『クリスマスのフロスト』 (創元推理文庫) 読了

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

読んだのは2008年の38版(!)大竹聡『ぶらり昼酒・散歩酒』*1で、
オータケの人が大宮蕨旅のお伴に読んでた本。小説宝石の連載で、
創元推理文庫を出すとは太っ腹だな、と思ってたのですが、
本書訳者あとがきの作品リスト更新版を見ると、
フロストシリーズの長編は東京創元社だけれども、光文社文庫からも、
短編集『夜明けのフロスト』が出ているとのことで、
プロのライターがパブ記事でもなく書籍紹介するはずもなかったな、
ギョーカイの人ってのはアド上手だな、と、改めて思いました。

そんな仕掛けしなくても版を重ねてるわけで、創元推理文庫のやや小さな活字で、
五百ページ以上あるのにぺろっと読めます。大して苦労もせず気がつくと、
すごい頁が進んでるので、自分のこと速読家と錯覚しそうになります。

カバーイラスト=村上かつみ カバーデザイン=矢島高光

本文のフロスト外見描写は、もう少し生え際が後退してて薄いので、
あんまりゲーハーだとついてこない読者もいるだろうから(女性とか)
マンガ王国クールジャパンの威信にかけてイイイラストを描いた、
気がします。表紙があまりにしっくりくるので、もうほかのフロスト像は、
想像出来なくなる。

フロストという人は、警察備品の貸与品を紛失というか、本人の言い訳によると、
ほかの奴にくすねられて、借りっぱなし状態になってて、それが必要なので、
二重三重に借りて、借りっぱなしのぶんは、隙を見て帳簿を返却済みに処理して、
そうして要領よく生きているかというとその逆で、上司にいらんこと言うわ、
集中が続かないのにあれもこれもやるから延々仕事が終わらず、連日深夜まで、
ダラダラあっち行ったりこっち行ったり仕事するわ、頁76では、イギリス人も、
カンチョーやるのか、原文ではなんと言ってるのだろう、という人です。
愛煙家で、燃えやすいとこでもお構いなしに灰皿代わりにする危ない人です。

頁436
 ハンロンは自分のオフィスで、アルカセルツァーの錠剤を入れたグラスの水をスプーンで掻きまわしていた。錠剤から泡が立ちはじめると、彼はグラスの中身をひと息に飲み干し、泡立つ液体が消化器系に戦いを挑むのを待った。
「無駄だよ、アーサー。そんなものを飲んでも、性病には効かない」フロストは心配顔で言った。

イギリス人の作者がイギリス郊外の新興ベッドタウンを描いてるからか、
ニシンのペーストのサンドウィッチとか、カレー味の食べ物(が多い)
と、食に関しては期待出来ません。ギャンブラーと酒に問題のある人物は、
登場します。あとペド。表紙のフロスト像ですが、弾丸がこすった痕が、
ほおにあり、当人以外は特に気にするほど目立たないのですが、あることはあり、
で、そういう気質の延長で、さいご、生死の境をさまようところで終わります。
続刊が出ていることを多くの読者は知っているのでよいですが、
知らなかったら、けっこうフロストに「生㌔」と応援したくなるさいごです。
面白かったです。以上

Frost at Christmas (Jack Frost)

Frost at Christmas (Jack Frost)