「台湾抗日小説選」(研文選書41)読了

https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=158x211:format=jpg/path/scfe7f5442a85b617/image/i5105da583e3e1cc0/version/1399015900/image.jpg題字/陳逸雄(編訳者) デザイン/宮川正巳 まえがきあり 各著者それぞれに、訳者からプロフィール紹介がついてます。

台湾 - 中国図書専門 研文出版(神保町 山本書店出版部)

表紙の人物が誰と誰かは、書いてません。自分で調べるしかないのか。

研文出版の山本書店は、神保町の外れにあり、位置的に、カレーのエチオピア八木書店、書泉だか三省堂だかを南の端とするなら、その逆で、岩波ブックセンター芳賀書店以下略で、私は勝手に、イザヤ・ペンダサンサンが、店主には度々世話になったし、かたじけないし、と書いてる山本七平の山本書店かと思ってたのですが、違うし、と誰か言ってたような言ってないような。

最後に行ったのは昨年、ここを信号渡って日大のほうにちょっと行って右に曲がった銭湯からUターンして竹橋の近代美術館に鏑木清方を見に行く途中でした。店内には中国の知識人がいて、日本語の出来る通訳を連れて、あれこれ古書を買い求めてました。書店側も熱心に対応していた。いま、古書もあれだろうし、新刊もあれだし、こういうのもインバウンドというのかなあ、それで神保町も食ってるのかなあ、と思いました。本書はそれより十年くらい前に買った積ん読です。やっと読んだ。

書店公式を見ると、もちろん在庫ありみたいですので、中古しか出ないアマゾンは貼りません。

裏表紙にはまえがきの抜粋が書かれています。三点リーダーは中略を示していて、そこはあいだを飛ばしています。

 本書に収録した作品は次の基準に拠った。
  1.日本統治下に白話文で書かれたもの 
  2.新聞,雑誌に発表されたもの 
  3.抗日意識を基調とするもの 
 16篇のうち,頼和の「豊作」は楊貴が日本語に訳して,1936年(昭和11年)「文学案内」2巻1号に発表されたことがある。作家は殆ど全員が当時の啓蒙運動,社会運動に深く関わっていた人たちで,作品は1920年代から30年代の日本統治時期の台湾社会の一面が,どのようなものであったかを語っている.
 作品はおしなべて写実的手法で書かれている。書中に出てくる団体,派閥,行事,事件などは,すべて実在のもので,一見バカげて見える人名も,当時の実状を反映している.筋の設定も作者の見聞に基づくものが多く,作者自身の体験をふまえた私小説的なものもある.
 この傾向は新文学全般に共通したもので,旧文学との訣別を原点とする新文学が,写実主義への道を歩んだのは極めて自然なことでもあった。……… 
 本書に収録したような作品を読んで覚える感慨は,51年にわたる相当苛酷な日本統治下とはいえ,12,3年の間こういう作品の発表が許されていたということである。1950年代,60年代の台湾や中国大陸で,時の政治を批判するこんな作品が公然と存在できただろうか――答えは明らかにノーである.日本統治時代の方が良かった,という意味ではない.差別,圧迫,収奪のない植民地政治があり得ない以上、いかに美辞麗句を連ねて治績を示しても,失われた人命と傷ついた魂を償うことはできないし,正当化できるものでもない.日本の統治が終結して43年の歳月が流れたが,その後遺症は今でも台湾に深い痕跡を留めている.ただはっきりしているのは,植民地統治の軛から解き放たれさえすれば,政治は自ずと良くなるものでもないということである。
(本書p.14-15,17-18より)