わりと順当に図書館リクエストの順番がへめぐってきて、一年くらいで読めた本。装画 Little Thunder(Agence LE MONDE)装丁 佐藤亜沙美(サトウサンカイ)初出「文藝」2019年冬季号
表紙を描いたのが、最近読んだ山口文憲サンの『香港世界』河出リニューアル版の表紙やイラストも描いた香港人門小雷サンでしたので、へえと思いました。西尾維新の忘却シリーズの表紙を台湾のイラストレーターが描いてるのを知った時も驚きましたが、同じきもち。こういう絵を、国内のイラストレーターに依頼すると、あとで相手が別名義でエロマンガ描いてたりするので、そういうことがなさそうな、あっても分かりにくい、海外のひとに頼むのだろうか。花のズボラ飯。だいぶ、ブンケンサンの本のイラストと、テイストがちがうです。
タイトルの「かか」は主人公がママを呼ぶ時のスラングというかジャーゴンですが、作者のウィキペディアが日本語以外だとポルトガル語しかないのも、分かる気がします。カカだもの。
Rin Usami – Wikipédia, a enciclopédia livre
ポルトゲスだと正直に、野間文芸新人賞は受賞しなかったと書いてあります。文藝賞と三島由紀夫賞ダブル受賞で、野間宇文芸新人賞「ノミネート」というのが日本語版の書き方。
以前、『肉骨茶』という小説を読み、また、おらおらでひどりいぐもと同時受賞の『百年泥』という小説を読みました。これを読みながら、こういう段階で持ち上げる、ヨイショするのは本当に賭けだなあと思います。どう転ぶか分からない。
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裏表紙あらすじ
19歳の浪人生うーちゃんは、大好きな母親=かかのことで切実に悩んでいる。かかは離婚を機に徐々に心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになった。鍵をかけたちいさなSNSの空間だけが、うーちゃんの心をなぐさめる。脆い母、身勝手な父、女性に生まれたこと、血縁で繋がる家族という単位……自分を縛るすべてが恨めしく、縛られる自分が何より歯がゆいうーちゃん。彼女はある無謀な祈りを抱え、熊野へと旅立つ――。
未開の感性が生み出す、勢いと魅力溢れる語り。痛切な愛と自立を描き切った、20歳のデビュー作。
こ
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作者はしぞーか生まれ、かながー育ち、とのことですが、本文中の方言がナゾで、どこの方言でもないわけわかめ弁なのに、住所は作者のようにハマ? みたく書いてあって、具体的で、これに賞をとらせて次作を期待するのは、よっぽど、ほかの習作などを知ったうえでないと出来ない行為だと思いました。練習作をそれなりに読んでれば、ある程度自信もあったでしょうが。主人公はうーちゃんなのですが、ナレーターが語り掛ける相手は、どうやらうーちゃんの弟で、♂ です。で、ナレーターは女性のようなのですが、ネ申としかいいようがなく、誰なのかさっぱり分かりません。うーちゃん、もしくは、かかの別人格なのかもしれませんが…
そのうーちゃんが、本宮だか新宮だか、那智勝浦に行くわけですが、くじらは食べません。しぞーかはイルカ食べます。私の脳内知識だと、尾鷲から南は、どっかで台風で線路が流されてて、代替バスで、で、普及しても利用者少ないしなー、という感じでそのまんまほっとかれてたままだと思ってました。が、うーちゃんは全線鉄道で現地まで辿り着きますので、復旧したんですね。諸星大二郎『海神記』に出てくる「みみらくの浜」を、ホントは鹿児島か熊本なんでしょうが、私は和歌山だと思い込んでいて、以前命日に供養に行きました。そしたら白人女性の高校英語教師が砂浜をジョギングしてた。
頁61、ハンゲコウボクトウは検索しました。
半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ): ツムラの漢方処方解説 | 漢方について | ツムラ
のぞに違和感がある人にも処方されるそうで、「食道静脈瘤破裂(吐血)」という、アルコール依存症死因あるあるを連想しました。作者自身も、そのすぐ後の頁64に「希死念慮」なんて単語を唐突に出してきて、うーんと思いました。そっちを書きたいのか、これ一作でいいのか。
『推し、燃ゆ』はだいぶ違いました。サナギが蝶になって、ぶじばけて、ヨカッタデスネ。ほんまや。以上