『インド植民地官僚―大英帝国の超エリートたち』 (講談社選書メチエ)読了

インド植民地官僚―大英帝国の超エリートたち (講談社選書メチエ)

インド植民地官僚―大英帝国の超エリートたち (講談社選書メチエ)

積ん読シリーズ。
題名は超エリートですが、階級的には中産階級出身者が大半を占め、
また年金額が半世紀も据え置かれたため世のインフレ物価上昇とアンマッチなど、
あちこちに面白い記述がかなりありました。
「モンタギュー=チェルムスフォード改革」始め、
日本の世界史教科書の範疇では出ない単語がたくさんあり、それも面白かったので、
後報でいくつか拾い上げたいと思います。

【後報】
<この本に出てくる楽しい単語>
・ブリティッシュ・ラージ
 …インド亜大陸におけるイギリスによる支配、を意味する(頁6)
・イギリス国王の王冠に嵌め込まれた宝石
 …インド植民地(頁6)
・英領インド帝国
 …一八七七年ヴィクトリア女王がインド皇帝を兼ねることが宣言され、
  正式に名乗られるようになった。一八八六年隣接するビルマ全土もインド帝国に併合。
  (頁6)
・インド副王兼総督/Viceroy and Governor General of India(頁10)
・インド高等文官/Indian Civil Servant(頁10)
・オックスブリッジ…オックスフォード、ケンブリッジ両大学をまとめて呼ぶ表現(頁11)
・教育を受けた中産階級/educated middle class(頁11)
           …高級官僚、聖職者、法律家、医師、教育者、技師、軍士官など。
            その他の中産階級は警察官、監獄所長、航海士、農業、商業、工業。
            その上の階級は地主階級。
            その下の階級は労働者階級。(頁29)
・全インド諸サーヴィス…インド高等文官制度ほか、インド医務官制度、インド公共事業局、
            インド教務官制度、インド林務官制度、インド警察官制度などから
            なる、英領インド支配機構中の全国的管理組織の総称(頁22)
ケルト的辺境…イギリス国内において、
        スコットランドアイルランドウェールズを指す表現(頁22)
       ⇔オックスブリッジの反意語?
        古典教養偏重のオックスブリッジに対し、
        これらの大学では自然科学をよく学ぶ。
・天上に生まれた者たち/heaven-borns(頁26)
           元インド高等文官が、自分たちはかつてこう呼ばれ、
           自分たちもそうあらんと務めた、と語る。
・物故者名士録/Who was Who(頁28)
・非公式の帝国…イギリス帝国の支配範囲内にはないが、それからの強い政治的・経済的・
        文化的影響を受けていた地域(頁31)
・ボックス・ワラ/box-wallah
…英領インド帝国において商業活動に従事したイギリス人(頁35)
 ⇔インド高等文官たちは彼らに対し侮蔑感を示した。
・社会的アスピレーション…野心(頁41)
・ローズ奨学金南アフリカで活躍した実業家・政治家であるセシル・ローズが、
        イギリス帝国の統合とさらなる発展のために、「世界のエリート」
        に共通の教育的基盤を与えることを意図し、イギリス帝国、
        アメリカ合衆国ドイツ帝国の出身者に奨学金を与え、オックスフォード
        で学ばせることを目的として設立した制度。前アメリカ大統領
        ビル・クリントンもその「恩恵」に浴した(頁47)
・ステイタス・クオ…現状(頁48)
・イギリス帝国の伝統的な教育制度の根幹部分
 …静態的な社会を前提にして、古典的教養を身につけた「エリート」を養成する(頁49)
・大反乱…セポイの乱(頁58)
・ストレッチ…無理やりに引き伸ばす(頁101)
・ジャリアンワラ・バーグでの虐殺
 …一九一九年四月一三日に、ダイヤー将軍の率いる軍部隊が、パンジャブ州アムリッツァー
  市の公園、ジャリアンワラ・バーグで開かれていたインド人たちの集会に対して発砲を
  行い、三七九人を殺害し、一二〇〇人近くに傷を負わせた(頁101)
・キラーファット運動…イスラム教カリフとしてのオスマン皇帝の地位を擁護しようとして
           展開された、インドのムスリム大衆の運動(頁101)
・諸サーヴィスの「インド化」の推進
 …サーヴィスを構成するメンバーの中で、インド人の割合を高める(頁103)
・インド的統治手法…藩王国地域を除いて、基本的に、イギリス人植民地官僚が異人種で
          ある被支配民衆と直接対峙して統治を行なう、という形態。
          ⇔植民地化される以前からすでに存在していた土着権力者を利用する
           形での、いわゆる「間接支配」が反対語(頁169)