『ニュクスの角灯ランタン 4 』"Nyx's Lantern" Kan Takahama LEED Publishing Co.Ltd. 読了

 [装幀]坂根 舞(井上則人デザイン事務所)初出は月刊コミック乱 2017年5月号、6月号、8月号~2018年1月号。読んだのは2020年7月15日の3刷。

ニュクスの角灯  (4) (SPコミックス)

ニュクスの角灯 (4) (SPコミックス)

 

 四巻まで三刷と、なかなか売れてるんだなと思いました。頁33と頁193にカラーページが入っていて、自由だなと思います。でもいちばん不思議なのは、頁110の見開きのベタとニュクスロゴ。

コラム欄①。中川永吉さんという方の著書が二冊紹介されています。『女丈夫 大浦慶伝 慶と横浜、慶と軍艦高雄丸』と『政商 松尾儀助伝 海を渡った幕末・明治の男達』どちらもこのまんがの登場人物が主人公で、後者は中川さんという方の先祖だとか。長崎、九州の地方出版社の本かなと思ったら、新宿の自費出版を引き受ける出版社で、それでか、アマゾンにもレビューがついておらず、なかなか世の中は厳しいなと思いました。

コラム欄②。頁31、作者にコーソウを与えた、夜の女神が角灯(カンテラかもしれないとのこと)をぶるさげてふたりの天使を引き連れた構図のブローチの話。マットエナメルという、七宝をダイヤの粉でこすって黒くする珍しい技法が使われているそうで、わざと不揃いに散りばめた真珠も天然。アンティークジュエリーフェアで見て、手が出ず、このまんがが売れたので買おうと思ってディーラーに電話したら売れてたとか。買ってたら、絶頂が訪れてたかもしれませんし、何かが代償でするっとどっか行ってたかもしれない。そう考えれば、手元にないのも納得出来るかもしれません。

コラム欄の手書き文字。万年筆というか、どっかでこういうペン使ったなあと思いつつ分からなかったのですが、よく考えると、私が唯一使うお絵かきソフト、ペイントのブラシの種類の中にある、カリグラフィーペンでした。

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カリグラフィーペン | カテゴリ | 株式会社 立川ピン製作所

ここの手書き文字は手書きと思っていましたが、手書きは手書きでも、デジタルな手書きなのかなあと思いました。こんなペン日常使いしないでしょうから。お絵かきソフトがなんでこのペンを常備してるのか分かりませんが、作者のマックのお絵かきソフトでもデフォルトに近い位置づけで装備されてるなら、それで書くのは普通だろうなあと思います。なんでペイントは丸ペンGペンもかぶらペンもロットリングもないのに、カリグラフィーはあるんだろう。

この人のコマ割りは、ヤマ場がヤマ場っぽくないことがあり、この巻でいうと、まず頁82、けがをする場面がないので、なかなかどういうけがを負ったのか分かりづらいです。セリフで状態を説明してしまっている。次に、頁203で先に泣いてしまうが、本当の感動による心のゆさぶりは頁207に来る箇所。なんで二度泣き(´;ω;`)させるんだろうと思います。デジタル作画でなんぼでも手直し出来るので、コマの並べ替えをくり返していじってるうちに収拾がつかなくなってしまったのか。あるいは。

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ベルエポック前夜、百年の孤独と美世の夢。

帯。百年は、ももとしと読んで主人公ですので、誰かが最初から暖めていたダジャレだと思います。ガルシア=マルケスでなく、焼酎のほうで。そうなると「美世の夢」という銘柄のお酒も、私が知らないだけであるんだろうかと思い検索しましたが、『わたしの幸せな結婚』というラノベとその漫画版しか出ませんでした。主人公がやはり美世という名前だそうです。ニュクスの主人公はこの巻で、千里眼能力を失ったとカミングアウトしますが、ラノベのほうも能力がどうのこうのとあらすじに書いてありました。世の中いろいろ重なるものです。以上