『拳児2』(サンデーうぇぶり少年サンデーコミックス)読了

藤ヶ丘のファミマで偶然見つけた漫画。 

●ILLUSTRATION/藤原芳秀

●DESIGN/木下佑紀乃+ベイブリッジスタジオ

●SPECIAL THANKS/守屋昭文

サンデーうぇぶり2018年6月1日~2019年4月15日配信分収録。いろんなウェブ媒体があるもんだと思います。裏サンデーやらなにやらかにやら。裏サンデーは違うかもしれません。

拳児2 (少年サンデーコミックス)

拳児2 (少年サンデーコミックス)

 

巻末に『拳児2ができるまで』というオマケまんががあります。年末パーティーで初代担当編集だった佐藤敏章さんに漫画家が会い、この企画をやるぞと言われ、原作者の松田隆智さんもおなくなりになっているのに、どうやってやるんですかと返すと、佐藤さんがシナリオ書いて、松田師のお弟子さんに監修してもらう、と形だと説明されたとか。『拳児2が終わる事情』は収録されてません。誰かの健康上の理由でなければいいのですが。

拳児2 (サンデーうぇぶりSSC)

拳児2 (サンデーうぇぶりSSC)

 

 佐藤敏章という方は1949年生まれで、現在もフリーの編集者として、生涯いち編集を貫いているそうなので、そうなるとつぎつぎ企画を生まねばならず、それで寝た子を起こしたのかと。

拳児が、あの頃のまま大人になった感じで嬉しい!」「本当に強いとは? のカッコいい回答」「じーちゃんにももちろん似てるけど、真剣な顔はどことなく李書文にも」「拳児は自分に大きな影響を与えた漫画の一つです」「続編読めて幸せです」「ただただ感動、それしか言えない」「正義という名の暴力がはびこっている今こそ、拳児が復活するときではないでしょうか?」―――「サンデーうぇぶり」連載時読者コメントより抜粋 

 思うに、拳児大地の子は、胡耀邦時代の改革開放をバックにした、日中友好の仇花の双璧だったと思います。まだODA汚職とかもそんな目立たなかった頃。中国グラスルーツとか、そんな本をまだ読んでた頃。横浜から物語が始まり、貨物船で台湾に渡って、香港を経て、中国入国後はパスポートを身につけず一貫して非開放地区をオーバーステイする拳法修業の少年。目的は大陸で失踪した祖父を探すこと。終生のライバルというか、主人公の命をつけ狙う方向にまで逝ってしまった仇敵はベトナム華人ボートピープル河南省回族自治村と回族拳法が出てくるあたりは、今でも古びない、色褪せない展開だと思っています。原作者は、そののちに、武道家として中国拳法について、いろいろ新発見や考察、まとめなどを進めたそうですが、私はそれは分からないので、単純に物語として、よく書いたと思うばかりです。

そんな漫画の主人公が、連載時十代としたら、27年後の現在はたぶん四十代。以前のままで大人になったといえば聞こえはいいですが、独身の苦労が顔に出ない感じの若いとっちゃん坊やみたいな老青年で、中国での顔は見せませんでしたが、日本のワンルーム?マンションでは、両親が彼のアパートに来て掃除洗濯布団干し、ゴハンまで作ってくれたりするという。よく見ると車を運転する場面すらないんですね。バイクというわけでもないし、電車に乗るわけでもない。移動手段すら決めかねたのかもしれない、シナリオライターのサトーさんが。

そう思って見ると、40男が年金と退職金で暮らす両親に「夕飯はカレーがいい」などと屈託なく話すのが、なんとも凄愴で、21世紀の日本かっこいいというか、サトーさん家もこうなのかとか、だから生涯いち編集で働き続けるのかとか、先日NHKの所さん大変ですで、五十人と婚活したアラフォー女性が、ようやっとおつきあいする男性が出来たのを機に、これまでの婚活ダイアリーを一括断捨離、ネットでお焚き上げに送ってしまう話で、「四十三歳でママにお弁当作ってもらう男性と」はセックル出来ないと言ったのかキス出来ないと言ったのか、を思い出してしまいました。

https://www4.nhk.or.jp/taihentokoro/x/2019-07-25/21/20045/2121168/

そんな拳児くんが、「ユニオン」の総帥として大成したとはとても思えず、途中で器でないと総帥役からは下ろされたが、拳法に関する部分は認められ、それで生きて行けるよう、緩い連帯の中で「とりはからわれてる」のが実情ではないかと思いました。秘密は当然墓場までバラさず保持する条件。杜月笙とかそういう世界で、無理だろ~拳児。中国嫁がいるわけでなし、おさななじみ(族に入った娘)は未亡人の子持ちになりましたが、何も起こらないし。

空手から見た中国拳法、のくだりが前半目を引き、それが、連載終了後の研究の進展を背景にしたものであれば、それだけがトピックになるもやむなしだとおもいました。テコンドーとか出してほしい気もしますが、そこまではだめだったか。

なんでツーは連載終了したのか。人気なかったんでしょうかね。それとも、竜崎というキャラがピエールに似てたからか。う~ん。以上