『推し、燃ゆ』"My fave’s on fire" by Rin Usami 読了

英題は個人の方のブログから。ジャパタイの受賞ニュースでは"Cheer, Burn" と訳してありましたが、"Oshi" はやっぱり"fav"とか"stan"なのではないかと、スラング紹介サイトを見て思うです。

www.japantimes.co.jp

www.kawade.co.jp

左は中表紙。

『かか』よりだいぶリクエスト数が多かったので、まだまだ順番回ってこないだろうなと思ってましたが、なぜか割と早く私のターンになったです。発達障害がテーマの一つであることがじわじわと知れ渡ってきて、それに触れずに別件でDISって(日本語がヘタクソなど)☆ひとつつける動き、ネガキャンが始まってるのかしらという気もします。あるいは、寄贈本で配給量が倍増したとか。

読んだのは2020年12月30日の4刷。

カバーイラスト ダイスケリチャード 装丁 佐藤亜沙美(サトウサンカイ)

初出「文藝」2020年秋季号 

ふつうのこのサイズの本、縦19.5cmの本は横幅が13.5cmくらいあるのですが、この本は12.5cmと、1cm小さいです。その分持ち運びにべんり。電子版の場合まったく関係ありませんが。

最初、割と流してぱっぱっと読んでましたが、バイト先のあたりから、はっと気づき、居住まいを正して読みました。職場のオナクラクンにも勧めましたし、彼に、分からないところを聞きながら読みました。

バイト先は居酒屋兼定食屋で、人手不足だし、いったん雇った以上はそう簡単にやめさせるのは倫理的にいかんと、店主と女性店員が思っているらしく、接客や臨機応変な仕事が苦手な主人公を、がまんして使って、やばげな時は早め早めにフォローに入っています。それでも不満の出る客はいるもので、仔細に読むと、こぼしてぬらしたのでオシボリ頼んで、持ってくるのが遅かったので不快になった客も、焼き魚が冷めてから来たのでクレームをつけた客も、女性客です。ドジっ子JKバイトに辛辣な対応というか、男客は下心があるだろうから甘いけど、若いからって甘やかされると思ったらおおまつがいなんだから、と、彼女の本質を見抜けず(客がなんでバイトの本質をいちいち見抜いて忖度してやんなきゃいけないんだえ~と思ってるかもしれませんが)シビアに接客業の実務経験を積ませてあげてる感が、短い行数でビシ!バシ!伝わってきます。

←『かか』との差分は1cm。

でも彼女がコンビニやファストフードのような、同世代の多いところでバイトをしたならば、陰に陽にイジメを受けて(いいやつより悪いやつの方が強いので、良心派はイケズを防止出来ない)早晩辞めざるを得なくなるであろうことは論を待たないので、こういう、職場も客も年の離れたところを探して離れないようにするのが、唯一の勝ちパターンという気がします。時が、彼に彼女に仕事を覚えさせてくれると信じたい。

←差分は1cm。

ただ、いくらデジタルネイティヴったって、誤字脱字もない、平易ですぐれた文章をポンポン書けるかというと、相当疑問です。思い込みの強い、、ひとりよがりな文章を書いて読み返してから、あちゃーな人の方が多いのではないでしょうか。どんな人でも。特にコメ欄。本書頁106の「生まれ変われるくないか」的打ちまつがい多発な気瓦斯。ヒロインは、ブラウン管の向こう、否、液晶画面の向こうの推しの一挙手一投足を即入力せず、まず手書きでルーズリーフに書きつけてますが、これって女子らしくはあるけど、珍しんじゃないでしょうか? というか、几帳面なタイプの癖で、この子らしくないような…

休み時間にテレビでワイドショーを見るというのは、学園ライフとして、「ある」ことだそうで、ワンセグがどうのと言ってた時代から、もうどんどん遠いところに来てしもうただよ人類は、と思いました。また、全入時代の高校なので、自分でドロップアウトしない限りまず卒業出来るし、彼女のようなタイプは、石にかじりついても卒業するべし、と、オナクラクンは何も言いませんが、そうなんだろうなと思いました。

作者は意図的に主人公の落下墜落をある程度のポイントで止めてますので、風俗とかODとか暴力男子とかは出ません。でなければ、桐野夏生湊かなえにバトンは渡された、で、リレー小説にしたほうがよくなるかも。

これは別のひとに確認したのですが、インスタライブというのは、ユースト実況で歌を歌うとか、そういうことではないそうで、生映像を配信するだけという認識でよいみたいです。ヌルいなあ。よくそんなのに付き合う時間があるものだ。部活でえんえん基礎練させやがれと言ってみるてすと。今、簡潔にまとめた用語サイトがないか検索したら、広瀬ゆうちゅーぶ、否、広瀬錫のつべのそれが出てきたので、ライブではないのですが、ちょっと見ました。感想は書きません。

頁89、主人公が冷静に、自分の父親がおっさん構文の使い手だった、と喝破するのですが、読点の多用は、年配の人間に読んでもらうには絶対必要な作業と私は思ってますので(顔文字絵文字は確かにいらない)御意見無用です。

おじさん構文 - Wikipedia

おじさん文章ジェネレーター

頁45、バイト先の開店前の作業で、「包丁を研いでおく」というのがあるのですが、板前、調理人がそんなことバイトにさせるんでしょうか。ほかの炭酸補充や豚肉解凍は分かるのですが、包丁砥ぎだけは理解出来ない。

頁122

祖母が母を日本に引き留めたとき、母は何度も祖母に、あなたの自業自得でしょう、と言った。

ここの意味もぜんぜん理解してません。主人公の母親は、日本人じゃないってこと? どこかに関連の文章があった気が、まったくないです。そんな設定あったかなあ。

頁17

推しは「まあ」「一応」「とりあえず」という言葉は好きじゃないとファンクラブの会報で答えていた(略)

この、推しのキャラは、作者も好きなタイプではないかと思いました。「目が微妙に泳ぐ」「ポンコツキャラに少しずつ味をしめているらしい」(いずれも頁61)グループ内人気投票で最下位だったり、勝手にぽろっと解散をバラしたり。ジャニーズではぜったいなさそう。ジャニーズ以外の男性アイドルはまったく知りません。エグザイルも純烈もジャニーズではないですが、アイドルでもないだろうし。左手の薬指に指輪のアイドル、イカス。主人公が4歳の時に見たピーターパンの舞台の子役だったというのは、やや出木杉ですが、小説なので。どういった点が批判されていて、アンチの粘着レスが要所要所につけられているのも面白かったです。(写そうと思いましたがやめます)実際にアンチやってる人は、この本読んで逆ぎれするかもしれません。新しい地図をボロクソにけなしてた明星愛読者が、山Pのひとと手越以来一時期音信がなかったのを思い出しました。ネットフリックスでドラマ化のあかつきには、手越が上野真幸役を演じて、読者過半数の脳みそが爆発するかもしれません。

推しマイケルorz。以上