Book Design:円と球 フォントディレクター 紺野慎一
編集担当:林佑実子 監修:西森マリー
ツイッターアカウント『ツイ4』と星海社ウェブサイト『最前線』に2017年9月~12月掲載分を加筆修正・再編集書籍化
サウジアラビア旅行記があるということで、いちばん最後にとっておいた巻。主人公たちがサウジに行くのではなく、作者が漫画スクールみたいなインビテーションもらって、向こうの少年少女たちに前期後期併せて二週間漫画を教えたそうです。
作者が在京でないこと、酒飲まないこと、日光がキツいのでサウジでは布で覆って外でないと死ぬと思ったこと、シリア人コミュニティにもおよばれした話、サウジの半分の出稼ぎ労働者とその周囲にいる物乞いの話、等々が書いてありました。ヒジャブで顔が分からないのに「私のこと覚えてる~?」と前期の生徒に後期に話しかけられる場面がありますが、ご愛嬌かもしれません。漫画本編の頁52に、学校の外ではヒジャブだけど中では制服のJKのコマがあり、どんな制服か分かります。どんなまんがにどんな情報があるか、世の中は本当に分からない。サウジでも高校によって制服が違うのかどうかは書いてませんでした。あと、サウジでも手で食べるということで、インディカ米はさめやすいので手食出来るが、ジャポニカ米は熱いので㍉という意外な視点が語られます。ナンとかチャパティで手食するのかと思ったら、米か。アラビア半島の水田って、どこにあるんでしょう。
この巻からサトコが、円安もあってバイトを始めます。ビザの関係で学内でしか働けないのでカフェテリアで。そこのライスボールコーナー。ライスボールコーナーがあるんだと。ラスト、コーン畑の迷路を歩く場面がこの巻の山場でした。よっぽど印象深かったのか、裏表紙カバーもコーン畑です。
ボーナストラックはサトコの留学志望動機。イスラム教知識講座的には、一夫多妻の成り立ちや実際、礼拝の前の洗い方詳細(これは中国でも回族が多い所に行くと聞いたり見たり出来る。多い所に行かないなら分からない)直に男性に話せないのでカップにメモして渡したりする場面など。
学内の親睦パーティでポットポットこんにちは(ルックルックこんにちはのだじゃれです)の場面があるのですが、中国で言えば共産党青年団みたいな組織主催のパーリーでマリワーナ海溝があるのは合法の州だから、みたいな注釈があって、しかし何故か吸うのはトイレ。やっぱりうしろめたいというか、そういう場所でないとふいんき出ないんでしょうか。
アラビア数字講座は、イランは同じ字なのに読み方が、インド亜大陸と共通の根っこのエーク、ドゥー、ティーン、チャハル、パーンチなのに、アラビアは全然違うことを忘れてたのを思い出しました。これは分からない。モロッコとかエジプト、レバノンに行っても覚えるんでしょうかね。これがトルコになるとビル、シッキ(イッキ)ユチ、トッティ、ベシになるんでしょう。ムスリムとひとくちで括っても、中が広いなー。インドネシア語はサットウ、ドゥア、ティガ、あと忘れた。
正直、本編でサトコが、仲良くなったナダに招かれてサウジに行くのかと思ってたので、なかなか行かないなーと思いつつ終わりのほうのページまで読み終わって、例の四つん這いで縦線がいっぱいある心理描写になりました。中国で中央アジアの留学生と知り合って、カザフスタンやウズベキスタンに旅行に行くようなイメージで考えてましたので、サウジはやっぱ敷居が高いんだなと改めて再確認。アメリカで知り合ってもそうそう母国には招かれないのか。お金の問題もあるでしょうが。
サトコが「おいっちに、さんし、」とやってるので(何をかは不明)ナダが日本語の数量詞の「1」を「オイッチ」だと思い込んで他の日本人に使って「????」になる場面、こういうことってほんとよくあるんだなと思いました。サトコはナダが真似するのがかわいいので直さなかったと。前世紀中国でいちばんポピュラーな日本語教材"标准日本语"「標準日本語」では、十個だか十回を、「じっこ」「じっかい」と書いていて、「じゅっかいだろ~」と幾ら言っても教科書には勝てなかった思い出があります。ちょっと違う話か。
こういうエッセー風まんがは、至るところにあると思うのですが、何故かなかなか読むことはないです。いろんなレイヤー向けの情報をどのように混ぜて混ぜて書き込んでくか、正解はないですが、主人公の性格同様、さらっと描いてくどくない作風が心地よかったと思いました。ねっとり暑く語る漫画は、その内容が押しつけだとキツい。別に批判するわけではないのですが、以上です。