世界ユーモアSF傑作選〈2〉 (1980年) (講談社文庫)
- 作者: 浅倉久志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1980/04
- メディア: 文庫
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編集・解説 浅倉久志
コニー・ウィリスが『混沌ホテル』で挙げたウィリアム・テンの作品、
『地球解放』が収められているので、借りました。
<目次(と、あれば感想。ネタバレ含みます)>
『種明かし』ジェームズ・E・ガン 小尾芙佐訳
"The Last Word" by James Edwin Gunn
⇒萩尾望都がマンガ化したブラッドベリの作品の中の、
『ぼくの地下室へおいで』を思い出しました。
あとは、諸星大二郎の『子どもの時間』かな?
子どもは大人の幼生でなく、独立した生き物だという…
『埃まみれのゼブラ』クリフォード・D・シマック 小尾芙佐訳
"Dusty Zebra" by Clifford Donald Simak
⇒星新一の、よく知られたショートショートと比較してしまいます。
こちらは言語交流不可能な条件での取り引き、契約になっていて、
星新一のほうは、契約という概念おかまいなしの、
擬人化されない超自然で、日本と西洋の違いみたいな気がします。
『冒険児クロンカイト』ポール・アンダースン 佐藤正明訳
"The Barbarian" by Poul William Anderson
⇒ホントにこんなシリーズがあるのかと思いました。
ペリー・ローダンというか、解説によるとコナンのパロディで。
この一つ上の作品の作者名見ると、スター・シマック思い出します。
読んだことありませんが。クロンカイトに戻すと、
いつの世でも、ユーモアというと、シモネタになりがちなんだなあと思います。
『火星をまわる穴・穴・穴』ジェローム・ビクスビイ 矢野徹訳
"The Holes Around Mars" by Jerome Bixby
⇒キンザザでもソラリスでもいいのですが、それが、
ダジャレによって殲滅される話。ダジャレSFって、
みな考えつくのでしょうけれど、異言語のそれを翻訳する労に敬意を示します。
『ナラポイア』アラン・ネルスン 小尾芙佐訳
"Narapoia" by Alan Nelson
⇒医者へ精神汚染をまき散らす患者の話なので、こわい話な気もします。
『雪だるま効果』キャサリン・マクリーン 深町眞理子訳
"The Snowball Effect" by Katherine MacLean
⇒いちばん気に入った話。なんとなくキャリー・ネイション思い出しました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8D%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
『天国と地獄』H・アレン・スミス 浅倉久志訳
"The Achievement of H.T.Wensel" by Harry Allen Smith
⇒原題だと地味すぎるので、直球の邦題にしたのだと思います。
でも、原題の持つ味わいも捨て難い。難しい選択。
『要約すれば……』E・B・ホワイト 浅倉久志訳
"Irtnog" by Elwyn Brooks White
⇒活字離れと活字中毒は相反しない、という命題で、
当時のリーダーズダイジェスト隆盛を皮肉ってますが、
今北産業とかツイッターとかまとめサイトとか、
その辺はスマホ時代も変わらないと。
『早熟』デーモン・ナイト 酒匂真理子訳
"Special Delivery" by Damon Knight
⇒胎児の自我持って超天才という題材で、胎児が文学、
ストーリーテラーを指向する点が独特。生まれてないのに語り部。
生まれてないのにバクマン。
『創作論理学入門』ハワード・ショーンフェルド 浅倉久志訳
"Build Up Logically" by Howard Schcenfeld
⇒自我とかの話かと思いますが、いまひとつ分からなかった。
『地球解放』ウィリアム・テン 南山宏訳
"The Liberation of Earth" by William Tenn
⇒コニー・ウィリスが題名を挙げた作品ということで、
これを読むために借りたのですが、あまり残りませんでした。
『債鬼』ロン・グーラート 浅倉久志訳
"Badinage" by Ron Goulart
⇒SFでなかったら、わりとある話ではないかと。
貸し付けてかっぱぐマッチポンプ。一本化して清算後、
再出発の資金が出るとまた誘惑。ギャンブル依存。ショットガン。
『マーティン・ボーグの奇妙な生涯』ジョージ・コリン 浅倉久志訳
"The Singular Quest of Martin Borg" by George Collyn
⇒全能型の主人公をこういうふうに創造するのか、という点と、
このころからトランスジェンダーSFってあったのか、という点。
『ザ・ビッグ・スペース・ファック』カート・ヴォネガット・Jr. 伊藤典夫訳
"The Big Space Fuck" by Kurt Vonnegut, Jr.
⇒解説がハーラン・エリスンの評から引いたところでは、
SFタイトルで初めて「ファック」を使った作品とか。
スペルマでなく「ジザム」でなければならない、
ファックやシットと同じくらい古い言葉なのに、
辞書に載らないままだったジザムに光を当て、
文字化されてなかった単語なので、スペルがまちまちだったのを、
統一させた云々とあります。ほんとかどうか検索しました。
http://eow.alc.co.jp/search?q=jizzum
で、そういう話と並行して、中西部の低所得白人?世帯の日常と崩壊が、
見事に描かれています。まさにスラップスティック。
『寿限無、寿限無』R・A・ラファティ 浅倉久志訳
"Been a Long, Long Time" by Raphael Aloysius Lafferty
⇒確率論に挑む勇者たちを描いた作品。
『われはクロード』チャド・オリヴァー チャールズ・ボーモント 南山宏訳
"I, Claude" by Chad Oliver & Charles Beaumont
⇒フィクションが実体化する社会に於ける焚書の効用、みたいな。
以上