カバーデザイン:坂川事務所 イラストレーション:藤田新策 解説:馬場啓一
- 作者: パトリシアハイスミス,Patricia Highsmith,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1992/12/01
- メディア: 文庫
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Slowly, Slowly in the Wind: A Virago Modern Classic (Virago Modern Classics) (English Edition)
- 作者: Patricia Highsmith
- 出版社/メーカー: Virago
- 発売日: 2014/03/06
- メディア: Kindle版
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グーグルブックから各話原題を写してから、解説の次のページにそれと初出年(ぜんぶ七十年代)既出の邦訳、今回の訳に際して手直しした旨と、既出の翻訳者が故人の場合誰に助言を仰いだか、が、書いてあるのに気づきました。
"The Man Who Wrote Books in His Head"(1974)『頭のなかで小説を書いた男』大村美根子訳 ⇒もつべきはよくできたワイフという話ではなさそうです。
"The Network"(1976)『ネットワーク』榊優子訳 ⇒アメリカの都市は犯罪が多いという話。ちがうかな。
"The Pond"(1976)『池』小倉多加志訳 ⇒ベトナム戦争以後興隆をみせたホラーをハイスミスも書きました。触手あり。
"Somehing You Have to Live With"(1976)『一生背負っていくもの』柿沼瑛子訳 ⇒一生同じ話をしなければバランスを失う人の話。聞きっぱなしは何のため。
"Slowly, Slowly in the Wind"(1976)『風に吹かれて』小倉多加志訳 ⇒死ななくてもよいと思います。
"Those Awful Dawns"(1977)『またあの夜明けがくる』中村能三訳 ⇒少子化でない世界の話。
"Woodrow Wilson's Necktie"(1972)『ウッドロウ・ウィルソンのネクタイ』小野芙佐訳 ⇒累犯なんとか。今でも書きようで書けると思います。自主規制しなければ。
"One for the Islands"(1979)『島へ』岡田葉子訳 ⇒ビデオ借りて寝落ちしたギリシャ映画、霧の中のナントカみたいだと思いました。
"A Curious Suicide"(1973)『奇妙な自殺』大村美根子訳 ⇒罪悪感をおちょくりたいのかどうしたいのかという作者の態度。
"The Baby Spoon"(1973)『ベビー・スプーン』近藤麻里子訳 ⇒よくこんな些細なことで殺されるなと驚きます。自意識肥大しすぎ。
"Broken Glass"(1979)『割れたガラス』岡田葉子訳 ⇒本邦初訳だとか。いちばん面白かったです。少子高齢化の白人限界地区にヒスパニックや黒人がどんどん住むようになって、昼間から無職でうろつく彼らに高齢者が繰り返し襲われ、その度に金目のものが奪われ、年金支給日にはドラクエの発売日宜しく、銀行からつけねらわれる生活で、悲観して老夫婦心中まで出る始末。リクレーション・ホールはあるし、失業手当に生活保護。ポリテク職業訓練所に通うだけで給料までもらえるのに、彼らは何が望みなの?公立図書館!図書館で彼らの姿を見かけたためしなんてありゃしないという老婦人たちの嘆き。主人公は単身なので、他の単身者と共同でスーパーに行って大きなパックだと安い品物を買ってあとで分け合う生活をしています。一度突き飛ばされてサイフ盗まれて軽傷を負うのですが、警察には届けず、しかし平然と道の向こうからぬすっとが歩いてくるので、道をよけずに正面からぶつかり、持っていたこわれもののガラスで相手にけがを負わせることに成功します。当然報復があるわけで、という話。ハイスミスは冷たい人だと思いました。高齢者にも黒人にも。未訳なのもむべなるかな。
突き飛ばすひったくりはほんとに悪質で、高齢者の大腿骨骨折は、予後も死亡リスクが非常に高いとこないだも誰かが言っていて、骨粗鬆症で骨がもろくなっていて転ぶだけでも大変な人を、突き飛ばすとか何事かということです。
"Please Don't Shoot the Trees"(1977)『木を撃たないで』柿沼瑛子訳 ⇒近未来反原発SF。ハイスミスもこんなの書くんだと思いました。初訳。日本は武装解除されて、中国=ロシア連合国の植民地になっているそうです。この未来では。
後は帰ってから書ければと思います。では。【後報】上に書き足しました。
(2019/4/3)