毎度苦し紛れ。これも素敵な装丁ですが、デザインした人の名前は見つけられず。
表紙の写真は1897年、日本滞在時の孫文と支援者たち。南京出版社の本から素材を引っ張ったとあり、幾らだったのか、タダだったのか、ぼったくられてないか、気になります。
この人は長崎の大学で六年間教えていて、その間にローカル史調べて、それを、ほんとは長崎の出版社から出したかったけど、実現せず、福岡の出版社から出した、と、あとがきにあります。ペシャワール会に入ってると、福岡の出版社として、石風社の名前を覚えるようになりますが、海鳥社も福岡の出版社ですね。福岡には中国書専門書店の名門もある。あとがきには、初出一覧と各位への謝辞もあります。
とにかく本書はこの第二章です。「北洋艦隊水兵と長崎警察官の殺伐たる争闘」ひな形を発表したことはあったらしいのですが、新規書き下ろし。日本家屋の特徴である長屋の形状を活かした市街戦がいきいきと描かれています。血の気が多い市民が屋根にのぼって、屋根瓦をひきはがし、下の辻を逃げ惑う清国兵に投げつけるという立体戦術。映画で観たいくらいです。
あと、つけたしとして、出版前夜、中国の反日運動の絡みで、中国にある中国人倭寇(ヘンな言い方ですが、後期倭寇は中国人主体なのでそうなる)の親玉王直の墓が破壊された事件が起こりましたので、それを受けて、いろいろ思ったことを「補」として書いています。王直の墓を破壊したのは、実は朱紈のように無念の思いを抱いて死んだまともな官僚への支持表明とかかもよ、というふうに思えれば腹も立たない気もします。あとがきに出てくる、現代中国に批判的な著者にいつも笑顔を絶やさず応対する中国人研究者のように、いろいろな可能性、考え方を考えてみる。
以上