映画『カノン』(Kanon)劇場鑑賞


公式 http://kanon-movie.com/

以前ヤフーかなんか見てる時に広告が出て、それで知った映画ですが、
その後忘れてました。危なかった。公開終了直前の、おととい観ました。
ご当地映画ですので、富山県にゆかりのある人々が、ここしかやってないからと、
遠方からえっちらおっちら出てきて、五十数人のハコはいっぱい。
でも、各県一館ずつの上映が終わると、一週間の地方回りだけ。
その後の上映館は未定。クラウドファンディングがあるそうですが、
首相官邸の前でみたいに、上映館を模索すべきとも思いました。

金沢も舞台ですが、富山から金沢に行って成功した人ってことなのかな?
そういった富山僑を指す金沢弁の隠語をむかし2ちゃんで読みました。
ロケ地富山県石川県では上映館も多かったようですが、
見たらアル中映画で吃驚したことでしょう。2県だけ理解度が高まったかも。

かまぼこ屋の場面などでなつかしい的なうなづきがみられました。
鯛の形のかまぼこなんて、富山だけですよね。あとは何でも昆布締め、きときとの魚。

パンフが六百円と安かったので買いましたが、脚本家の日誌が読めてよかったです。
酔いがさめたらうちに帰ろう*1を見て、アル中映画を作ろうと思ったそうですが、

パンフ 脚本家日誌より
2013年 夏から冬
練り直したプロット片手に、雑賀監督と藤田P、ひたすら北陸の企業や自治体をまわる。が、なかなか良い感触が得られない。石川県、富山県といえばおいしい日本酒がたくさんある土地柄。そんなところへ「アルコール依存症」の企画をぶつけるなんて最初から無理があったのか?
(後略)

映画でも連続はビール中心です。親の顔色を窺って「お母さんごめんなさい」
を速攻叫ぶように育ってしまう長女に当たる場面はチューハイ、三女の隠れ酒はブラックニッカ。

パンフ 脚本家日誌より
2014年 春〜夏
三姉妹の母、美津子がなぜアルコールに溺れるようになったのか、そこに至るまでのドラマ作りがどうもうまくいかない。まだ日も高いうちからついつい、冷えたワインに手が伸びる。杯を重ねるうち、「誰にもぶつけようもない強い怒りをお酒で必死にごまかそうとしていた数年前の自分」という泥沼のような記憶がどんどんよみがえってくる。そうだ、美津子が陥っていたのもこの泥沼なのだ。美津子は私だ。そうやって書きあげた脚本第5稿に、監督と藤田P,無言で大きく頷く。

2015年初夏にホンは専門家の監修を受けたそうです。エンドロールに、英会話じゃないよ、
OA用品サプライヤーでもないよ、みたいな名前の団体と、所謂海の見える病院と、
モラハラの団体が出てました。でも嫁と義母の相剋は、もっといろいろあったと思います。
長女に強く影響が出てしまうのは分かりました。が、娘が母親に想いを伝える、
が終着点と最初に決っていたため、娘による母殺しのイニシエーションが、
入らなくなってしまったのが残念というか、不自然というか、不自然だからアル中家庭なのか、
専門家だって、この病気にはまだまだ分からないことが多い、にしてしまうのか、
等々思いました。ピアノは、ブルデュー文化資本の最たるものですので、
その意味で面白いと思いましたが、最初から曲がカノンに決ってたというのが…
私はカノンを聴くと韓国の大ヒット映画猟奇的な彼女を思い出してしまいますし、
他にもいろいろ連想される方は多いと思います。つまり手垢がついた曲。
それがタイトルにまでなってしまっているのが、やっぱ弱いな〜、と。

北海道新幹線はそこが曖昧なのですが、北陸新幹線は、飛行機と違って、
日本アルプスの気象状態に運航が左右されないメリットがあります。
この映画でも、時間通りの定刻運行が、モラハラ亭主からの救出劇に一役買っています。
そこはとてもよかったと思いました。しかし、ミムラは、ひたいを隠すと、
柴咲コウと区別がつかないと、私は、思います。ごめんなさいがくせになってしまう、
そんな長女に誰がしたって感じでした。サイコ亭主、言葉によるDV亭主は、
ほかのドラマや映画でもままあるでしょうから、特にないです。
アル中でも、腦がちぢんじゃうほうに振ったのが、珍しいのではないかと。
酔いがさめたらのサイバラ旦那は、ガンに掴まりましたし、
居酒屋兆治の失踪水商売は食道動脈瘤破裂、中島らもは階段から落ちて事故死。
まだネットでこの映画の広告が出てた頃は、カンチセックスしようの演技がすごい、
とのパブ記事があり、パブ記事だからと思っていましたが、
専門家の演技指導もあったそうで、ほんとにすごかった。
アルコール依存症だと誰も知らないところで一人で治そうとしても、無理だよ」
との三女の後から正論がありましたが、その、失敗する転地療法、
328日目の場面とか、328日目に幻覚見るかなあ、とか思いつつ、
お酒をやめた人たちの中にいないとダメだ、とやはり思わせる、
そこからのスリップ攻勢が、泣けました。私は他人と泣くポイントが違うのか。
三女は自分も隠れ酒をやって、ネットなどで調べたのか、「スリップ」という言葉を、
使っていました。新天地を探しては、憑かれたように一生懸命に何かやるのですが、
いつも一年が迎えられない。ここを見ていて、ちょっと涙が止まらなかったです。
(でもヒマワリはおかしいと思った。意味通らないのではないかと)

神奈川なんか港北ニュータウンの一館上映だけしかまだやってないわけで、
これで終わりは寂しいです。比嘉愛未ミムラ佐々木希というより、
カンチセックスしよう、多岐川裕美、古村比呂島田陽子、等々、
特に多岐川裕美の富山弁を聞きに、見ていい映画と思います。
結末も浄化される感じだし。富山弁、関西ローカルのテレビ番組が多いから、
若者の間では、関西弁に食われて、廃れかけてるそうですし。

考えることがありすぎて、書くのに一晩以上かかりました。以上
【後報】

本厚木

第七回北京国際映画祭 コンペティション部門出品決定!

http://atsugieiga.com/kanon_butaiaisatsu/


"北京国际电影节"の公式とweibo見たんですが、
コンペティション部門」がよく分かりませんでした。
http://www.bjiff.com/enHome/
http://www.weibo.com/bjiff?is_hot=1
「アウトオブコンペティション」なら、いくらでも邦画出てるので…
なんなんだろう。ブローカーに騙されてなきゃいいけど。

それはともかく、せっかくなのでリピートしました。
かまぼこ屋から花火の再飲酒あたりまで記憶がありません。うとうとしてた。
監督とPのトークショーで、Pが昭和音大の講師で、
かつて練馬から本厚木まで通勤していたとあり、そりゃよかったです。
下りなら上りほど混むまい。
三台のピアノは浜松から朝四時半出発で富山搬入したとの由。
この映画は北陸新幹線に光を当ててますが、
中部縦貫道開通ももっと前面に出してよかったと思いました。
http://www.pref.gifu.lg.jp/shakai-kiban/doro/kosoku-doro/11651/project_gaiyou4.html

質問コーナーがあるとは思いもよらず、
頭真っ白でしたが、数ある依存症のうち、
アル中を選んだのは、まあ、廉価でハマる貧者のアディクト、
処方箋の為医師を騙すスキルも、売人の人に目をつけられるリッチさも、
ギャンブルのタネ銭も、クレカの資格も、なんにもいらない?
焼酎4リットルの世界だから、かなあ、と思いましたが、
(それでおとなしい性格の母が豹変して生きられる 駄菓子菓子)
ウォルニッケ、コルサコフを選んだ理由はちょっと、知りたい気もしました。
離脱とか、手が震えるとかより、それを描いた。(幻聴はあります)

またキレイなオネーチャン勢揃いが見れてよかったです。
ほぼ満席。以上
(2017/4/2)

【後報】


これホントの金だそうですが、ホントかな。

2017/12/9に横浜のジャック&ベティで、一週間限定上映があり、
行ってきました。以下はその日の日記の抜粋です。
――――――――<ここから>―――――――――――――――――――
http://www.jackandbetty.net/cinema/detail/1494/
詳しくはこの日記の当該映画感想に追記しますが、ハマのジャック&ベティで、アル中映画『カノン』が再映されるので、なんでやと思って観に行ったら、中国の四つの映画祭に出て六部門受賞した「凱旋公演」だそうで、監督が舞台挨拶で、カタカナで覚えていた単語、ザーフーチュンナと呼ばれて画像が出たので受賞が分かったと言っていて、どんな意味だろ、カノンの中文タイトルと考えていいのかと思いましたが、「雑賀(杂贺)俊朗」の中国語読み"záhèjùnlǎng"を、日本語ネイティヴの耳で聴きとってカタカナで写したのだ、と後で合点しました。このように、あちらでは、日本人の名前を(韓国人や朝鮮人、そしておそらくベトナム人も)そのくにのことばで発音してくれようとせず、北京語で発音しますので、日本側の、あさっしんぶんなどが、片思いのようにあちらの人名を、北京語のカタカナにしてルビ振るのは、あんまり意味がないなあと。日本語のなかで読み書き喋るのなら、日本語の音読みで読めばそれでいいです。それだとピンイン読みする欧米人にも通じへんやん、という主張は、ピンインのルールを無視して英語訛りで読む連中と、ピンインをカタカナにあてはめてむりくり口に出す日本人とで、やっぱり合致しない部分が多々あるので("yan"とか)ダメで、その辺は邦人翻訳者世界が問題点と指針をまとめたサイトもどこかにあったかと。(たとえば、スポーツの国際試合で、例えば郝海东なら、登録されたピンインでハオハイドンと呼ぶか、日本語実況ではあくまで漢字を日本語読みしてかくかいとうと呼ぶか、とか、日本語読みなら"马明宇"みたいなウムラウト入りも不自然にならへんやろとか、チャン・ツィイーみたいな芸能人はどないすんねん、テレサ・テンはテンやのうてデンもしくは訒(トウ)やろとか)
――――――――<ここまで>―――――――――――――――――――
ウィキペディアと舞台挨拶によると、まず、
2017年4月に第七回北京国際映画祭に招かれ、
コンペティション部門「天壇賞」日本代表 公式入選。
鈴木保奈美は授賞式プレゼンターに抜擢。とのことで、次に、
2017年6月 第二十回上海国際映画祭に招かれ、
公式部門 日本映画週間 ゴールドクレイン賞(これは別かな?)というのの、
最優秀作品賞と、最優秀助演女優賞(鈴木保奈美)、審査員特別女優賞(佐々木希)受賞。
最優秀監督賞ノミネート、 という結果だったとか。で、
2017年9月(中国のアカデミー賞とかいう)第二六回金鶏百花映画祭 国際映画部門で、
最優秀賞(作品賞 監督賞 女優賞)三冠受賞。 んで、
2017年11月 シルクロード映画祭 日本映画週間に招待。
だそうです。キンケーヒャッカのインナーモンゴリア談義は省略。
h音のフフホト開催なので、タテに左から右に書くモンゴル文字があると。
最初の北京で見た人が芋づる式に招待してくれたそうで、
その辺が、いかにも、人、人、人の中国らしいかなと。

最初の北京で、一人っ子の永かった中国では、
三姉妹という設定は実感がないとか、
女性のアル中は中国にはいないとか、事前にあたまでっかちに、
言われたそうで、その言った記者が、鑑賞後、電話かけて来て、
日本語で「ヨカッタ、ヨカッタ」と言ったそうです。

日本では三姉妹も四姉妹も五つ子も、現実にそんないなくても、
物語として受け入れられてるので、そこは中国でもそうかと。
農村の鄢孩子とか、朝鮮族回族の村にいくと兄弟たくさんとか、
そういう話まで拡げなくても別にいい話で。
あと、スローガン"生男生女一样好"的な男女の軽重も農村部などにある国ですが、
旧家で女性の後継ぎが求められるという設定がいいので、わりとすんなり、
中国にも受け入れられる気がします。宋家の三姉妹。は違う話。
実子ではどうか知りませんが、保育園なんかだと、一人っ子育ちの保育士による、
ネグレクトが実に問題になってる国ですから、そこも重ね合わされるかと。
全然関係ないけど嘉峪関で嬰児の遺棄死体発見して公安当局に通報して、
ふだんでは絶対聞けないかた苦しい中国語の感謝ことばを受けた、
思い出があります。そこの記録見れば通報者のアホ日本人残ってるかと。
一緒に通報した二人はアカデミズムと貿易関係の半公的団体で、
それぞれ活躍して、私は自己憐憫にえんえん沈む人生、と。
アル中はどうか知りませんが、スポーツ的に他人をツブす飲み会の国ですし、
私ですら、断酒禁酒を意味する言葉が、"戒酒"であることくらいは知ってるので、
そこは思ったより、という気がします。あと、薬物とかはやはりあるだろうので。

で、あちらの評者に、中国映画はカンフーと歴史ものが上手い、
ハリウッドはSFがうまい、そしてだけど日本は、
オズの昔から、家族を描かせるとこれはお家芸的に上手い、
と言われたそうです。そう考えると、中国でも家族ものはありますし、
北京バイオリンはドラマか、見てないけど、それか、こころの湯とか、
家族ものあるんですけど、往々にして、再生でなく、喪失として、
描かれる気もします。北京五輪CG花火演出のチャン・イーモウの、
我らの祖先三部作(イタロ・カルヴィーノみたい)の初恋の来た道も、
その前のかな、生きる、でしたか、h音のフオジェ、活着も、
文革という断絶があって、相互信頼が崩壊したまま現在に至る。
そのチャン・イーモウが、息子の遺したものを大切に思う父が、
日本から雲南省まではるばる旅する映画、単騎千里を走るで、
高倉健を使ったのは必然なのかなあと思います。日本人を、
使いたかったのではないかと。家族像を描くにあたって。
君よ憤怒の河を渡れでも長途逃亡する主人公だったし、
高倉健はそういうイメージの超人に向いてたのかな、と。
ウォン・カーウァイじゃなくてジョン・ウーのジュイブー、マンハントも、
見なくてはいけないなと思ってます。話は飛びますが、
単騎千里を走るで海を見つめる高倉健の場面がありますが、
ワザとだと思いますが、この海がプロジェクターで写しただけの海で、
中国人の伝統的な感覚、海と黒は語源が同じで漢字の成り立ちも同じで、
海は黒いもので、得体の知れない不安感がある、と古代中国では、
考えられてきた、という、白川静なんかの説そのまんまの映像で、
現代の海洋国家中国、水産資源分捕り合戦参戦国家中国から見返すと、
ちょっと面白いと思ったりします。
ボブという名の猫と、
カノンが同時に
かかってるのも、
シュールだな、
と思います。
チラシも
クリアファイルも
たくさんあったので、
景気よく刷り増し
したのかも
しれないです。

久しぶりに見ると、
鈴木保奈美結構
かまぼこちゃんと
作ってんですね。

で、ポケット
ウイスキー
ブラックニッカかと
思ったら
ブロックナントカ
だった。

ビールは麒麟
でなく、
唐獅子ビール。

小道具さん
頑張った。

そして、カノンは、
中国語では、
たぶん曲同様、
"卡农"であろうと。

そして、中国人は、みんな、"东京爱情故事"が、一発変換で出るくらい、
今でも好きで、難忘で、だからこの映画を観た、という気がしないでもないです。

以上
(2017/12/10)