『電飾の夜23:59発』読了

https://mediaarts-db.bunka.go.jp/mg/books/1161179

坂口尚 - Wikipedia

坂口尚の1983年の短編集。町田ことばらんどに行くついでに寄るコーヒー専門店にあったマンガ。この店に、福山庸治がけっこうあることは以前書きましたが、この日立ち寄ったらこれがあったのでささっと全部読みました。ほかに、『以蔵のキモチ』の佐藤宏之の短編集『胡桃』(ビッグコミックス)と、東本昌平F.O.E』(アクションコミックス)全二巻がありましたが、特に興味はありません。今検索したら、佐藤宏之あすなひろしの押しかけアシスタントだったと書いてあって、へーと思っただけ。チャンピオンの漫画は読んでなかったし、一色まことと同じくらい原稿落としてた人というイメージでした。

佐藤宏之 (漫画家) - Wikipedia

 アマゾンの中古書だと上の表紙なのですが、読んだのは下記の表紙です。文化庁のメディア芸術DBによると、全作品リストや難波弘之という人の解説が入っているものと、そうでないものがあるようで、私が読んだのはそうでないものです。でも表紙は下のほうがぜんぜ以下略

難波弘之 - Wikipedia

坂口尚 / 電飾の夜 23:59発 - 書肆鯖【ショシサバ】

http://img15.shop-pro.jp/PA01238/473/product/133690776.jpg?cmsp_timestamp=20180726143318

こっちのほうがよりふいんき出ています。表題作とその次の作品は、ウィキペディアによると書き下ろしだそうで、表題作は、後年『VERSION』で追及されるテーマを既に取り扱ってる気がします。というか、この人の常で、絵はいつも高レベルなのに、話に差がありすぎるという…表題作は、『石の花』や『紀元ギルシア』並みの予感があるのですが、あとはいつものエモーション過多と、なんでこんなん書いたん?という『あっかんべぇ一休』というか『VERSION』というか… 表題作は、タイトルも半魚人のミイラも主人公の古代文字専攻という設定も彼女の造型も何もかも間違っているのですが、にも関わらずこの余韻の残し方はただごとでないです。

1983年、『石の花』連載開始とほぼ同時期の作品なので、ここからすごいことになる時期だったのだと、表題作を読んでも分かります。『石の花』最初はたいしたことないのですが、どんどん凄くなっていって、どこかから吹いてくる風を信じる拷問中のパルチザンに、もと親友のナチス将校が、力の虹による超克をベタ塗りの顔で問いかけるコマなど、南無妙法蓮華経コミックトムも全員背筋が総毛だったと思います。侯孝賢が「悲情城市」の直前に「ナイルの娘」を監督したようなもので、何を作らしてもほとばしる才気が止まらない、人生の短いいっとき。そういえば、坂口尚高行健侯孝賢は、風に揺れる木々のざわめきが聞こえるという点で、同じです。

以上