『路ルウ』読了

路 (文春文庫)

路 (文春文庫)

読んだのはハードカバー。表紙写真が違います。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/1229
http://hon.bunshun.jp/mwimgs/9/7/-/img_973358343f58938ee96400ba399352e832385.jpg題字 赤松陽構造
装幀 大久保明
写真 ⒸWayne Fogden GettyImages

帯で隠れてますが、
自転車が道の真ん中に
停めてあります。
でもお話で活躍するのは、
台湾なので、勿論スクーターwww
ベトナムならカブだったでしょう。

これも、台湾カルチャーミーティング*1
のレジュメにあった、台湾を描いた日本語文学の一冊。

台湾新幹線を巡る、それぞれがそんなに交わらない、群像劇。
冒頭のシーンが、1999年、一度は欧州連合に敗れた、日本の台湾新幹線プロジェクトが、
逆転復活する場面を商社のオフィスから実況でお伝えしてますので、
「えっ、文學界連載小説なのに、企業ものなの?
 山本周五郎が大衆小説と純文学の垣根を越境してから半世紀むにゃむにゃ」
と思いましたが、特に沈まぬ太陽炎熱商人って感じの展開にはなりませんでした。
そうか、もう君はいないのか、Ⓒ城山、って感じのところはありました。

お話としては2007年の開業までで、その後の、中国新幹線埋めんなや事件、
インドネシア新幹線失注(中国受注)の三部作にはならなかったです。そういう意味で、
フォーラムにもあった、文化と政治を切り離す日本、なかなか切り離せない漢文化、
の問題を感じつつ読む読み方も出来ると思いました。例として、
各章冒頭に台湾新幹線を巡る各時点の新聞切り抜き記事が引用されているのですが、
途中まで産経発の微笑ましい記事が並んでいて、文春だしそうだよ、と思って読んでると、
朝日のネガティブな記事が飛びだし、そう来たか、と思うと、産経のネガティヴ記事と、
朝日のパブ記事が続いて、バランスバランスマンドクセ、と思いました。

頁31ABC(American Born Chinese)
頁39敦化南路トンファンナンルウ トンファナンルウ、の誤植見逃しと思います。トンファンじゃ、敦煌だ。文庫で修正されてばいいですが。
人名地名は慣用読み優先で、太魯閣はタロコ、本省人の陳威志はチェンウェイズー、
訛った國語読みのルビです。まあ捲舌音は、大陸でもズーズーしないは多数派じゃないだろ、
と勝手に思ってますが。

頁184の二等国民とか、どうなのかなあ。台湾好きな人は、脊髄反射したんじゃないですかね。
アカのねつ造とか、そんな感じで。
頁292ほかの、主人公の日本の恋人のワーカホリックのこころの風邪の部分は、
まあこの人の場合はこうなのであろう、あくまで個人、と思いました。人はひとりひとり違う。

主人公は台湾人のスクーター青年(そんなに簡単に寮が消失するのか?とか、
韓流ドラマでもそんなに簡単にメモ失くすだろうか、とか、赤外線通信のない時代、とか)
その上司は(ちょっと古いと思いますが)林森北路の、日本人向けスナックのおにゃのこ、
台生引き揚げ老人は、上記頁184の暴言、本省人青年は、アメリカ留学で日本人の子妊娠、
別れて帰国して産んで育てようとする同級生がいる、てなぐあいに、
それぞれ、日台の関係が個人レベルであるわけなのですが、わりと、日本が暴言、
台湾が許して抱擁、という展開が多い様に感じました。大陸ではありえない、たぶん。

頁343
(略)話によると、うちの両親が若い頃、アミ族の人たちが『夜のヒットスタジオ』っていう有名な日本の歌番組に出たことがあるんだって。その番組で歌と踊りを披露して、当時ちょっとした人気が出たらしいの。両親はそれを覚えてて」
「そうなんだ」

これ、検索しても何も出ませんでした。私同様、気になった人のつぶやきのみ。
なんなんでしょうねえ。以上