『アンダスン短編集』(新潮文庫)読了

読んだのは昭和五十八年の11刷。解説は訳者。カバー 麹谷 宏 

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アメリカ南部のオハイオ州に生れ、名作『ワインズバーグ・オハイオ』を発表してアメリカ文学の代表的作家に数えられるアンダスンの珠玉の作品集。陽気な人間になろうと涙ぐましい努力を重ねる男の哀しくも滑稽な姿を描く『卵』、孤独な老婆の生涯を少年の眼を通して綴る『森の中での死』など、ひっそりと人生を歩む人々の心の屈折を抒情に満ちた文章で物語る10短編を収録する。
アンダスン短編集 (新潮文庫 ア 4-2)

アンダスン短編集 (新潮文庫 ア 4-2)

 

シャーウッド・アンダーソン - Wikipedia

 <目次>

卵(The Egg)

兄弟たち(Brothers)

もう一人の女(The Other Woman)

そのわけが知りたい(I Want to Know Why)

灯されないままの明り(Unlighted Lamps)

悲しいホルン吹きたち(The Sad Horn Blowers)

女になった男(The Man Who Became a Woman)

森の中での死(Death in the Woods)

南部で逢った人(A Meeting South)

トウモロコシ蒔き(The Corn Planting)

相変わらず味があって、よかったです。時々こういう、しんみりしてるけど乾いたブンガクを読まないと寂しくなりますし、自分が落ち着いてないことを忘れそうになる。

死んではいけない一家の大黒柱、かえがたい家族の一員の不慮の死、というテーマをたんたんと描いてゆく作品が三つもありました。『灯されないままの明り』『森の中での死』『トウモロコシ蒔き』

最初の話もその次の話も『南部で逢った人』もスラップスティックといえば言えます。ランプの明りで、メインストリート一本に沿って商店が並んだだけの町と、その突き当り、人家が尽きる手前、最後の商店のあたりに馬を繋ぐ場所がある開拓街。その時代の、夕闇に、仕事を終えて夕食を摂った後、そぞろ外に出て散歩する人たちのスラップスティック。日本でいえば若衆宿があった頃か。

『女になった男』がいちばん凝っていて、男を気にする男、男が気になる男(自分)ってヘンじゃなかろうかとか、それをカムアウトする勇気が自分にはないと思ってる青年、黒人に対してフラットで、自分には偏見はないんだけど向こうのほうがある時もあるかもしれないという色白の青年が、納屋で素っ裸で寝ていたら、酔った黒人が乱入してきて、女と間違えられて貞操の危機、という話です。なんだこの入れ子の構造。

頁154『女になった男』

たいていどの町にも大部分はその町の婦人キリスト教徒禁酒協会の経営している、食堂と称される小さな店があって、そういう所でなら二十五セントでましな食事ができるので、わたしたちはそういう店を利用していた。少なくともその当時のわたしたちはそういう店の料理をうまいと思っていたわけだ。 

ベトナムにもあるんでしょうか。 以上