『世界ユーモアSF傑作選2』(講談社文庫)読了

カバー装画 加藤直之(スタジオぬえ
編集・解説 浅倉久志

コニー・ウィリスが『混沌ホテル』で挙げたウィリアム・テンの作品、
『地球解放』が収められているので、借りました。

<目次(と、あれば感想。ネタバレ含みます)>
『種明かし』ジェームズ・E・ガン 小尾芙佐
"The Last Word" by James Edwin Gunn
 ⇒萩尾望都がマンガ化したブラッドベリの作品の中の、
  『ぼくの地下室へおいで』を思い出しました。
  あとは、諸星大二郎の『子どもの時間』かな?
  子どもは大人の幼生でなく、独立した生き物だという…
『埃まみれのゼブラ』クリフォード・D・シマック 小尾芙佐
"Dusty Zebra" by Clifford Donald Simak
 ⇒星新一の、よく知られたショートショートと比較してしまいます。
  こちらは言語交流不可能な条件での取り引き、契約になっていて、
  星新一のほうは、契約という概念おかまいなしの、
  擬人化されない超自然で、日本と西洋の違いみたいな気がします。
『冒険児クロンカイト』ポール・アンダースン 佐藤正明訳
"The Barbarian" by Poul William Anderson
 ⇒ホントにこんなシリーズがあるのかと思いました。
  ペリー・ローダンというか、解説によるとコナンのパロディで。
  この一つ上の作品の作者名見ると、スター・シマック思い出します。
  読んだことありませんが。クロンカイトに戻すと、
  いつの世でも、ユーモアというと、シモネタになりがちなんだなあと思います。
『火星をまわる穴・穴・穴』ジェローム・ビクスビイ 矢野徹
"The Holes Around Mars" by Jerome Bixby
 ⇒キンザザでもソラリスでもいいのですが、それが、
  ダジャレによって殲滅される話。ダジャレSFって、
  みな考えつくのでしょうけれど、異言語のそれを翻訳する労に敬意を示します。
『ナラポイア』アラン・ネルスン 小尾芙佐
"Narapoia" by Alan Nelson
 ⇒医者へ精神汚染をまき散らす患者の話なので、こわい話な気もします。
『雪だるま効果』キャサリン・マクリーン 深町眞理子
"The Snowball Effect" by Katherine MacLean
 ⇒いちばん気に入った話。なんとなくキャリー・ネイション思い出しました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8D%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
『天国と地獄』H・アレン・スミス 浅倉久志
"The Achievement of H.T.Wensel" by Harry Allen Smith
 ⇒原題だと地味すぎるので、直球の邦題にしたのだと思います。
  でも、原題の持つ味わいも捨て難い。難しい選択。
『要約すれば……』E・B・ホワイト 浅倉久志
"Irtnog" by Elwyn Brooks White
 ⇒活字離れと活字中毒は相反しない、という命題で、
  当時のリーダーズダイジェスト隆盛を皮肉ってますが、
  今北産業とかツイッターとかまとめサイトとか、
  その辺はスマホ時代も変わらないと。
『早熟』デーモン・ナイト 酒匂真理子訳
"Special Delivery" by Damon Knight
 ⇒胎児の自我持って超天才という題材で、胎児が文学、
  ストーリーテラーを指向する点が独特。生まれてないのに語り部
  生まれてないのにバクマン。
『創作論理学入門』ハワード・ショーンフェルド 浅倉久志
"Build Up Logically" by Howard Schcenfeld
 ⇒自我とかの話かと思いますが、いまひとつ分からなかった。
『地球解放』ウィリアム・テン 南山宏訳
"The Liberation of Earth" by William Tenn
 ⇒コニー・ウィリスが題名を挙げた作品ということで、
  これを読むために借りたのですが、あまり残りませんでした。
『債鬼』ロン・グーラート 浅倉久志
"Badinage" by Ron Goulart
 ⇒SFでなかったら、わりとある話ではないかと。
  貸し付けてかっぱぐマッチポンプ。一本化して清算後、
  再出発の資金が出るとまた誘惑。ギャンブル依存。ショットガン。
『マーティン・ボーグの奇妙な生涯』ジョージ・コリン 浅倉久志
"The Singular Quest of Martin Borg" by George Collyn
 ⇒全能型の主人公をこういうふうに創造するのか、という点と、
  このころからトランスジェンダーSFってあったのか、という点。
『ザ・ビッグ・スペース・ファック』カート・ヴォネガット・Jr. 伊藤典夫
"The Big Space Fuck" by Kurt Vonnegut, Jr.
 ⇒解説がハーラン・エリスンの評から引いたところでは、
  SFタイトルで初めて「ファック」を使った作品とか。
  スペルマでなく「ジザム」でなければならない、
  ファックやシットと同じくらい古い言葉なのに、
  辞書に載らないままだったジザムに光を当て、
  文字化されてなかった単語なので、スペルがまちまちだったのを、
  統一させた云々とあります。ほんとかどうか検索しました。
  http://eow.alc.co.jp/search?q=jizzum
  で、そういう話と並行して、中西部の低所得白人?世帯の日常と崩壊が、
  見事に描かれています。まさにスラップスティック
寿限無寿限無R・A・ラファティ 浅倉久志
"Been a Long, Long Time" by Raphael Aloysius Lafferty
 ⇒確率論に挑む勇者たちを描いた作品。
『われはクロード』チャド・オリヴァー チャールズ・ボーモント 南山宏訳
"I, Claude" by Chad Oliver & Charles Beaumont
 ⇒フィクションが実体化する社会に於ける焚書の効用、みたいな。

以上