとは、私がよく出入りしていた店で何度も出会った。彼女は酒が入ると少々ヤンチャになるところがあり、今でもともにした酒席を鮮明に覚えている。あるとき私が1人で静かに飲んでいたところ、いきなり後ろからパカーン!と頭を叩く者がいる。振り返ってみると、泥酔した岩佐さんだった。
 しかも、出会い頭に叩いてくるだけでなく、一緒に飲んでいてもぶつかってきたり水をこぼしたりと、なんとも元気のいい飲み方をする。見ているとドSなのだろうか、酔っぱらうとときに人に噛みついてくる妙なクセがあった。肩や腕に噛みつかれるのならまだしも、マイク・タイソンがしたように耳に噛みつかれてしまったことすらあった。彼女が荒れ始めると、まわりの人間は警戒して、笑いながらも距離を置いたものだ。今となっては酒場の楽しい思い出で、懐かしくも感じる。

この後あびる優の思い出に移ります。レビュー等でも有名人がいっぱい出てるとある通りで、
しかし実名匿名の基準がよく分からなかった。総じて深い関係の人の話が一切ないので。
深い関係ではないけれど、今後を鑑みて、関係を持ちたいのだろうな、
と思ったのがホリエモンのくだり。引用した岩佐某は、講談社ヤンマガから出た人だから、
週刊現代佐野眞一の連載された作者として何らかの計算の元に書いたのか、と、
勘繰りましたが、気のせいだと思います。ほしのあきにほしーのとおねだり?されて、
かわいいやつじゃないかと思う作者は素直だと思いました。ティッシュ段ボール一箱送付。
そもそもこの本がなんで双葉社なのかと不思議ですが、執行猶予だったら週刊大衆に、
連載でもするつもりだったのかなあ、それで芸能人ネタ多数とか。双葉社音羽でなく、
蒲郡一ッ橋だったと思いますが、忘れた。あるいは聞き取りしたライターが、
どこに持ち込むか決めてなかったので、それでビジネスハウツー話も多く聞き取って、
全部入れないと一冊の分量にならなかったのか、とか思いました。
カバー中折の作者紹介によると、東大生産研、もとい、温泉マンションのある街の、
社会復帰促進センターという名前の刑務所だそうで、そういう名前でも刑務所なのか、
と思いました。PFI方式というのが分からなかったので検索しました。

PFI Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/PFI

作者は逮捕直前診断を受け、抑うつとアルコール依存、ギャンブル依存の診断を受けたそうで、
ただ、それを裁判で使うことはしなかったそうです。使わなかった理由も書いてますが、
他人のことなのでコミットしない。頁252周辺。マカオシンガポールのカジノでは、
コーヒーしか口にせず36時間連続で勝負するのは当たり前だったとか。
作者も勉強したのか、アドレナリンドーパミンがどうこうで食欲がどうこうと書いてます。

頁254
 精神科医から「井川さんはアルコール依存症ですね」と言われたときには、正直言って「そんなことはないだろう」と驚いた。
「えっ!? 私は朝から酒を飲んだりしませんし、まったく酒を口にしない日だってありますよ」
「朝から晩まで四六時中飲んでいなければ気が済まないアルコール依存症もあれば、井川さんのようなタイプの依存症もあるんです。井川さんは一度お酒を飲み始めたら、最後はぶっつぶれてしまうまで飲み続けるでしょう? そういうお酒の飲み方をする人は、強迫気質であることが多いんです。絵画でも切手でも何でもそうですけど、自分のおカネがなくなってしまったとしても、世界で一番のコレクションを揃えようとする人がいますよね。そういう人には強迫気質がある。井川さんの場合、強迫気質のせいで酒やギャンブルに走ってしまうのだと思います」

絶対に失敗してはならないという強迫観念にとらわれて、いつも緊張にさらされ、
仕事が終われば毎晩六本木や西麻布(と書いてある)で酒を飲み、
カジノで身を亡ぼすところまでギャンブルにのめりこむ、物事をつきつめて考える、
とか書いてあって、大変だと思いました、みんなが。奥さんと子どもは断片的な登場です。
離婚したように読めますが詳細はないです。出ないわけでなく、断片的登場。

頁014
 借りる。負ける。さらに借りる。さらに大きく負ける。
 11年が明けたころから完全に歯止めがきかなくなり、借り入れ金は40億円、50億円……とどんどん拡大していった。同年4月以降は負けを取り戻すためにほぼ毎週マカオに通っていたものの、巨額の負け分はちっとも取り戻すことができていない。
シンガポールのカジノでは、マカオよりも大きなマックスベットで勝負できますよ。マカオに行くためには香港からフェリーに乗り継ぎをしなければいけませんが、シンガポールへは羽田空港からの直行便があります。約7時間で到着しますから、金曜日夜のフライトで明け方にはシンガポールに着けます。日曜日の夜に帰ってこられない場合は、夜中のフライトに乗れば月曜日の朝5時には羽田に着きます。飛行機の中で7時間休み、空港でシャワーを浴びてから仕事に行けるじゃないですか」
 ある人から、こんな悪魔のささやきを受けたことが間違いのもとだった。

受ける前から間違えてることは作者も承知ですが、でもこういうふうに筆が滑るのが、
レビューを読んで総合的に感じた本書の醍醐味みたいです。ラスベガスにない、
使った金額の1%キャッシュバックで、完全にオケラで帰ることにならないシステムとか、
ジャンケットとか、いろいろ知識になりました。そういう処の人名は、
オールイニシャルです。当たり前か。パチンコは24時間営業でなくて、本当によかった。以上
【後報】

(2017/1/12)