『バナナ』読了


著者:獅子文六 

装釘板画:棟方志功

(おかしいですよね、
 いくら売れっ子の
 ホンでも、
 ムナカタが
 表紙中表紙とか。
 バナナと絵関係ないし)

中央公論社

昭和34年12月15日初版
昭和35年1月18日三版

奥付の前の
頁が目次です。

昭和34年2月19日
〜同年9月11日
讀賣新聞連載。

ハイハイQさんQさんよ
Welcome to Q's Restaurant 邱飯店のメニュー
十七、獅子文六の「バナナ」
http://www.9393.co.jp/qmenu/kako_qmenu/2006/06_1008_01_qmenu.html
Yahoo!知恵袋 2004/6/2109:50:15
獅子文六の作品で『バナナ』というものがあるん
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10130160

以下後報
【後報】

弘明寺

頁135
 旅荘とは、新語らしいが、ホテルのような外観で、内部は、吉田流新建築で、松坂牛のスキヤキを食わせて、希望によっては、宿泊もさせる仕組みとなってるが、旅人はあまり出入りしないらしい。

南町田のふかくさを見て、モーテルのような所と思ってましたが、
発祥時は、こんなだったんでしょうか。「吉田流新建築」は分からないので、
下記検索しました。

吉田五十八 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E4%BA%94%E5%8D%81%E5%85%AB
竹中大工道具館巡回展 数寄屋大工 ―美を創造する匠―
2012.8.20 mon − 2012.9.29 sat
http://www.a-quad.jp/exhibition/053/p04.html
吉田五十八の「形式知」、村野藤吾の「暗黙知
TOTO通信 2016 New Year no.509
http://www.toto.co.jp/tsushin/2016_newyear/feature0_4.htm
Casa BRUTUS特別編集 ニッポンが誇る「モダニズム建築」
マガジンハウス - 2015
https://books.google.co.jp/books?id=Wne5DAAAQBAJ&lpg=PA91&ots=SNa9dBeaG0&dq=%E5%90%89%E7%94%B0%E6%B5%81%E3%80%80%E5%BB%BA%E7%AF%89&hl=ja&pg=PA91#v=onepage&q=%E5%90%89%E7%94%B0%E6%B5%81%E3%80%80%E5%BB%BA%E7%AF%89&f=false

頁9
 彼は少年時代から東京で暮らしてる間に、すっかり食いしん坊になってしまったのである。うまいものを食う時ほど、人の世に生れた甲斐を感ずることはなく、それも、食通といわれるような味覚の批評家ではなくて、自分の好きなものを、ガキのように、むさぼり食うのが、無上の愉しみだった。そして、生国の中国料理は勿論のこと、日本料理も懐石料理からウナギ、てんぷら、すし、おでんに至るまで、どんなものでも好きであり、また、フランス料理も、日本式洋食も、トンカツまで大好物で、要するに、何でもござれの食いしん坊なのだが、自分でウマいと感じた店のものでなければ、見向きもしない見識は持っていた。だから、なまなかの日本人より、彼は東京の和洋料理店を知っている。そして、世界中の都で、東京ほど、食うことに恵まれたところはないと、思ってる。洋食だって、洋行する必要がないほど、各国の料理が食べられるし、日本食は関西料理、長崎料理、秋田料理まである。

Qサンの辛口批評URLを冒頭にのっけましたが、ここだけ見ると、
ターレンの、弟さんを、ふっと思い出しました。
弟さん知ってるわけじゃないですが。

頁10
 終戦後一年経って、彼は妻子と共に、東京へ出てきた。もはや、彼は日本人ではなくなっていたが、戦後の東京では、その方が住みよく、クレよりもゴとして、第三国人の利益にあずかった。尤も、彼としては、戦前だって、自分を日本人だとは思っていなかったし、現在も、台湾政府に愛想をつかしてると同時に、中共政府を少しも信用する気になれないから、具体的な中国人意識の持ちようがなかった。

新潮文庫『無国籍』*1の感想ここに書いてた、
と思いましたが、それは記憶違いで、書いてませんでした。
そういう微妙なヒダを、こうバッサリやられて、三国人とかいわれっと、
Qサンもカチンと来ますかね。陳ターレンは、外語大でインドやりましたが、
そうやって距離をとって、日本人として生きようとしたのが、
一夜にして日本人でなくなってしまうという体験をして、それが尾を引いた、
その辺を斟酌でも忖度でも鑑みてでもなんでもいいですが、センシティヴやさけ、
分かったれよ、という思いだったのではないかと。ちなみに、この小説、
ここでは「中共」ですが、あとは「北京」になります。クレームついたのか。
後半無思想のはずの主人公が北京系学生に金銭面で支援するくだりなど、
この時点でまだ光華寮事件は起こってないですが、やっぱりぞっとしないです。

頁11
また、台湾の弟も、儲け過ぎて政府に狙われ出したので、神戸へ店を移し、

ここも、筋金入りの台独として狙われたQサンからすると、
カチンとくるくだりかも。毎度『裏声で歌へ君が代*2想起します。

頁14
 いうことがナマイキである代りに、まったく、日本人の日本語である。そこへいくと、父の天童の日本語は、注意深く聞く人には、発音の怪しいところがある。しかし、父親の方は、中国人と会っても、立派に、広東語をしゃべるが、龍馬は、全然、ダメである。彼は日本語だけしか、言語を持たない。従って、日本語で、ものごとを考える。自分の血液が、半分だけ日本人であることぐらいは知ってるが、気分的には、

ここも、母親が日本人のQさんは、読んでどう思ったか。
台湾人が広東語はヘンだろう、という点は、批評で、
客家じゃねーのかよー、とフォローしてます。
獅子文六は、そんな深く考えてないと思います。
台湾人のQサンの嫁はホンコンの広東人だし、
だったら通じるだろう喋れるだろう、くらいのノリだと思います。
実際、Qサンの直木賞受賞作『香港』ではそんな感じだし。

頁21
 天童には、バナナは下賤で、且つ、危険な果実であるという考えがあった。彼はバナナの産地である台中市の近くで生れ、バナナが一本一銭以下の最も下級な果物であることを、知っていた。その上、子供がバナナを食うと、下痢するという言伝えがあり、両親は口にすることを禁じたが、一度、下婢が知らずに食べさせて、エキリに罹って以来、まったく、コリてしまった。日本人が、どうして、あんなにバナナが好きなのか、彼には理解できなかった。あの安香水のような、刺激の強い匂いをかいだだけでも、彼は、胸が悪くなるのである。

ここは、Qサンのバナナのエピソードを知った著者が、ちょいと拝借したような、
そんな気もします。

頁102、イスカのハシとくいちがってしまった。
検索しました。

交喙(いすか)の嘴(はし) コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E4%BA%A4%E5%96%99%E3%81%AE%E5%98%B4-432431
鶍の嘴 いすかのはし コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E9%B6%8D%E3%81%AE%E5%98%B4-203151
イスカ|日本の鳥百科|サントリーの愛鳥活動
http://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1382.html

同、神戸のオバサンが使う日本語が、「起きるないか」とか「いるないよ」で、
それもアレだなと思いました。二世はビンカンです。
頁129、イカイ茶検索して、"玫瑰" と分かりました。
もうひとつの蘭花茶も、検索しました。したら、蘭の花とは違ったです。

珠兰花茶 百度
http://baike.baidu.com/item/%E7%8F%A0%E5%85%B0%E8%8A%B1%E8%8C%B6

頁159
「ピアフって、もう、中婆さんでしょう」
と質問する鈴木タミ子の年齢も、四十を越していた。
「その頃は、今より若かったでしょうが、とにかく、年下の恋人であるモンタンを世の中に出すために、二年間、アルコール類を断ったそうですからね」
「まア、あちらでも、酒断ちなんて、あるんですか」
「塩断ち、茶断ちは、聞きませんがね。ブドー酒は、水と同じくらいに思ってる国民ですから、それを、一年間飲まないというのは、大努力ですよ。それくらい、フランスの女性は、恋愛にすべてを献げるんですよ、ピアフに限らず……」

頁192、馬上のジャン・ダーク英語圏では、そう呼んでるんでしょうか。

https://ja.forvo.com/word/joan_of_arc/#en

頁119あたりで、今の孫文記念館、移情閣が、荒れてた時の描写があります。

http://sonbun.or.jp/jp/
私もヴィッセル戦のついでに見たことがあり、懐かしく思い出しました。
明石


これは神戸の華僑会館かなんかで撮らしてもらった写真。
陶天文の甘粛省も数名見えます。チベットだけ数値未記入。

馳星周不夜城の主人公も、何故か台湾系の養父が國語しか教えなかったので、
主人公は臺灣語が話せない設定として登場しますが、カタカナへの置換の問題にせよ、
もうせんからそういう日本文学の伝統は出来てるんだなあと思った次第です。
台湾語を避けて、北京語で書いてゆく。……うん、以上です。
(2017/2/22)

*1:

無国籍 (新潮文庫)

無国籍 (新潮文庫)

*2: