『片翼だけの天使』読了

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/314PQM28M2L.jpgはまぞうでアマゾンが出ないのでこういうかたちで記します。
読んだのは単行本。1986/7/20の第20刷。初版から二年でこれだけ増刷するとは。

装幀者 山野辺進

もともと道新スポーツ/中日スポーツ/西日本スポーツ/四国新聞に昭和58年四月から翌年憲法記念日まで連載されていた作品とか。スポーツ新聞なら抜き系の風俗を舞台にした小説でも連載出来たのか。当時は。と思いました。

なぜか地元の図書館にはこのシリーズがコンプで所蔵されています。そんなに好きか。
https://www.amazon.co.jp/%E7%89%87%E7%BF%BC%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AE%E5%A4%A9%E4%BD%BF-%E7%94%9F%E5%B3%B6-%E6%B2%BB%E9%83%8E/dp/4087724948
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000001743348-00
https://booklive.jp/product/index/title_id/255853
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%87%E7%BF%BC%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AE%E5%A4%A9%E4%BD%BF
私の感想の大半は下記の映画の方のレビューとおなじです。というか、ここまで言語化していなかったことを、言ってくれた気持ちになっています。映画は、秋野暢子が韓国人女性を演じてるなら見てみたいとは思います。

https://movies.yahoo.co.jp/movie/%E7%89%87%E7%BF%BC%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AE%E5%A4%A9%E4%BD%BF/149780/review/%E5%85%83%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%97%E5%AC%A2%E3%81%AE%E6%84%8F%E8%A6%8B%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8C%E2%80%A6/2/

何も知らない頃はこの映画のヒロインは隻腕だと思ってたりしました。だから片翼なのかと勝手に思い込んでた。で、読むまで、ヒロインが小泉喜美子から生島治郎を略奪婚したのだと思い込んでました。南果歩渡辺謙で先妻の娘が杏、みたいな。そうでなく、越路と赤城(源氏名)は、喜美子と離婚後暫く経ってから知り合って結婚、そして離婚なんですね。
http://dic.nicovideo.jp/a/%E8%B5%A4%E5%9F%8E%28%E8%89%A6%E3%81%93%E3%82%8C%29
艦これの赤城が大食いなのは、本作とか秋野暢子へのオマージュかもしれない。嘘です。

頁5を見ると、離婚後十年が経ち、サラリーマンでいえば一流企業の部長程度、中小企業でいえば社長程度の収入があるということになっています。で、四十五歳で、もう女にガッツく年でもなく、性欲も減退気味とのこと。むかしの人は年を取るのが早かったのだなと。

頁7、「待つ」と書かず「俟つ」と書く。

頁25
 さもありなんと越路は思った。離婚して以来、マンションには彼の母親が週に三回ずつやってきて、身のまわりの世話をしてきた。
(中略)
 もはや七十歳になる母親を自分の気ままにこき使うことに、はじめはやや抵抗を感じたが、その仕事が母親に一種の生きる張り合いを与えているらしいことを察すると、越路はその気兼ねも捨てた。
 今では、友人たちに、おふくろが恍惚老人にならないよう親孝行してるんだと豪語している。

ひっかかるにはそれだけのわけがある、というか、適性がある、ということなのかと思いました。

赤城がなぜ日本の管理売春で働けるのか、という点は、まず彼女の配偶者が日本人で、婚姻ヴィザがあり、韓国でなにをしてたか知らないが、抵抗がなく、浪費家で買い物欲求を自分で贖うため自分から働き出した、という説明で一応納得しました。ハズは越路とほとんど同年齢で、越路より体格体力ともにありそうで、しかしもう赤城が止められない女なので、サジを投げて、勝手に働きくされ、送迎はするがな、という立場になってると分かりました。で、日本の管理売春で外国人が雇用されにくい理由のひとつ、時間にルーズで延長等のきめ細かい金銭徴収が出来ない、チップもいい加減で、最初にグンとサンビスして後でガッポリ取ろうという等々の個別交渉、トッパライ*1をすぐ始めるので、店が敬遠する、と言う展開がまんま小説の展開となって眼前に描かれます。こういうことになるから、前世紀の黄金町とか伊勢湾の島みたいな形式をとらざるをえなかったのかと。赤城は、日本でこの手の仕事について一週間後に越路と知り合って、あとはもうヒドい押しの一手です。で、店のオーナーはキョッポ。この辺、実際に読んでみるまでまるで分からず、韓国人がプーソーで働くとかあるのかとずっと????でした。本国で、例えば女性市長に閉鎖されたミアリコゲみたいなとこにいたんだろか、とかはこの本では語られません。続刊に書いてあるんだろうか。

頁77、越路は仕事を始めると、コーヒーをのむくらいで、ほとんど食事もとらず風呂も入らずへとへとになるまで続けるとか。あーそういう気質の人なのかと。

頁114
 越路は食後のコーヒーを楽しみ、完介の方は水割りのグラスを傾ける。テーブルの上にはまだ封を切っていないカードが二組置いてある。こういう時が、この野郎どもにとってなにものにも代えがたい無上の瞬間であるらしい。仕事も終わり、夕食もたらふく腹に入れて、気分はゆったりとしている。それでいて、これから始まる勝負への期待と緊張感が背筋をゾクゾクさせる。男ならでは理解しがたい楽しみである。
 こういうときには、越路も含めてその仲間たちは女など要らないという心境になるらしい。女と遊んでも、エクスタシーは一回しか訪れないが、ギャンブルだったら何回でもエクスタシーを味わえるなどと、世の女性が聞いたら柳眉を逆立てそうな物騒な台詞を吐く不心得者もいるくらいである。

そうなんですか、としか。

頁160、アンディザイアブル・ゲスト(歓迎されざる客)という言葉が出ます。出禁という言葉はまだないかったのかと。

UG とは?| U | ホテル観光用語事典 | ホテリエガイド
https://www.jhs.ac.jp/guide/glossary/152.php

頁212、赤城は既に帰化しているとありますが、これはないだろうと。滞日日数からしてもないだろうと。婚姻ヴィザじゃないのかと。

頁216、林檎を食べる場面で、赤城の歯が若くてしっかりしてて、越路の歯がガタガタな描写があり、中国嫁日記でも、井上と書いて倦舌音がアレなごく庶民的な発音の北京語でジンサンと呼ばれるオッサンが、日本ではゲツと書いて北京語読みでユエと読ませちゃいけない中国むすめに虫歯菌を移す描写があったなと思い出しました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E5%B3%B6%E6%B2%BB%E9%83%8E#%E7%89%87%E7%BF%BC%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA
あとこれだけのシリーズを読む意味があるのか、考えています。小泉喜美子との関わりだけで読んだ本ですので、それほど関わらないのなら、読む意味あるかな。以上

*1:最近映画で知った言葉です。いい映画でした