『失踪願望。コロナふらふら格闘編』"Desire to disappear. Corona unsteady fighting edition" by Shiina Makoto 椎名誠 読了

ほかの人のブログで見て、シーナセンセイ、そんな人じゃなかったのに、飲酒やら眠剤やら、だいじょうぶなん? と懸念されてたので読みました。集英社学芸編集部ウェブサイト(現「ウェブマガジン集英社学芸部の森」)2021年7月7日~2022年10月12日更新分(内容は2021年四月から2022年6月まで)を加筆修正し、書き下ろし『三人の兄たち』『新型コロナ感染記』を加えたもの。日記部分の下段にはその時や過去の出来事が記されており、朝日読売毎日時事ヤフーNHKなどの記事を参考に作成とのこと。あとがきで、編集武田和子、ライター竹田聡一郎(ビーサンサッカー)事務所スタッフ渡利亜紀子三方への謝辞。

作中につげ義春への思慕が書かれていますが、タイトルはあじましでお的。アウトドアマッチョマンが炉利まんが家の方に寄せるわけにはいかなかったのか。コロナで、職員看護師大量退職やらなんやら激震が走った女子医大に入院してるんですが、大量退職の話に関連した空気や感想は出ません。深夜、外の交差点から「通りゃんせ」が脳に突き刺さるほど聞こえて寝れなかったが、後で幻聴と分かる、という描写だけあります。

《存亡の危機》名門・東京女子医大の「深すぎる闇」 理事長の疑惑のカネ、医師や看護師の大量退職、崩壊状態のICU、医療ミスによる患者死亡事故… | 文春オンライン

シーナサンは、あれは赤玉という奴かな、毎晩一錠ずつ処方してもらって、効かないから増量してくれと要望して却下されてます。よくある話なのか。

女子医大というと、ヴィクトリアの裏手、場外馬券売り場の横、新宿高校の手前にあったちっちゃなドヤ街で日雇いに寄生して生きてた、輪島と云う男(仮称)に、夕刻、西口バスターミナルから女子医大行きのバスででっくわしたことがあり、この男は日雇いにタカるわピンはねするわ両刀使いの性加害だわで、そんな男が女子医大に何の用と思ったのですが、置き引きでも物色しに行ったのか、あるいは入院患者に何かタカりに行ったのか、それは分かりません。女子医大というと思い出す思い出。

その輪島(仮称)という男はほんとにタカりがヒドいので、寅さんに憧れてというふれこみでドヤ街にプチ蒸発してきた定年退職のサラリーマン役員にさっそく目をつけてヒルのようにたかって金目のものからカラダまで奪ったのか、寅さんに憧れてた人は一週間でドヤにも泊れなくなってアオカンとなり、昼間から地面に寝そべったまま着衣状態で糞尿を垂れ流す人になってしまい、家族が地方からレスキューにやってきて連れ帰ったそうです。私の寅さん嫌いには、どうもそういう、甘いロマンを感じすぎる人を見て、警戒心が植えつけられたせいもあると思う。ドラマとして見る分にはいいんですが、それ以上は壁を作りたく。

シーナサンの飲酒や眠剤についてはほかの方のブログで懸念されるとおりで、別の人に訊くと、目黒考二サン逝去で気落ちしたとのことでしたが、それは本書刊行以後の話(2023年1月)なので、本書の時点ではまた別だよなあと思います。西村賢太死亡について本書で残念がってますが、一方で、無頼型破滅型の行きつくところといして、仕方ないかと見ているふうでもあり、そこは私も同意します。土田世紀と同じだと思う。

下段の時々刻々は、コロナ関係を、誰得なんだとシーナサン大幅に削ったそうで、しかし私としては、緊急事態宣言、まん延防止措置略してまんぼう(なつかしい)などがそれぞれいつからいつまでか(地方によって違うので、東京基準でもいいです)全部書いてくれたら、みんなそれを読んで孫引きするから便利なのに、と思いました。韓流ドラマ「愛の不時着」の主演男優と主演女優が結婚したとか、そんなニュースより必要だった気瓦斯。

表紙一部。ぱっと見は、ちょいワルじいじい的写真。そんな本です。お孫サンのこととか、カヌーの野田サンのこととか、後報します。ちょいワルじじいもほどほどに(適量飲酒等)以上

【後報】

頁109、カフェラテとカフェオレの違いは、イタリア語とフランス語のちがいのような気がします。

池林房がまだこんなに出て来るとは思いませんでした。コロナカの時短なんだか休業要請なんだかの時は、ロケなどにもよく使われたとか。しかもそのドラマがなぜかメ~テレの「おいハンサム!」だったりするという。

頁63、ブライアン・オールディスは、読んだことないので、とりあえず代表作の『地球の長い午後』を読んでみます。

頁134、『黒と誠』は、ブッコフなら半額近くで買えそうなのですが、まんいち帯がないとイヤなので、新刊で買うことにしました。双葉社だし。

下段の年表時事、下記のようなのはいいと思いました。

頁166 6月21日

自国開発ロケット「ヌリ」の打ち上げに成功し、世界七番目のロケット発射能力保有国になった。

その翌日。

頁167

コラムニストの小田嶋隆さん逝去享年68。

『三人の兄たち』は、実兄が三人いると思ったら、ちがった。また、山森さんが企画を盗む話かと思ったら、それも以下略

頁194
 千葉の亀山湖にむかった。湖畔にある水産センターの建物に住んでおり、そこをタダで借りているのだ、と言っていた。一人で暮らしているものとばかり思っていたら30代の女性と一緒だった。
 野田さんはぼくより六歳上だった。そこに住んでから数年して住処すみかはいろいろ変わったが、たいてい綺麗な若い女性がいて秘書と紹介された。それにしては顔ぶれがよく変わるなあ、と思ったがさすらいの川の流れ者なんだから当然だろう、とも思った。

野田サンのケンカの場面もあります。山森さんのハッタリとの対比の意味もあるのかも。

ワープロは、富士通のオアシス販売終了時に四台買ったのがまだ在庫あるとか。うらやましい。付属品とかどうしてるんでしょう。

上の文章の女子医大のところで寅さんについて唐突に書きましたが、寅さんについては、シーナサンも頁111などでいろいろ書かれており、ちょうど『ワイルド・ソウル』を読んだ時に、ブラジル日系人の話で思い出したので、なんとなく書いてます。

シーナサンのコロナ感染記は、「コロナうつ」に関して、割と「分かる」記述が多かったと思います。そういう意味で当事者の記録だった。ほかのコロナ感染記はあまり読んでません。高野秀行サンの自宅隔離の記録が、タイムリーにウェブに載ったこともあり、おもしろかったです。

そして、自分は無自覚のまま現在まで来てます。無症状かというと、発熱は一回あって、しかしすぐ下がったので検査対象とならず、そのままなんしか乗り切って、陽性者認定されてません。なんというかなー。

「コロナの手引き」というパンフレットに、「睡眠薬を常用している者は、せん妄症状が強く出ることがある」と書いてあるとか。頁239。「通りゃんせ」の謎解き。

しかし、「わしらは怪しい探検隊」とか、ビールをまわせ、そこらで飲もう、あんたがいちばん、私は、二番、さドンドン、のイメージのままだった私のような人からすると、シーナサンが薬物と無縁なままのイメージで老いなかったのはなんでやろ、との思いも出ます。なんで処方箋薬に頼るような人にならはったんやろ。「赤い錠剤」は頁254登場。

『インドでわしも考えた』は、インドに行くバックパッカーからものすごくバカにされてたらしいですが、そんなこと気にする人でもないでしょうし、私もインドには行ったことないので何も言えません。

以上

(2023/9/11)