『女神(じょしん)』読了

めがみでなく、じょしん(にょしんでもない)と読ませるそうです。

女神(じょしん)

女神(じょしん)

久世光彦が、銀座の伝説の女性「むうちゃん*1」を演じて、一人称で、
その自死と死後の葬儀までを語る、なりきり小説です。
南伸坊が顔でやってるなりきりを、文章でやった、みたいな。
架空の人物の一人称で実在の人物を描写するなら、
私が唯一読んだ作者の小説、『陛下』がそうでしたが、
北一輝を描く)実在の人物の口を自分が借りるというのは、
ジャンルとしてありなんだろうか、と思いました。

遺族の了解がとれれば、各作家競作のアンソロジーで、
ゴーゴーバーで酒が吞めないのに若い娘のミニスカ鑑賞に来る川端康成とか、
アシを集めて明日のジョーをつきつけて涙ながらに、
「きみたちこのまんがのどこがおもしろいのか言ってみろ!」
と絶叫する手塚治虫、にそれぞれなりきってもらって、
その時の心境を描いてもらう別冊特集とか出来ないかなあ、
と思いました。それにしても、なぜ久世光彦は「むうちゃん」を選び、
「むうちゃん」と同化したかったのだろう、不思議です。
直木三十五とのエピソードが、鍵のような気がしました。
花影とか白洲本とかに、それあったかなあ。以上