招かれざる客たちのビュッフェ - クリスチアナ・ブランド/深町眞理子 他訳|東京創元社
- 作者: クリスチアナ・ブランド,深町真理子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1990/03/22
- メディア: 文庫
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カバーイラスト=ひらいたかこ
カバーデザイン=矢島高光
解説=北村薫
冒頭に、「クリスチアナ・ブランドの世界」ロバート・E・ベイリー(Introdustion : "The World of Christianna Brand" by Robert E. Briney)終わりに同氏作成の作者書誌。ベイリーさんは有名な人なんでしょうが、SF畑のバイオグラフィーと、別人の米空軍予備役准将しか見つけられませんでした。Robert E. Bailey - Wikipedia 綴りが違う。また、ベイリーさんが編んだ後に発表された作品を「補遺」として追記してますが、誰が追記したのかは書いてません。訳者とも解説者とも思えず、東京創元社の編集者かなと思いました。
<目次>
第一部 コックリル・カクテル Part One : Cockrill Cocktails
「事件のあとに」"After the Event" 宇野利泰 訳
「血兄弟」"Blood Brothers" 小野芙佐 訳
「婚姻飛翔」"The Hornet's Nest" 深町眞理子 訳
「カップの中の毒」"Poison in the Cup" 小野芙佐 訳
第二部 アントレ Part Two : Choice of Entrées
「ジェミニー・クリケット事件」"Murder Game" 深町眞理子 訳
「スケープゴート」"The Scapegoat" 深町眞理子 訳
「もう山査子摘みもおしまい」"No More A-Maying" 中村能三 訳
第三部 口なおしの一品 Part Three : Something to Clear the Palate
「スコットランドの姪」"The Niece from Scotland" 大村美根子 訳
第四部 プチ・フール Part Four : Petits Fours
「ジャケット」"Hic Jacet" 山田順子 訳
「メリーゴーラウンド」"The Merry-Go-Round" 大村美根子 訳
「目撃」"Upon Reflection" 山田順子 訳
「バルコニーからの眺め」"From the Balcony" 小野芙佐 訳
第五部 ブラック・コーヒー Part Five : Black Coffee
「この家に祝福あれ」"Bless This House" 山田順子 訳
「ごくふつうの男」"Such a Nice Man" 山田順子 訳
「囁き」"The Whispering" 大村美根子 訳
「神の御業」"The hand of God" 山田順子 訳
英文の目次は途中までグーグルブックス。グーグルブックスがちょぎれた後は、下のインターネット。日本語の目次は創元推理、アマゾンともにありますが、各部とその名称がないので、直接本書を目視して参照しました。
books.google.co.jp
www.barnesandnoble.com
もう、何を契機に読もうと思ったか忘れてしまった本。残っているのは、書名や出版社出版年をチェックしたメモ帖のみ。
最初の数編は、コックリル警部という、作者の創造した名探偵が登場する短編。この探偵はあまり性格がよくないと思いました。イギリス人というか…
頁103「婚姻飛翔」
(略)遺産相続からはじきだされた親類縁者は、めいめいコールドミートやポテトサラダ、薄く切った胡瓜の皿などをまわすためにかいがいしく立ち働き、さらに、おいしい麦茶を(というのは、キャクストン氏が厳格な禁酒主義者だったから)、本来ならもうすこしましな飲み物にこそふさわしいカットグラスのタンブラーについでまわった。
イギリスにも麦茶があることが分かりました。
難しい謎解きより、おバカですぐ破綻露呈する殺人をおかしてしまった主婦がコックリル警部から、ねちねち猫が鼠をいたぶるような遠回しかつ婉曲な問いかけを受けて周章狼狽しながらなんとか糊塗しようとえんえん頭を回転させる「カップの中の毒」がおもしろかったです。非情。
頁257「スケープゴート」剔抉。
この短編集はうしろになればなるほど冴えてきて、ページ数も少なくなります。
でも、「囁き」は「バルコニーからの眺め」に最初と最後が似てしまったので、別に似せなくてよかったと思いました。
この本もイギリスの小説なので、ヘンな名前のパブが出ます。頁455「この家に祝福あれ」に<犬亭>、頁515「神の御業」に<ブタと口笛亭>
下記はメシアの再臨に立ち会ったと誤解してしまったおばあさんの話。
頁455「この家に祝福あれ」
この世で神の御子をあやしたただひとりの者として、あたしはいつか、天の父の右側にすわれるのだろうか?(いや、このかたは父なる神の二番目の息子ということになるのか?……なんだかややこしい。ミセス・ボーンはあえて考えないことにした)。
頁466 同上
ミセス・メイスならいろいろな疑問を解決する役に立ってくれるだろう。たとえば、御子の二度目の降臨についてとか、今回は東方の博士たちが来なかったこと、むくむくした仔羊を連れた羊飼いも来なかったこと。そして、かつて、ヘロデ王が男のあかんぼうをことごとく殺した件はどうなのだろう? もちろん、今は昔とちがうのだから、生きている仔羊を連れてこられても、どうすればいいものやら。それに、この現代では、ほかのあかんぼうを皆殺しにできるわけがない。とはいえ、そういった出来事にかわるなにかがあっていい——そう、なにか象徴的なことがあっていいし、それをきちんと認めることこそ、重要なのだ。
以上