『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか? 僕が渋谷でワインバーを続けられた理由』読了

バーのマスターはなぜネクタイをしているのか? 僕が渋谷でワインバーを続けられた理由

バーのマスターはなぜネクタイをしているのか? 僕が渋谷でワインバーを続けられた理由

これもアマゾンの関連オススメで出てきて、借りた本。非常に面白かったです。
図書館本なのに三刷でした。リクエスト購入でしょうね。
こういう狙ったタイトルにする必要はなかったと思いますが、
(原石のブログも好評で、ネット有名人な人であるのなら)
その辺がやはり、成功したなの人で、本書でも繰り返しコストや原価計算
採算ラインを力説しておられるので、こういうタイトルでないと、
満足出来る部数は出ない、と堅実に判断されたのかもと思います。
出禁の申し出方、暴力を振るう客、まるで店とあわない客、
依存というか、人間関係に引きずり込もうとしてくる女性客、
渋谷と下北の違い、など、ふつう抑えて書かないかもな部分を、
どんどん計算づくで書きこんでゆくので、
だからこういう、内容とあまりマッチしないタイトルも、
ある意味ケンカだな、と思います。
たぶん、本文中でも何度も出てくる、
全てを伝えきれない雑誌の紹介記事から来てしまう毛色の違う客、
看板の情報に工夫がなかった時代迷い込んで来てしまう違う客、
客層の違う店から紹介された来た、違うから違う残念な、まことに残念な客。
そうしたもろもろの人のほうが、より手にとってしまうタイトルだと思うので…
もちろんネクタイも、三百円くらいで五時間ねばろうとする客に、
やんわりと、おかどちがいどっせ、はいらんとくれやす、
と告げるツールのひとつということで、説明はされております。
頁59のネット対応、双方向性でない紙メディアについての考察、
頁84などの、でもバーのお客さまって基本的に酔っているんでこういう言葉が結構うけるんです的なセリフ。
というか、所謂ギョーカイの客も多いせいか、
お店側視点から眺めた、お客とお客の、
落し方口説き方的な部分が異様にギラギラして目立つので、
タイトルもそれで走ったほうがよかったのじゃいか、と思います。
頁204、お酒に飲まれてダメになる、消えてゆくバーマンの話、
この世界から退場していったと書いてありますが、
ほかのすべての世界からも退場していったのか、そこは踏み留まれたのか、
またそれはどうしてなのか、等々、水商売にいたら考えたくないことで、
考えだしたら手が止まってしまうと思いますので、わたしのような読者が、
そこは代わりに考えようかなと思います。

頁190
最終的には帰っていただけたのですが、その日に決めました。
 もう一見で、知らないお一人さまの入店はお断りしようということです。常識と経験で考えて、紹介でも何でもない知らないバーにフラっと入れる方ってあまりふつうではありません。自分の命なんかも考えて、
「お一人さまはお断りする」
 と決めた瞬間でした。

東直己の『鈴蘭』で、メンヘラって言葉を平然と使う娘と、
悪気はないのは分かっているが、お父さんメンヘラって言葉は、
あまり好きじゃないな、というやりとりがあるの思い出しました。

ディスクユニオンから出てる本で、本もCDも、実は流通経路は同じで、
同じバンセンで届く、ということを、改めて思い出しました。
原石のブログと違い、編集者がブラッシュアップしてるわけで、
紙とWebで読み比べが出来るのも、贅沢な話だな、と思います。

あとまあふと思うのは、レコファンでもともと働いていて、
その後飲食業で実戦経験というか修行を積んで独立するわけですが、
その収入では開業資金貯まらんだろう、と思い、
その辺の苦労話もいっさいないので、お金持ちなのかな?とか、
お金持ちほど値切り方も上手ですし、しわい、始末ですし、
出版時点ではボサノヴァより韓国インディーズに傾倒してる描写から、
本書では抽象的に書かれる、ネットの誹謗中傷の中には、
その一文だけでもう、在日認定もあるんだろうな、と思いました。

あと、トイレ掃除の話もよかったし、ビール会社の話もよかったし、
広告代理店の人間の描写もよかったし、書き切れませんが、
以上です。