獣たちの墓―マット・スカダー・シリーズ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
- 作者: ローレンスブロック,Lawrence Block,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 二見書房
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- 作者: ローレンスブロック,Lawrence Block,田口俊樹
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A Walk Among the Tombstones (Matthew Scudder Mysteries Book 10) (English Edition)
- 作者: Lawrence Block
- 出版社/メーカー: Telemachus Press, LLC
- 発売日: 2013/11/19
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頁13
彼女が誘拐されたとき私はどこにいたか、それは正確に覚えている。AA(アルコール自主治療協会)のグループのひとつ、ファイアサイドが平日十二時半から一時半まで、西六十三丁目のYMCAで開いている昼の集会に出ていた。開始時刻より少し早く着いたから、ふたりの男がフランシーンをワゴン車に押し込んだ頃、私は椅子に坐ってコーヒーを飲んでいた。それにまずまちがいない。
集会の内容についてはまるで覚えていない。ここ何年か、私は自分でも驚くほど規則正しくAAの集会に出ている。さすがに禁酒し始めたばかりの頃の勤勉さはなくなったが、それでも平均して週に五回は足を運んでいる。その日の集会は、ひとりの話し手が十五分から二十分ばかり身の上話をしたあと、フリー・ディスカッションに移るという、ファイアサイド・グループのいつもの集会だった。ディスカッションで私は何も発言しなかったと思う。何か発言していたら、たぶんそのことを覚えているだろう。興味をそそられるような、あるいは笑いを誘うような発言もあったことだろう。AAの集会はいつもそうだから。しかし、私の記憶に特別なものは何も残っていない。
今回はキッドナップ凌辱犯罪です。フラッシュバックとかアレなので、
読まないほうがいいと思う人は読まないほうがいいです。
登場人物は新移民、レバノン人とロシア人です。
レバノン人といっても、ムスリムでなく、マロン派キリスト教徒です。
ただ上で誘拐されているのはその奥さんのパレスチナ人。
一時期オーストラリアでレバノン移民が非常にモメてたと報道されてたの思い出します。
クロナラ暴動
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%83%A9%E6%9A%B4%E5%8B%95
私もむかしレバノン人を知っていて、
女を殴る悪い女衒の人とごく普通のウェブ関係の仕事の人で、
後者の彼女はウゾーみたいな地中海の蒸留酒を飲んでましたが、
その時は回教徒かキリスト教徒かなんて考えもしませんでした。
文明の衝突で欧米化した人なんだな、くらいにしか思っていなかった。
- 作者: エドワード・W.サイード,Edward W. Said,今沢紀子
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- 作者: エドワード・W.サイード,Edward W. Said,今沢紀子
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- 作者: 高野秀行,森清
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頁67
「集会のことだけど、あんたが思ってるとおりだよ。事件以来ずっと飲みたくてならない。事件と言ったのは、犯人がフランシーンにあんなことをしたことじゃなくて、彼女が誘拐されて以来ということだ。酒に手を出すところまで行ってないが、酒のことを頭から閉め出すのがだんだん困難になってきてる。追い出すとまたすぐ戻ってきちまうのさ」
「助言者スポンサーには連絡したかい?」
「おれにはちゃんとした助言者がいないんだよ。禁酒を始めたとき、AAが仮の助言者を紹介してくれて、その頃にはよく電話をしたもんだけど、そのうち疎遠になっちゃってね。そもそもなかなか捕まりにくい人だった。だからほんとは誰か探せばいいんだけど、どういうわけかそれができないでいるんだ」
「でも、そのうち――」
「ああ。あんたには助言者がいるのかい?」
私はうなずいて言った。「ゆうべも会った。土曜日にはだいたい一緒に夕食を食べて、その週の出来事を話し合ったりしてる」
「その人はあんたに忠告なんかするのかい?」
「たまにね。でも、その忠告にはあまり従わないことのほうが多いな」
従う従わないは、時期によっても変化してくるはずです。
頁133
集会の形式はニューヨークでは珍しい部類にはいるものだった。その夜の話し手のスピーチが終わると、全員が七人から十人の小さなグループに分かれ、グループごとに全部で五つのテーブルについた。それぞれのテーブルは初心者向けのもの、フリー・ディスカッションのためのもの、禁酒の十二段階について話し合うためのもの――あとは忘れた――といった具合に分けられていた。ピーターと私は、みんなが現在の暮らしぶりと禁酒の状況を自由に話し合う、フリー・ディスカッションのテーブルについた。私は、テーマがきめられたディスカッションや、禁酒プログラムの哲学的基盤に関する討論より、こうしたフリー・ディスカッションから多くを学んでいるような気がする。
ピーターはレバノン人二世で、被害者の夫の兄で、アル中ヤク中です。
メッセンジャーというか、デリバリーの岡持というか、そんなパートタイム労働者です。
頁152
「たとえ彼から助言者スポンサーになってくれと頼まれても、それでもって即、あんたが彼に責任を負わなきゃならないってものでもないからね。何が人を優れた助言者にするか、わかるかい?自分自身素面でいることさ」
「どこかで聞いたような気がする」
「私が言ったんだろう、たぶん。でも、誰も他人を素面にすることはできない。私はあんたの助言者だけど、私があんたを素面にさせてるのかい?」
「いや、あんたがいるのにイン・スパイト・オヴ・ユー私は素面だ」
「私がいるのにイン・スパイト・オヴ・ミー?それとも私に意趣返しをするためにトウ・スパイト・ミー?」
「たぶんその両方だ」
今回は黒人少年の、ラップのような言い回しや、ポケットベル、
電話会社にSEのふりして電話をかけてパスワードを聞き出して好き勝手やるハッカー
(まさに時代の寵児!)なども登場し、AT&Tのことを考えたりしましたが、
割愛します。
頁246
そこでは段階集会をやっていて、その日は禁酒のための第十一段階がディスカッションのテーマになっていた。祈りと瞑想を通じて神の意志を知るというやつ。うんざりするほど精神主義的なディスカッションだった。
犯罪とは無関係に、ピーターはつじつまがあわなくなります。
どんどん。
吸うだけじゃなかったのか。打っていたとして、HIVは。
誘拐捜査のために預かっていたカネは、いまどうしてるのか。連絡がとれなくなる。
頁289
その翌週の火曜日、八時半の集会に出ると、うしろのほうからなじみのある声がした。「ピーターと言います。私はアル中でヤク中です。禁酒二日目です」
「やあ、ピーター」とみんなが声をそろえて応えた。
私は休憩時間になったらすぐ彼を捕まえようと思った。が、隣に坐っていた女に話しかけられ、彼の姿を探したときにはもう彼はいなかった。ホテルに戻って彼の家に電話してみた。が、誰も出なかった。
頁298
毎晩開かれている深夜の集会がふたつあった。西四十六丁目で開かれている近いほうの集会に行くことにした。会場に着くとちょうど始まったところだった。コーヒーを自分でいれて椅子に坐ったところで、聞き覚えのある声が聞こえてきた。「ピーターと言います。私はアル中でヤク中です」なんともはや、と私は心の中でつぶやいた。「今日一日禁酒をしました」
よくない。火曜日には二日で、今日は一日。私は、救命ボートに戻り、それにつかまっていることのむずかしさを思った。しかし、ピーター・クーリーのことを考えるのはそこまでにした。私は彼のために集会に来たのではない。自分のために来たのだ。
須賀田さんは正しいです。ライフセーバーではない。
ここまで書いて中座したのですが、そこで気付きがありました。
ああ、これは自助グループのいう、「段階3」のないストーリーなんだと。
頁318
「それはAAの綱領みたいなもんだね、ええ?どれだけ禁酒が続いているか、その期間を打ち明けると、それが一日であれ二十年であれ、返ってくる答はいつも同じだ。“すばらしい”“今日一日素面でいたこと、それが大切なんだ”ってね。何が大切かなんて、そんなことわかってたまるか」
私は、アルコール依存は、緩慢な自殺衝動ではないかとときどき疑うことがあります。
なんの発達がどう障害か分かりませんが、ロマンティックな死に憧れて酔生夢死にハマる。
ただ、現実として全く楽に死ねず、永い永い期間酒の狂気に支配され、
なおかつ働かないわけですから迷惑ばかりかけて生き続けて、
どんどん苦しくなって厄介さが横溢していく。閉塞してゆく。こわい話です。
だけど、だから、段階3なのかと思いますが、この小説でそれは語られなかったです。
【後報】
なんとなく追加します。
(2014/4/15)