呼び出された男 スウェーデン・ミステリ傑作集 (ハヤカワ・ミステリ)
- 作者: ヨン=ヘンリホルムベリ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/08/15
- メディア: Kindle版
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帶
翻訳権独占/早川書房
『ミレニアム』著者スティーグ・ラーソンの幻の短編をはじめ
〈エーランド島四部作〉のヨハン・テオリン
〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉のヘニング・マンケルらによる17篇の傑作を収録する画期的なアンソロジー
現代ミステリをリードする北欧作家の名篇を結集!
帯裏はデンマークのエーネ・リール『樹脂』告知。
全然関係ないのですが、珍しくタッパーの中から水がもれてしまい、
(もやしの水切りをしっかりしていなかったようです)
カバンの本が水びたしになってしまい、青くなりましたが、
さいわい図書館本でなく、買ったこの本でした。こんなへにゃへにゃ、
パリパリになると、もう、売ったりあげたり出来ませんが、
でももうほんと図書館本でなくてよかったです。助かりました。
ポケミスは天地や小口も色が塗ってあるのですが、それも剥がれました。
編者がスウェディッシュで、訳者筆頭がヘレンハルメという名前ですので、
スウェーデン語直訳とも思うのですが、「はじめに」で編者が、
ミレニアム三部作でスウェーデンミステリーへの需要が高まった英語圏向けに、
と言ってるので、英語版からの重訳かもしれないです。分からない。
全然関係ないですが、フィンランドの瑞典語小説『ムーミン』は、
スウェーデン語直訳の邦訳でしょうか。疑ったことなかったですが。
「はじめに」ではスウェーデンミステリーの簡史が語られ、
どこの国でもそうだった、労働者向けのドギつい貸本娯楽よみものが、
'60年代から、長期左派政権に対する、さらにラディカルな左派からの、
異議申し立てのツールとしても使われるようになり、(忍者武芸帖のようだ)
それがミレニアムを生み、現在も踏襲されているとのことです。
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ美穂,岩澤雅利
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/09/08
- メディア: 文庫
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ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ 美穂,岩澤 雅利
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/09/08
- メディア: 文庫
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何故前と後で同じことを書くのだろうと思いました。
これの意味が分からなかった。
共作が多いので作者数と作品数が一致しませんが、19人くらいの作者のうち、
育児休暇復職に失敗した経験から作家への道を歩んだ人x1、
女性を主に描く人x1、主人公が同性婚x1、
主人公が韓国人とスウェディッシュのダブルx1、
スウェーデン随一の風刺作家で首相から告訴され勝訴x1、
反ファシズム機関紙編者兼x1、ラディカル左派x1、
急進的な左派x1、ダブル不倫事実婚が、スウェーデンで、
理想のカップル伝説的な恋愛ともてはやされるようにまでなったx1、
ベトナム反戦集会で知り合って結婚x1、
人を惹きつける才能の持ち主で、大変裕福な株式ブローカーでありながら、
女性を辱め、男女を問わず殺しを楽しむサイコパスの殺人鬼シリーズで、
好評を馳せたx1、なので、そんなに左巻きとも言えないかと。
レスタディウス派というあちらで盛んな?キリスト教の一派も出ますが、
これ東西に分裂してるとか。
Laestadianism Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Laestadianism
Læstadianism Wikipedia
https://sv.wikipedia.org/wiki/L%C3%A6stadianism
Laestadian Lutheran Church Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Laestadian_Lutheran_Church
https://fi.wikipedia.org/wiki/Laestadian_Lutheran_Church
"A darker shade of Sweden"
- 作者: John-Henri Holmberg
- 出版社/メーカー: Mysterious Press
- 発売日: 2014/12/16
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重訳なのか直訳なのか分からないのに、各作品名はスウェーデン語です。
Å, å, Ä, ä, Ö, ö しか特有のアルファベットはないですが、それでもめんどい。
https://sv.wikipedia.org/wiki/Svenska_alfabetet
以下ネタバレ大いに含みます。
<目次>
「再会」トーヴェ・アルステルダール 颯田あきら訳
"Återförening" by Tove Alsterdal
⇒湖畔の同窓会のゆうれいの話。
「自分の髪が好きな男」シッラ&ロルフ・ボリリンド 渡邉勇夫訳
"Sitt hår tyckte ham om" by Cilla & Rolf Börjlind
⇒「ゾーン」に入るので、黒子のバスケかと思いました。
「現実にはない」オーケ・エドヴァルドソン ヘレンハルメ美穂訳
"Aldrig i verkligheten" by Åke Edvardson
⇒DV+ジョン・プアマン脱出というかジョン・ウーのマンハ以下略
「闇の棲む家」インゲル・フリマンソン 中野眞由美訳
"Då i vårt mörka hus" by Inger Frimansson
⇒職場の共用ポットに何か入れる話とアルコール耽溺者のコンボ。
福祉国家スウェーデンですが、職場の連名で、全員署名で、
あんたとはやっとれんわと書面作成すると、名指しされた人は、
解雇になるみたいです。フィアー!!!あとヒロインの恋人で、
ヒロインの酒癖を嫌って姿をくらますセクシーな好青年は、黒人。
ヒロインの母親が彼に、娘にブルカを着せるつもりなのかと、
問い詰める場面があります。頁124。ヒジャブでなくブルカ。
「ポールの最後の夏」エヴァ・ガブリエルソン 中村有以訳
"Pauls sista sommar" by Eva Gabrielsson
⇒福祉国家の高齢化問題のひとつ。
(といってしまうと何も語っていない)
「指輪」アンナ・ヤンソン 稲垣みどり訳
"Ringen" by Anna Janson
⇒北欧だから、エルフとかガンダルフとかが出ますよ。
こわい目に遭う引っ込み思案の少年の夢の中で。
「郵便配達人の疾走」オーサ・ラーソン 庭田よう子訳
"Postskjutsen" by Åsa Larsson
⇒十九世紀の鉱山都市の話。極寒の地でも、産業が隆盛した時代は、
都市が成り立って賑わって、雑多な人々の間で事件があった、という話。
頁200
レスタデイウス派と熱狂的な福音主義者ときたら、いつも忘我と無分別の一歩手前にいた。ノルウェー北部のカウトケイノでは、改宗したばかりのレスタディウス派の一団が、熱狂的な信仰心から事件を起こした。罪業である酒の販売をやめさせようと、保安官と店主を殺して牧師館に火をつけ、牧師夫妻を殴打したのだ。ビョルンフートが生まれる前の事件とはいえ、カウトケイノの暴動として、いまだに人々の口の端にのぼっていた。
頁196によると、レスタディウス派は絶対禁酒主義で、自身が飲まないだけでなく、
招待先で飲酒者をにらみつけて延々酒害を説教し、相手を怒らせるとか。
頁218で、東西分裂したレスタディウス派両説教師のつばぜり合いがあり、
東西共に、寄付に頼らず自活して説教する、清貧生活の苦労が書かれます。
「呼び出された男」スティーグ・ラーソン ヘレンハルメ美穂訳
"Superhjärnan" by Stieg Larsson
⇒ディストピアもの。右の人なら「パヨクの妄想の〜」と冠詞をつけるかと。
舞台は北欧でなく、アメリカ合衆国です。
「ありそうにない邂逅」ヘニング・マンケル&ホーカン・ネッセル
ハレンヘルメ美穂訳
"Ett osannolikt möte" by Henning Mankell & Håkan Nesser
⇒ファンサで書かれるような、人気作家二人の夫々の主人公と作者も登場の、
夢の競演夢の一夜、の話。ここまでねたばれしてインカ帝国です。
「セニョール・バルガスのアリバイ」マグヌス・モンテリウス 山田文訳
"Ett alibit åt señor Banegas" by Magnus Montelius
⇒作者はアフリカや中南米の「第三世界」や崩壊前の東欧で長く、
「環境コンサルタント」の仕事をしてきたとか。また、親族には、
急進的左派として政治に関わっていた人が多かったとか。
名前もギリシャっぽい人ですし、タイトルの"ñ"もスペイン語。
セニョール Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%8B%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%AB
「瞳の奥にひそむもの」ダグ・エールルンド 吉野弘人訳
"Något i hans blick" by Dag Öhrlund
⇒前述の、「人を惹きつける才能の持ち主で、大変裕福な株式ブローカーでありながら、
女性を辱め、男女を問わず殺しを楽しむサイコパスの殺人鬼シリーズで、
好評を馳せた」作家さんです。“人々が想像の中でしかできないことを実際に
やってのける”人物で、クリストフェル・シルヴェルビエルケという名前だとか。
この短編はそういう話でなく、スウェーデンのクルド難民社会における、
「名誉殺人」の話です。主人公はそも、親が親の決めた結婚相手に処女で嫁がないとか、
そういう理由で娘を殺すことを「名誉」と表現するスウェーデン社会もどうなの?
と言ってます。その言葉を使うのはフェミとか政治家だとか。頁327。
家族の名誉を辱めるから殺害する。主人公が使うべきだと言ってる、
「不名誉殺人」や「文化殺人」ももう少し煮詰める必要があるかと思います。
頁322
「亡くなった少女はレニヤ・バルザニ、十七歳。北イラク出身のクルド人。父親のショルシュがリビングにいます。われわれが着いたとき、ほかにはだれもいなかった。家の中は確認しました。リビングとバルコニーはひどい状態で、いま鑑識が調べています」
「ありがとう」
イェニーは警官の脇をすり抜けて、廊下に向かった。右側の寝室のドアが開いている。彼女は立ち止まって、中をのぞいた。
そこは典型的な女の子の部屋だった。ジャスティン・ビーバーのポスターが壁に貼ってあり、化粧台の上にはラップトップ・パソコンが口紅や消臭剤、香水を押しのけるようにして置かれていた。iphone用のスピーカー、テディベア、ピンクの枕が、ぞんざいにメイクされたベッドの上にある。ジーンズとキャミソール、下着が椅子の上に置きっぱなしにされていた。
XOXOと書いて、「X」がハグ、「O」がキスの意味とは、
知りませんでした。頁348。
「小さき者をお守りください」マーリーン・パーション・ジオリート 繁松緑訳
"Se till mig som liten är" by Malin Persson Giolito
⇒スウェーデンで唯一の二世作家で、法律事務所に勤務していたが、
第一子第二子第三子とどんどん出産後の職場復帰と昇進が難しくなり、
最後は復帰㍉といわれて作家に転じたとか。北欧でもそうなんですね。
この作品もそうですが、児童虐待とかミスリードとかを深く考える、
人みたいです。
本書全般に言えることで、首都ストックホルムを舞台にした作品はあっても、
あまりそれを前面に押し出してはおらず、ヨテボリとかウプサラとかの、
ほかの都市が見える構成になっています。あと離島とか。
「大富豪」マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー 関根光宏訳
"Multimiljonären" by Maj Sjöwall & Per Wahlöö
⇒さいていの人格者が富豪足りうるという話。卑近の誰それを、
想起しました。ほんと善人は金持ちにはなれないなと。
アメリカ人のアメリカの話ということになっています。
「カレンダー・ブラウン」サラ・ストリッツベリ ヘレンハルメ美穂訳
"Kalender Braun" by Sara Stridsberg
⇒歴史ものの大物新人だそうです。ナボコフのロリータは、
ハンバート・ハンバート視点で語られてるので、ロリータ目線で語るとか、
そういうの。ねたばれで、これは第三帝国末期のブラウン姓の女性の話。
「乙女の復讐」ヨハン・テオリン ヘレンハルメ美穂訳
"Jungfruns hämnd" by Johan Theorin
⇒漁業の話。
「弥勒菩薩マイトレーヤ」ヴェロニカ・フォン・シェンク 森由美訳
"Maitreya" by Veronica von schenck
⇒ギャラリーフェイクというかオークションハウスというか、の話。
北欧の警察には、そんな専門部署がほんとにあるんでしょうか。
作者はプローゲーマーやコンピュータ評論家、イベント誌編集者、
就活コンサルなど多彩な経歴を持つとか。主人公の恋人(警官)は、
回教徒もしくは黒人。
「遅すぎた告白」カタリーナ・ヴェンスタム 内藤典子訳
"Sent ska syndaren vakna" by Katarina Wennstam
⇒解説によると、スウェーデンのクリスマスでは1960年以降、
ほぼ毎年ディズニーアニメの特別番組が午後三時から四時まで放送され、
国民の三分の一以上がこれを視聴し、『牝牛のフェルナンド』
『リスのおもちゃ合戦』『サンタのオモチャ工房』などの歌詞や台詞は、
スウェーデンで育った人ならほとんどみなそらで言えるとのこと。
親父にもぶたれたことないのに。バルス。
主人公は同性婚警官(籍は入れられるのかどうかちゃんと読んでません)
というかカーリングシューズって、外出時に履いたりするものなのか。
頁472。知りませんでした。
巻末に編者の謝辞と、英文のパーミッション一覧。以上
【後報】
「瞳の奥にひそむもの」ダグ・エールルンド 吉野弘人訳
"Något i hans blick" by Dag Öhrlund
⇒追記として。
アルコール依存が登場するのは、この話と下記ですが、
下記が当事者であるのに対し、クルド難民のこの話では、
公営住宅の隣人としてアル中が登場します。
「闇の棲む家」インゲル・フリマンソン 中野眞由美訳
"Då i vårt mörka hus" by Inger Frimansson
⇒この話では、アル中が主人公で、それがため恋人も職場も失う。
クルド難民の話では、アル中は目撃者で、しかし何も見ていないので、
供述書は二転三転して定まりませんが、世論の加勢もあり、
法廷はビシッと決まった格好で能弁吶々、見てきたようにスラスラと、
あることないことぺらぺら立て板に水です。こういう人はいます。
こういう人にいちいち突っ込んでると言いっぱなし聞きっぱなしに、
なりませんが。います。パラノイアー。
で、裁判員裁判の陪審員がそのアジテートに、
心震わせるのかと思いましたが、裁判官の裁判でした。
そのへん北欧ではどうなっているのか。
(2018/2/26)