『意地に候〈新装版〉―酔いどれ小籐次留書』 (幻冬舎文庫)読了

シリーズ第二作。図書館にあるのが新装版だったので、新装版。

第一作の読書感想:http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140715/1405430563
Wikipediaより作品リスト:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%94%E3%81%84%E3%81%A9%E3%82%8C%E5%B0%8F%E7%B1%90%E6%AC%A1%E7%95%99%E6%9B%B8#.E4.BD.9C.E5.93.81.E3.83.AA.E3.82.B9.E3.83.88
BS時代劇http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/yoidore/

第一作は、収入の絶えた独居老人(主人公)が、最後、
これからどうやって生きていくのかが印象に残りました。
住居(長屋)と食糧供給は、彼に命を助けられた大商人がアテンドするのですが、
いつまでもそれに頼るわけにはいかないらしいので。
(私は頼ってもいいじゃいかと思いましたが、
 たぶんそうするとパトロンいつか豹変するのでしょう)
また、単身世帯ですから、三食三食考えねばならないわけです。
夏場から秋口までが本作の舞台で、江戸時代ですから冷蔵庫はない。
この辺が、ツボの人はツボかも、と思いました。
米を炊くにも燃料や手間の問題があるので、一日か二日に一回であとは常温保存。
焼き魚も常温保存。二日目、においが気になるが焼き直して食う。
握り飯をもらったり、隣のかみさんに菜をおすそわけしてもらったり、
出先の店で食事を御馳走になったり、
小金が入ってめんどくさいと居酒屋でもっきり飯を食べたり。
意思の力で飲酒をコントロール出来てる点は、前作と変わりません。
端役で、酒毒で破滅する人間も登場しますが、端役。

井戸も水が湧き出る井戸でなく、埋立地江戸の、雨水を貯める井戸。
夏なので疫病とか大丈夫かよ、と思いましたが、
途中から井戸の悪い水の描写はなくなりました。
当初は水で体をぬぐう、拭くだけで、小金が入るようになって、
湯屋へ行くようになる。服は垢じみたまま。
菅笠は、傘貼り内職のほかの浪人に技術交換で貼りなおしてもらう。
冷や飯草履なんて単語、知りませんでした。

コトバンク 冷や飯草履
http://kotobank.jp/word/%E5%86%B7%E3%82%84%E9%A3%AF%E8%8D%89%E5%B1%A5

武士の商法乍ら、こつこつ毎日歩いて稼いで、小銭が入るようになるのですが、
家賃や食費を自己負担するところまでは本巻では描いてないですね。
それどころではなく、渡世人用心棒藩士剣術指南みたいな連中と、
ひっきりなしに多対一の戦いをするようになるから。
前近代なので、悪は殺せる、斬れるんですね。それが善。
その辺もウケたんじゃないかと思います。明快だから。
晴らせぬ恨み晴らしてほしいよ、と、そんな感じ。

タイマンじゃないんですね。常に多対一。
独居老人単身世帯ひとり仕事だからそうなってしまう。
作者は非常に多作な人なのですが、ほかの小説でもそうなんですかね。

臨済宗建長寺派の定期刊行物『巨福』平成26年雨安居第99号に、
作者がエッセーを書いていて、内容は、作者57歳の時事実上の馘首宣告をして、
もう時代小説か官能小説を書くしかない、と言った編集者が、
昨年ガンで身まかった話。(それが結局当たったので、恩人)
それと、この話⇒http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E4%BC%AF%E6%B3%B0%E8%8B%B1#.E3.81.9D.E3.81.AE.E4.BB.96_2
数年前まで家賃を払うのにさえ苦労していた私が歴史的な別荘を譲り受け、惜櫟荘番人に就いた。時代小説文庫書下ろしが思いがけなくも順調に動いていたからできたことだ。

巨福 
Webにはまだ昨年の号までしか掲載されてないです
http://www.kenchoji.com/?page_id=138

たまたまさっき巨福を見つけたのですが、縁だなと思いました。以上