「デスティニー・イン・ザ・ウォー」(★のむコレ2018上映作品★)原題 ”烽火芳菲” 英題①"The Chinese Widow" 英題②"In Harm's Way and The Hidden Soldier" 英題③" The Lost Soldier"劇場鑑賞

のむコレ2018唯一の中国映画。

Cinem@rt- シネマート新宿 | 上映作品 | のむコレ2018

昨年は中国版ランボー、あらゆる中国映画の興行収入を塗り替えた"战狼"がラインナップだったそうですが、お高かったのか、今年は"战狼2"ではなくコレ。中国映画ですが、監督はデンマーク人だとか。リピート鑑賞料金¥1k。

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9.11を誘発した映像作品として歴史に名を残したマイケル・ベイの「パール・ハーバー」(「チーム・アメリカ/ワールドポリス」という映画では、♪マイケル・ベイはクソさ、パールハーバーを作ったから、という歌をバックに主人公が海辺をバイクで疾走する場面があります)は、最後中国にミッチェルが不時着して、日本軍に追われてイヤン、みたいな場面で終わったと記憶しています。なので、その後日談を作ってみたいと、思う人があっても不思議ではないと。そういう映画です。

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冒頭で、事実に基づいて改変したなんちゃら、"BASED ON TRUE EVENTS"· "根据二战真实事件改编" みたいな注釈が入り、末尾で、何十人だか忘れましたが、それら美国人パイロットを中国民衆は助け、日本軍の報復で二十五万人の中国人が命を落とした、というテロップが出て、中華人民共和国の公称じゃ、南京ですら遭難三十万人なのに、ここで言う二十五万人の根拠ってどこなら、と思いましたが、英語版のドゥーリットルでもババーンと明記されてました、二十五万人。日本語版にはそんなこと書いてないので、見たくない人は日本語版だけ見れば大丈夫です。世界の中の日本。また、中国が助けたアーミーと攻撃参加の米兵の数には当然差分があって、タイーホされて映画同様チャンビーなんだな(セリフによる説明のみ。村長のみ、村の広場で、八王子スーパー並みにモーゼルで射殺される場面あり)と思ってしまいますが、日本語版Wikipediaを見ると、ソ連に不時着したチームもあったんだとか。

ドーリットル空襲 - Wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Doolittle_Raid

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CRYSTAL LIU (DISNEY'S 2019 LIVE ACTION MULAN)

のむコレでくれたポストカード。ヒロインは英名を持つ女優さんでしたが、クリスタルってすごい名前だなと。瀧川もビックリ。水晶。

いろいろ「政治的」な部分を持つ映画であるのは、中国なので当然で、主人公の乗る一機が単独でTOKYO攻略してるように見え、四つの攻撃目標が、二と三はよく聞き取れなかったのですが、一がアサヒなんとか、四がミツビシエアークラフトなんとか、と、いずれも軍事目標ばかりに聞こえ(字幕は固有名詞はしょってます)、それがために、村に入りこんだ商人が、爆撃機多数による大規模空爆(当時の)と言っても、話に尾ひれがついて白髪三千丈になってら、と思ってしまうし、討伐隊隊長のダオベンシャオズオが、日本版ウィキペディアに基づいて、病院や学校も爆撃されたとほんとのことを言ってるのですが、まーたリーベンレンがチュイニウだよ、と思わせるように仕掛けられてると。隊長が、主人公以外の乗組員(四人?)は全員確保して処刑しますた、と言ってますが、この機自体が架空なので… 爆撃手が最初アジア系に見えましたが、違った。

そうした先入観操作は、国府に対しても仕掛けられていて、ミッチェルが不時着せざるを得なかったのは、ミッチェルのプロペラ音を、日本軍の追撃機のそれだと、飛行場守衛の国府軍勢が誤認して、全面消灯の燈火管制を敷いてしまい、パイロットが雨の夜の飛行場を視認出来なくなったからだ、と思うように作られています。これは真偽知りません。ウィキペディアに書いてないので。パイロットのチョンキンへの脱出をサポートするパルチザンメンバーは、ヨウジードゥイ"游击队"と呼ばれます。国共合作下の八路ということなのかな?

プロパガンダ要素があるからでもないでしょうが、浙江方言は一切出ません。この当時の小学生がこんなキレイな普通話、プートンホワって、ないやろうと思いました。ブッシャオダ、アラサパニンくらい言うのかと思いましたが、やっぱり今の党中央はその辺方言を公共デムパに載せることについて、国家分裂につながるとかいう理屈で非常に神経質なんだなと。寡婦の義母が唯一、ヒロインの態度の枝葉末節をとらえて"(老公に)你看见了没" と指さすとかそういう物言いをしますが、いまの中国城市社会で最もマナーが悪いと排斥されてるのがこの年齢層の女性で、小皇帝世代が老々介護をしない理由づくりにも使われますので、ここで観客のハートをがっちりキャッチの目論見なのかも。

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飛行場のある衢州はこんなとこ。

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日本軍の描き方が、場面場面でブレてました。隊長のダオベンシャオズオが、最初ツンジャン村長と話す時は、なんかわざとイントネーションをズラしたミシミシ中文を話しているのですが、なんでそんなツーカーなんだよと思う頃には、"下午好"のように教科書にしか載ってない中国語を自在に操り出し、未亡人のジャンフはナンジンで戦死してるのですが、"也许是我杀的吧"と言い「間違った原因による戦争でも戦死は尊い」"错误的原因而战" とか"我告辞了"とか、慇懃無礼というかなんというかの中国語をバンバン使いだし、ウォーシーダーリーベンディーグオダジュィングワン、バァウォーズンジョンイシャ、みたいなことも言います。部下が日本語で会話する場面は、中国人の棒読み日本語なので、ところどころ聞き取れなかったです。口笛の場面はどう見てもアテレコなので、日本語もアテレコすればいいのにと思いましたが、アテレコでああなのかもしれず、自称日語ペラペラの"拉关系"さんがスタッフに紛れ込んでいたのかもしれません。

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だいたいこういう掃討隊の現地滞在は、村びとを追いだして家屋を徴発して住んだりする、内地でも行軍やなんかで農村通りかかったら、民家一軒一軒に分散して下宿するパターンの亜種をやるですけど、この映画では、村はずれの空地かなんかにテント張って野営する。禮義正しいのかと思うと、夜這いというかヤリに寡婦の家に押しかけてくる。池部良で読んだか兵隊やくざで読んだか他で読んだか忘れましたが、だいたい後ろから飛びかかって腰に抱きつくんですよね。 中国農民女性はだいたい裤子、ずぼんを穿いてるわけですが、ひも一本で前で結んでるだけですので、抱きつくと同時にひもをほどいてしまうと、ずぼんが中途半端にさがって、女性の身動きが制約されて、逃げようにもズボンが絡まって走れないわ、下着は付けてないか、金太郎の腹掛けみたいのだけなので陰部は丸開きになるわでロクなことがないのですが、そういう展開になります。ここはひとつのカタストロフィ。

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烽火芳菲 - 维基百科,自由的百科全书

基本的に、この映画は極限状況映画で、何か日本軍の逆鱗に触れたら、容赦なく殺される状況下で、必死に匿うわけです。燃えないわけがないのですが、こないだ観た台湾映画「軍中樂園」同様、寸止めです。脱いだりとかアヘアヘとかそういうのは、アレです。前に観た張愛怜原作の中国映画「ラスト、コーション」では、愛国スパイとなった女子大生という設定の女優さんが、乳首が黒くて、それで上になったりする場面があって(戦中の女子大生!役)鼻白みましたが、今回はそういうのなくて、よかったなと。

 床下に匿うあたりでは、トイレどうしてたんだろうと思いました。マートンを地下に置いて、ごまかしてたのだろうか。

百度の人物名はだいたいいいですが、ウィキペディアが、何をトチ狂ったのか、インズ、英子というヒロインを"英"と記載していて、そりゃ確かに「~子」のつく名前は和風くさいですけど、そういうふうに作ったのだからしょうがないじゃないかと思いました。ダオベンシャオズオも、少佐ということなのですが、"上校"と中文に翻訳していました。娘の小学校の先生が、そのまま「先生」シェンションと呼ばれていて、なぜラオシー"老師"にしないのだろうかとも思いました。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/zh/7/73/The_Chinese_Widow_Poster.png 原題の”烽火芳菲” 、烽火は分かるような気もしますし、漢詩の恋の歌でも烽火が出てくるのあった気がします(検索したですが、王昭君も蔡文姫もちがった。思い出せません)しかし後半の単語"芳菲”の意味は分からず、検索しますと、宋代にそういう漢詩、ソンツーがあったみたいです。

芳菲歇去何须恨 夏木阳阴正可人——秦观_百度知道

三月の終わり、もうすぐ夏餅担ぐ八十八夜(ちがう)で新緑が初ガツオ、ということですと、例のとほの春望、クニ破れてサンガあり、城春にして草木フカシ、中略烽火③月に連なり、も当然連想されます。なかなか凝った漢語タイトルだと思いました。英語タイトルのうすっぺらさ、日本語タイトルが外来語オンリーで、何かまた中華文人があてこすってるのかなーと思うのと、対照的にしたてるこの思考法と出来栄え。

コニタンに少し似てる主演女優さんの名前も、卯刀の金吾亦紅菲さんで、ニラなのですが、上の百度によると、綿のように生い茂るさまが"芳菲"だそうで、ヒロインの寡婦さんは、カイコ飼って、絹をつむいで、それを換金したり物々交換したりで生計を立てているわけで、こないだおかべたかしの本で読んだ、「へそくり」の語源そのまんまやんけと思いました。

へそくりとは - コトバンク

こういう人が米兵の裸体見てたかまりを抑えきれないわけなんですが、左のテンプルに擦過痕作ってたのに、それがないことになってしまったりと、一度そういうのがあると、やはり映画全体の整合性が問われますので、神は細部に宿りますので、頑張ってくださいとしか言えないです。

のむコレの他の映画のヤフー評で、レンタルビデオ店の片隅でホコリかぶるレベル、というのがあり、この映画はさいわいそこまでではなく、そして、二十五万人とかさらっと出てきますが、自治体上映とかでなければいいのかもしれませんし、ここまで来れば毒を喰らわば皿までもですから、もういっそ張藝謀の「金陵十三釵」上映しちゃおうよと思います。どうでしょうか、来年ののむコレで。私はとても見てみたい。

金陵十三釵 - Wikipedia

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以上