「グブラ」マレー語名:"Gubra" 英名:"Anxiety" 中文:"花開總有時" or "焦慮" 劇場鑑賞(シアター・イメージフォーラム 没後10周年記念 ヤスミン・アフマド特集 Yasmin Ahmad Retrospective)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ms/thumb/8/88/Gubra_01.jpg/330px-Gubra_01.jpg暗いポスターですが、観ると非常に明るい映画です。交錯するもう一つのストーリーは、ヒジャブを人に買ってもらうなど、それなりに重いですが。

イメージフォーラムの今回の特集では、二日目に、タレンタイムの音楽を担当したピート・テオと、オーキッド役の女優さんが来られてトークイベントしたそうで、事前にはなんの予備知識もないのでなんとも思ってませんでしたが、こうして映画を観てしまうと、激しく現在のこの女優さんを見てみたいと思いました。とにかくこの映画の彼女はかわいいです。イチバンだと思いました。背が低くて、長い髪のワンレンだからだろうと言われると、それは違うと言い返します。私がイチバン好きな場面は、彼女が、父親が倒れたと聞いてとるものとりあえず駆けつけて、マレー人の家は玄関で履物脱ぐ?ので、戸口でサンダル右左両方真上に跳ね上げて脱ぐ場面。おきゃんというかおてんばというか。それで人妻役で、浮気者のダンナは、フジモンみたいな人。

今回、後で後悔したのが、ほとんどの作品で、字幕作成者は勿論、監修者も最後に名前が出てくるので、それをメモしておかなかったこと。ほとんどかぶってないと思います。ぜんぶ違う人かもしれない。で、この映画、日本語字幕でタイトルが「ガブラ」オーキッドが「オーケッド」なのですが、それはいいとして、煩わしいと思ったのが、他の映画もたいがい英語字幕が下にある上に右に日本語字幕の上映だったのですが、これだけ、中文字幕が英語字幕の上だか下だかについていて、三言語で字幕があるという、むちゃくしゃ豪勢な構成で、で、それで主言語はマレー語というわけでもなく、オーキッドもその母も英語会話が大好きという… 私は日本語字幕はぱっと読めますが、英語字幕は、切り替わるまでに半分くらい追うのが精いっぱいで、中文だと、最後のふたつくらい単語を逃す感じです。三つも書くな。ぜんぶ目に飛び込んですっごい疲れるやんか。

で、この中文字幕が、簡体字なんですね。マレーシアは、"马来西亚"でなく「馬來西亞」の繁体字圏だと思ってたのですが、昔の話なのかなあ。それともこれは簡体字シンガポール公開版なのかしらん。分からないのでスタッフに聞いてみましたが、分かりませんメンゴとのことでした。冒頭、オーキッドとダンナがベッドでいちゃつく場面でしたか、"别斗了,我已经迟到了" と字幕が出て、"斗"じゃなく"逗"だろ、この程度の誤字も直さないレベルなのかと思いましたが、それが孔明の罠で、次々と英語と対照しながら見て、こんなに練れてる漢語をつぎつぎ繰り出してくるなんてやっぱマルチリンガル環境は恐ろしい、驚異だ、と思ったのですが、具体的に何もメモれてません。

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2005 第3作
グブラ Gubra
2005|カラー|113分|出演:シャリファ・アマニ アドリン・ラムリ
マレーシア・アカデミー賞グランプリ
『細い目』の数年後。結婚したオーキッドは、父の入院をきっかけに、夫の裏切りに気づく。一方、町の反対側にある低所得者の地域では、イスラム教聖職者とその妻が、近隣者の困難に向き合う。2つの世界をパラレルに描く意欲作。
提供:Nusanbakti Corporation Sdn Bhd 協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター

Gubra - Wikipedia

The title is a word in the local Penang or Kedahan variant of Malay used mainly used by the mamak community meaning "worry".  

 メモに、「リー・クワンユー」と書いてるのですが、なんだか忘れました。ジェイソンのお兄さんの漢語名だったかなあ。シンガポールの名宰相の名前をそのまま使ったからには、何か風刺があるんだろうか、でもヤスミン・アフマドはそういう作家ではないし。お兄さんが"义勇军进行曲"の歌詞、チラーイ、チラーイ、チライを歌う部分と、ラジオDJと歌が北京語です。あとは広東語じゃいか。リー家の母親がいっさい広東語を喋らないのに漢人の服を着てるのが妙で、それで旦那は入院中なのに、非常に老妻に対しワガママでしょう。台湾の外省人国民党兵士が眷村で原住民の嫁を貰うようなものかと勝手に推測してましたが、前作「細い目」(セペット)を見てれば、ここは何の不思議もないです。前作で解説済の部分は重ねての説明を省略してますので、こうなる。

並行して展開する、マレー人娼婦と隣人のアホン一家(アホンとは言わないか、マレーでは)の物語で、娼館のやり手ばばあ(というには若い)は、売り物の女の子を傷つけて大枚払う乗客が帰る際、広東語で罵っています。ということはこの客はマレー系か広東語の分からない華人なわけですが、それでも、マレーシアで白話といえば広東語とは私もうなづく点ですので、客がワルクチ言われて分からないとかあるのかなあと思いました。

私は「グブラ」を先に観て、「細い目」に対し非常に妄想を膨らませ過ぎてしまったのかもしれません。「グブラ」だけにしておいて、まだ見ぬ「細い目」は空想のままにしておく。いや、でもやっぱ見ないと。

タレンタイムでは教師役の、マツコデラックスなお手伝いさんや、タレンタイムで初めてイギリス人の血を引いてる設定になる父親、等々、レギュラーキャラがレギュラーである旨が分かりますので、そこもよかったです。もう一つのストーリーで、しょうもないヒモがヤキ入れられた後で登場する場面は、片目に眼帯すればいいのにと思いましたが、先に撮ったのでどうしようもなかったのかなあ。

ヤスミン・アハマド - Wikipedia

www.imageforum.co.jp

エイトタイムスの個所。ラッキーナンバーってのは、華人社会の話ではと思いました。「發」と広東語で同音だったから、と記憶してますが、模造記憶かもしれません。検索は、しない。

今、ホントの漢語名を求めて検索回しましたら、この映画が賞獲った時に、監督が文化汚染と批判されて、主演女優が公の場で言い返すという出来事の、現地邦人ライターの方のブログが出て、映画そのまんまの性格なのか? と思いました。マルチカルチュラルに対する批判という文脈なのかなあ。で、それに対し反撃と。イメージフォーラムでも売ってた本に、そのへんも書いてあればいいんですが(買いませんでした)

マレーシア映画の母 ヤスミン・アフマドの世界――人とその作品、継承者たち (シリーズ 混成アジア映画の海 1)

マレーシア映画の母 ヤスミン・アフマドの世界――人とその作品、継承者たち (シリーズ 混成アジア映画の海 1)

  • 作者: 山本博之,秋庭孝之,及川茜,金子奈央,篠崎香織,宋鎵琳,西芳実,野澤喜美子,深尾淳一,増田真結子,光成歩
  • 出版社/メーカー: 英明企画編集
  • 発売日: 2019/07/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 以上

【後報】

トレーラーがあったので貼っておきます。このトレーラーで初めて、ジェイソンが普通話で朗読してたインドの詩人がタゴールであることが分かりました(やっぱり(´Д`) 二作越しでそれを提示してきてたんだなあと。

www.youtube.com

しかしまあ、明るい映画なのに、トレーラーも暗いんですね。なんでこんなマスクしたんだろう。

(2019/8/5)