『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』読了

コンテクスト・オブ・ザ・デッド

コンテクスト・オブ・ザ・デッド

ほかの方のブログで見て、読もうかと思った本。
一ヶ月前にほかの方のブログで見てからですから、
一ヶ月の周回遅れです。

カバーモデル:一ノ瀬みか神宿
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E5%AE%BF
装丁:木庭貴信+岩元萌(オクターヴ
写真:杉山和行(講談社写真部)

作者に関しては、いろいろテレビで出てた時代、
ワンルームで筋トレしながら、食費を安くあげるため、
鳥むね肉で鶏ハム作って納豆とゴハンで食べてる姿が、
まず焼き付いています。その時はなんとも思いませんでしたが、
トリハムは、砂糖を使うので、中国人が、日本人は砂糖を使うから、
白髪が多いと言ってるのと、あと、二郎系でないラーメン屋コンサルが、
「砂糖とニンニクに頼った味付けはするな!」
と弟子に教える場面をテレビで見て、鶏ハム砂糖以外でなんとかならんか、
と思ったのを想起しました。豚の報いでもイエスでもない又吉さんとは、
直木賞芥川賞の仲かと思ってましたが、それは模造記憶で、
検索したら同時受賞でした。直木賞山東か。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%BD%E7%94%B0%E5%9C%AD%E4%BB%8B
いずれにせよ、初めて作者の小説は読みました。
神奈川県大和市で私鉄始発駅って、中央林間しかないやん、
そこの本屋って、あこしかないやん、という冒頭でした。

花まんこの『アイアムアヒーロー』へのインスパイアなのか、
上記が漫画業界あるあるで攻めたのに対し、小説業界文壇あるあるで攻め、
こっちは後発なだけにちゃんとオチは納得のいくものつけてやるよ、
的な小説を書きあげたと思います。最後の一行は、発表11月号ですが、
最初から決まっていた文句ではないかったかと。

シン・ゴジラ」や「ローガン」にも言えることですが、
ゾンビが何かフィクションで分かってる、学習してる社会に、
さてほんまにゾンビが出ましたよ、どうしますか的なハナシです。
宇宙船が立ち寄った星にタマゴがあってフェイスハガーが出たら、
貼りつかれた奴はエイリアンのタマゴ植えつけられてるから、
ころさなかん、的な。

複数の主人公並走で以下後報
【後報】複数の主人公並走で走る小説ですが、
作家、編集者、作家兼主婦(勝ち組)、作家志望の自費出版模索者、
JK(お約束)、役所のなまぽケースワーカー、というラインナップ見て、
出版以外のリーマンが出ないことに、いまリーマンをリアリティもって、
外部の人間が描くって、とても難しいのではないか、入退室システム、
ウェブの勤怠管理、電話会議、等々の職場への侵入度合が、社によって、
異なりすぎる。汎用性をもって、あるある、と受け入れられ難い。
そんな気がしました。
ケースワーカーは、途中からキャラが変わって、万能感が出ます。
変わる前の、ストレスから妻を求める頻度が急上昇、の描写がよかった。
JKのクラスメイトが、反原発示威行動に参加しない奴をハブって、
あまつさえ不参加がタカリねたになる場面、今の若い連中が、
そんなにシールズ左とも思えず、悩みました。
ラストだと、ネトウヨチックな思考はゾンビになりやすいとあって、
ウイングがブレたかなと思いました。
作家側からの文芸界の描写が、頁056等、
日本文藝家協会に入ると、同時に文藝美術国民健康保険組合にも加入出来、
所得にあわせて保険料が高くなる国民健康保険より、
定額毎月一律一万六千九百円の保険料で済むので大変お得、
といった夢のないシビアな描写である一方、
出版社社員の側は、出版不況にもかかわらず、頁102、
二十代後半社員が残業代込みで月七十万近い給料、とか、
ページ忘れましたが、三十代半ばの社員が年収千五百万、
とか、夢のような金銭の数字が登場し、夜討ち朝駆けの不摂生な生活、
とかの面は語られなかったように思います。今はもう健康ライフなのかな。

文壇バーとか元AV嬢が検索につきまとわれる話とか、細部に神は宿る、
的にいろいろ面白い話が続きながら、一方で、いま、
いったい誰がこんなもん(文芸誌連載の活字文章で、
単行本として出版)読むんだ?という自虐的な問いが、
頻繁に見え隠れして、辛いなあ、と思いました。
私は作者を、もっと純文学書いてるのかと思ってたので、
こんなエンタメ書けるなら、安吾が不連続書いたみたいに、
ミステリーに転身したほうが売れるのではないか、
と余計なインスピレーションを持ちました。余計です。で、
文壇バーで飲んでるのは、夏目漱石でなく、足を投げ出す、
あの写真のダザイにしてほしかったのですが、大人の事情でしょうか。

アイアムアヒーローほか、現代日本のゾンビカルチャーを、
随所に意識はしてるんだろうけれど、そこは分かったり、
分からなかったり。ネット時代の旗手の扇動家は、ひろゆきデモルか、
と思ったりもしました。それとはちょっと違う教祖に、
ラジオDJが戦いを挑む場面は、作者のWikipedia見て、
コサキンリスナーとあったので、オマージュがあるんだなと思いました。

私も考えてみれば、走るゾンビの映画は、ダリオ・アルジェントの、
何かを見ようと思って結局見ないままでした。

この小説のキーのひとつが、冨士霊園「文學者之墓」で、
写真貼ろうと思いましたが、誰でも使えるうまい写真は、
見つけられませんでした。蘭光生の別名の研究者のブログが上位にあった。

Yahoo!知恵袋 2011/2/2201:47:04
冨士霊園にお墓のある有名人と言ったら誰でしょう? - 日本文藝家協会が ...
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1356071548
以上です。
(2017/7/13)

【後報】
本書を読む契機を頂いたほかの方のブログは下記です。
了承いただけたので、トラバ。

http://d.hatena.ne.jp/suijun-hibisukusu/20170519/p1

あと、書くの忘れてましたが、白老で出会うミステリー作家は、
ひとつの作者の理想像ではないかと思いました。
西村京太郎は湯河原、内田康夫は軽井沢。東直己は知らない。
白老、行ってみたいです。下記の本で白老が登場する場面読んで、
それ以来、行ってみたい。人生の"向往"*1の一つです。
羽田圭介都築響一の本読んだのかなあ。

天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books)

天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books)

(2017/7/15)