読んだのは下記単行本。 地球の歩き方のパロディ表紙。衛兵がギネス片手。表紙に書いてあるけど奥付にない単語が、「イギリス・アイルランド The United Kingdom, Ireland」「NOT GLOBE-TROTTER TRAVEL ESSAY」チョン・セランのインタビューに名前が出てきたのでふらっと検索して、この本が出たので読もうと思って借りました。
ブックデザイン……………板野公一(Welle design)
イラストレーション………田中英樹
本文データ制作……………講談社文芸局DTPルーム
初出………………………「IN☆POCKET」二〇〇四年一月号~十月号
衛兵が銃剣付自動小銃を帯同している絵だったので、誇張かなと思ったら、現実の衛兵交代の場面は警官等もっと重装備だった。
表紙の単語"Ireland"が、リパブリックとノース不分別など、いくら酩酊でも作者の矜持に関わるのか、あるいはもう地球の歩き方のパロディ自体が古いのか、文庫本の表紙はガラッと趣を変えています。どちらも、こないだ私がデジタルリマスター観たフリードキン映画「恐怖の報酬」を意識した表紙ではないです。作者が意識してるのは1952年の、カンヌで賞とったフランス映画の方。
「恐怖の報酬」日記―酩酊混乱紀行 (講談社文庫 お 83-6)
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/05/15
- メディア: 文庫
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題名の由来は、作者が大の飛行機嫌いであることから。でもオオゲサと思う。飛べないダッチマン、ベルカンプほど筋金入りでもない証左に、この旅行記で、成田からロンドンまで飛んでしまうし、ロンドンからダブリンまで飛んでしまうし、あまつさえ空路で帰国している。
デニス・ベルカンプとは (デニスベルカンプとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
大の飛行機嫌いであるベルカンプは実際飛行機で移動することは... - Yahoo!知恵袋
スティーヴン・キング、アーサー・C・クラーク、レイ・ブラッドベリ、スタンリー・キューブリック、ダンサーインザダークの監督と、飛行機嫌いを頁6で列記してますが、ベルカンプがいないリストなぞむなしいだけ。
頁17、持って行く本で作者が選んだクドカン『私のワインは体から出て来るの』は読んでみます。「クワイエットルームへようこそ」の、収入はあるのに自分に自信がない男の役はよかった。自信を間違ったカタチで身につけようとしていない。
頁107、ソールズベリーで、ハッピーアワーのセットを頼む場面。まだこの頃日本にはこの言葉が定着していなかったようで、「居酒屋のほろ酔いセットのようなもの」と注釈をつけています。ただし、今の日本のようにパンクチュアルな制度ではなく、ハッピーアワーかどうかは日没後か前かで判断されるようで、店員が窓の外に身を乗り出して空を見て、オーダーを受けていいかどうか決める。
頁131、ダブリンの道路に面した店の三分の一はパブ、という描写がよかったです。今でもそうなんだろか。アイリッシュシチューを頼むと、洗面器みたいな器に入って出てきて、ふたりでシェアしても食べきれない。その街で眠って、作者は夢の中で霊能者になっていて、ねこを探す。
思ったより酩酊もしておらず、さまざまな種類の本場ビールを何パイント何パイントと峰うちじゃ安心せいてな感じで飲み下してゆくので、アホらしくなって詩的な部分に注力して読みました。この人も雑学の鬼というか、ほっといても漏れる人なのかと。そういう校風だったか。いや個人の資質だろう。以上