行きたい人のチベット入門 : 西蔵好きのための役立ちノート (山と渓谷社): 1995|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
なんとなくここんとこ毎日チベット関係の読書感想が並んだので、もう少し続けようと思い、図書館へ行って『ガンジス河でバタフライ』の作者のチベット関係の本を借りもって読んでこまそうと意気込んでましたが、その図書館に行くのに疲れて、別の図書館に立ち寄った際、この本がリサイクルで出ていたので、これも何かの縁と持ち帰ることにしました。
著者は伝説のバックパッカーで、カイラス山とマナサロワール湖へのチャレンジとして、国境を接するインドから密入国するという奇想天外な方法を成功させた人物ですので、そのあらましを書いた『チベットはお好き?』はトンデモ本として名高いと思うのですが、本書はフツーのチベットガイドで、時がたてば情報が古くなる面もある本ですので、地元の図書館よく今の今まで所蔵してたと、呆れつつ感心しました。
私はなぜか著者と新井一二三を混同してるのですが、いまだに理由が判明していません。ここに描かれているニーハオトイレは、ミッキー安川『ふうらい坊留学記』*1に出てくるアメリカ南部の大学男子寮のそれと同じです。ので、私は、中国のドアなしトイレは、蒋宋美齢が米国南部から持ち帰った文物との仮説を立てていますが、賛同者はいません。広東から中華料理のメニューに加わった《玉米汤》(コーンスープ)と《软炸鸡》(フライドチキン)は鉄道敷設の出稼ぎ中国人が黒人から教わって唐山に持ち帰ったものという仮説も立てていますが、ガンボスープが中国に入っていないので、どうも弱いです。
後藤ふたば/文 藤吉 純恵/絵
●ブックデザイン/斎藤茂男●カバーイラスト/渡辺隆司●シンボルマーク/中村みつを●写真協力/亀山敏彦・栗原直子・西原彰一
編集協力/(株)ウイング・井上アカネ 巻頭に「はじめの一歩」巻末にチベット語例文、ネパール語と漢語の会話例、チベット略年表、参考文献一覧、あとがき。謝辞はダライ・ラマ法王日本代表部事務所各位と、イラスト担当者へ。
先日読んだ松戸の和尚さんの本でも、チベットでは女性旅行者が強いというか、女性のほうがなぜか真剣にチベットに向き合おうとする人が多いとあるとおりが、本書の著者な気がします。本書のオススメ本の中には、『チベット高原自転車ひとり旅』九里徳泰著(山と渓谷社)1989年なんていう本もあり、ラサからカイラス、そしてカシュガルまで自転車走破するのみならず、カシュガルからギルギット、ラサからカトマンドゥまでも自転車旅行してしまった人の本ですが(私は未読)こういうのはインフレがこわくて、『ホームレス女子大生川を下る inミシシッピ川』という本では、著者は高校時代、周囲の注目を集めようとして、チャレンジがどんどん過激になって、いつかそのあげく死ぬぞ、と山岳部顧問かなんかの教師から脅されています。あながちない話でもなかろうと。
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それはそれとして、松戸のお坊さんの本によると、下記のツァンパ袋は既製品でなく、各自で手縫いせんければならず、お坊さんはチベットの人からもらって、お坊さんの旅のバディの金髪ドレッドドイツ人女性は、路上の物売りの私物に目をつけて、強引に金を投げつけて奪うように買ったんだそうです。このイラスト見て、そこまで思い出した。
今は関西の大学で教鞭をとっているはずの人が、川蔵公路からラサ入りして帰ってきた時(彼は台湾仕込みの國語がネイティブ並み)やはりどこぞでもらったツァンパ袋からツァンパを出しては器でこねこねして食べるニワカチベタンになっていたのも思い出しました。しかし彼は色達では一軒しかない四川料理屋で毎日米飯といちばん安い素菜汤で食事をとっていたので、店の人にいやがられて、メイヨウとかあれやこれや追い払われるための手立てを講じられたそうですが、なにしろ口が立つので勝ったそうです。そんな國語ペラペラなのに巡礼スタイルのチベタン不気味だったろうな、店の人も。
メンバやロッパの説明はなかった気がしますが、家屋のイラストは載ってるという… 別に角幡唯介から資料をもらったわけでもないだろうと(タイムトラベラーでもない限り㍉)頁90には、ケサル王に関しての記述もあります、ミラレパの次に書いてある。筑摩書房の本を紹介。
筑摩書房 世界の英雄伝説 9 ケサル大王物語 ─幻のチベット英雄伝 /
頁73のチベット鍋、ギャコックは私も食べたことありません。インドやネパールではふつうにチベットレストランで供されるのに、自治区ではまず見かけないというのは、当時は本当にそうだったなあと思い、今はどうだろうと思います。西寧あたりでも火鍋に対抗して出せるようになってればすごいですが、まあそれはないか。防衛省の近くの店に、人数を集めて食べに行ってみたいです。
本書のチベット文化圏はとうぜんのごとくラダックやダラムサラも含まれていて、チベット文化圏とはいえないけれど、山旅の本ですので、カトマンドゥーも書いてます。頁89のタール寺(クムブムモナストリー)の写真はものがなしく、頁175「ツァンパかけ祭り」でまっしろになった僧侶がキチェ川でくつろぐ写真は、その祭りを知らないニワカですので、へーと思いました。
左の、旅の必需品は、21世紀ではもう現地で手に入るんじゃないと思われるものも多いかと。天安門事件の翌冬の北京で、乾燥してるのでリップクリームを買おうとした人が、友誼商店以外どこにも売ってなかったのを思い出します。高山病予防の給水のための水筒とかピュアとか、朝メチャクチャな時間に出発するバスやトラックに置いてかれないよう目覚ましが必須とか、いちいち理由は書いてないけど絵が描いてあるものが素晴らしいと思いました。
本書は私が持っててもしかたがないので、松戸のお坊さんの本といっしょに、人にあげます。もらってくれればいいなと。以上