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思った以上によかったです。想定外。ちなみに簡体字で書くと"军中乐园"
こぼれおちた、愛
運命に翻弄された男と女の完備甘美で残酷な物語
この監督が、ジー…娼妓との恋愛みたいのを描きたい人であることは、「モンガに散る」でも、顔にアザの小学校の同級生に茶室で再会して、という展開があることからも分かりました。
パンフのインタビューで、なぜこんなセンシティヴなテーマを選んだのですかという問いに、テーマのほうが自分を選んだみたいな答えをしてたのも、そういう意味だからだと思う。冒頭のまずウェード式アルファベット"HOU HSIAO HSIEN"が素晴らしかったでした。
「モンガに散る」では台湾人のふたりが学校教育で習得したコレクトな南京官話のはっちょんで、「ニー、ウェイシェンマズオジーニュィ?你为什么做妓女?*1」「ナーニーウェイシェンマズオションディー!那你为什么做兄弟!*2」という、ガンツイといえば干脆すぎる会話をしてましたが、「軍中楽園」は伟大领袖蒋総統健在、民國六十年位迄の話ですので、こんなに國語がウマいというのはフィクションな気もしました。あと、客家語があっても私は分かりません。アミ語とかタイヤル語があっても同文。むろん閩南語おいておや。にわと…妓女二大派閥のいっぽうが臨時サンバを務めるさい、イキナリ「イー、アール、サン」とかになって面喰いました。両閥ともに閩南語閥だと思っていたので…
脱線しますが、「モンガに散る」同様、風俗で同級生に会うということは、狭い田舎だとけっこうあるらしく、神奈川県は人口は多いがけっして狭くはないのですが、まあ、ままあって、だいたい「こんなとこでなにやってんだよ」「こんなとこ来るの?」というやりとりの後、やることはやるそうです。私の知人に、上京後、ナイタイとシティプレスを毎号買って(今でもあるのかこの風俗雑誌)、同級生が出てないか見てる、という趣味の人がいて、彼自身実家に帰らず逃げ回ってる人でしたが、3.11以後、彼の実家じたいが福島原発20キロ圏内で、帰って来いと言っていた実家の人間もすべて山形等に避難したという… 脱線終わります。
主人公が「モンガに散る」の天才軍師he尚役の人なのですが、この映画ではわりと愚鈍な役を演じていて、最初はイメージが重なるので、振り払うのに苦労しながら観ました。フロッグメン部隊は、船戸与一も金門島の小説で書いていた気瓦斯。
- 作者: 船戸与一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/01/30
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你们这些外省仔一辈子回不去啊!!!*3このセリフは胸を貫いたです。
なぜなら、私は、そののちの、小三通とか、探親帰郷とか、直行便はないけれどチャーター便とか、手紙の解禁とか*4、そういう時代を知ってるからです(他の観客もみなそうでしょう。やがて時が満ちれば、帰れる。帰れるけれども帰ったさきに故郷は、係累は、というのはまた別の話)。この時代の閉塞感からだけで首をひね以下略しなくてもヨカッタのにと、切に思った。すごい焦燥。"俺an"の一人称って、どのへんでしたでしょうか。ギョーザ地帯で、羊も飼ってるとか… 山東方言ではないと思うのですが…(⇒Wikipediaによると山東人だとか。え〜) しかし、この映画の、包餃のスピードは、遅い。慢的不得了。チャウ・シンチーの食神で、少林寺が湖南省にあるという、資本主義圏の大陸地理に関する無知というか混同というかの場面がありますが、この映画の、初恋のきた道に羊の群れがおまんにゃ、みたいな描写が、正しいのかなんなのか分かりませんでした。水泳達人揃いのはずのフロッグメン隊長が内陸出身という面白さは後から理解しましたが、どこの方言なのか、ネイティヴなら一発で分かるのでしょうが、知りたかったです。831の所長や、ひとり客で、サーズブホリョ、とか言ってた(違うかも)老兵とか、それぞれどこなのか分かると、以前見た、退役外省人兵の老人ホームの映画で、みな大陸の何処から来たか、みたいな地図が壁にデカデカとかけてあるのか思い起こせて、よいと思います。
2016-05-19『老兵挽歌 〜異郷に生きる〜』劇場鑑賞
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160519/1463672353
2014年本国公開の映画が、なぜ日本での公開は2018年までかかったのかとか、軍中楽園でなく八三一のほうがタイトルとしてよくなかったか、とか、私は、大陸は電話番号とかのさい、イーとチーが混同するので、イーはヤオと発声するが、台湾はヤオに転化しない、と覚えてたのですが、それは模造記憶だったのか、この映画でバーサンヤオと言ってるので混乱したです。あとで検索しよう。
以下後報
【後報】
私が中国映画を観る際イヤな点のひとつに、中国人というのはなべてムッツリスケベで、キレイごとを言いながら真っ黒にエロいので(個人を個人単位に還元せず民族という空想上のカテでひとくくりにして色眼鏡レッテル張りをしてはいけない)、その抑圧から来る、ただ単にツマラなくエロい描写が本当にくだらないと思うのですが、(たぶんホワヤンニエンホワは違うと思うのですが、未見)"HOU HSIAO HSIEN"もそういうのには錐を突き立てるように嫌いだと思うので、そこのせめぎ合いなのか、主人公の童貞、童男子がいつ失陥するか、舟山列島、大陳島に続き、羅保臺de金門何時失陥呢?というこの映画最大の焦点が、寸止めにつぐ寸止めののち、カタストロフィに至るかに見えたあの刹那の展開が、非常によかったです。そしてそののちの、人生なんてこんなもの、的な、放棄の場面も、よかった。モンガに散るで和尚を演じたわけですので、仏門の僧侶のスペルマティック・クライシス(Ⓒ中野美代子)は斯く終息セリ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Paradise_in_Service
ニウ・チェンザーと書いて鈕承澤の監督は、モンガに散るでも、外省人化する本省人ブンケランにたけしの首コキコキのオマージュ演技をさせてるように、ヤクジャ映画とか似合う人だと思うのですが、"HOU HSIAO HSIEN"は小津オマージュで、風にえんえん草木が揺れてたり、川の流れに草はそーそーみたいな人ですので、ふたつの個性のぶつかりあいで、この映画がよくなったと思います。非情城市の婚礼の場面とそっくりそのままの閩南語の婚礼のセリフ、イーキウ、サムキウ、バーイ、みたいな儀礼の場面で、新郎だけ大陸の年食ったオサーン(ぐんじん)とか、素晴らしかった。
家族のポートレートも、"HOU HSIAO HSIEN"と鈕承澤の合作っぽくてよかったです。いじめに耐えかねて脱走した二人は波間に消えるですが、その二人が天安門広場で紅衛兵のカッコで記念写真とか、ファンタジーもいいところかと。国府の特務の疑いでその辺のアモイ近辺の広場か河原で公開銃殺が関の山ではないかと。1969年でしょう?
この天安門の写真は合成と思うですが、北京ロケ班がいるとエンドロールにあり、どこにその必要があるならと思いました。まさかこの写真一枚のためにロケ班組んだとしたら最高ですが、それはないだろーと。
あとまたあれば。(2018/6/3)
オダサガ
【後報】横浜で見ました。ユーロスペースは、円山町?に移転して以来、本当に行かないです。すぐそこが東電OL殺人事件のジンセンのような気がして。ごひんだ。で、今は、イメージフォーラムのほうで、見たい映画をよくかけてるので。アップリンクは以下略(同日)
【後報】"你们这些外省仔一辈子回不去啊"でなく、"你們這些外省仔一輩子都回不去了"が正しかったです。よく見直すと。語尾の「ア」とか「ヤ」とか「ヨ」とか「ラ」とか「ダラ」とか「レ」とか「ロウ」とか「ネ」とかは、私はネイティヴとは違う押韻を選択しがちで、もうそこは八割の確率で直らないだろうと思ってるので、別にいいですが、「ドウ」は聞いたような聞いてないような、で、外していたのですが、やっぱり入っていたので、ガックシです。さらに言うと、前半部分は、「ワーシンチャイ」と言ってるようにも聞こえるのですが、それだと、前半方言後半國語ということになるので、ホントはどうなんだかと思います。(2018/6/4)