『メキシコから来たペット―アメリカの「都市伝説」コレクション』読了

メキシコから来たペット―アメリカの「都市伝説」コレクション

メキシコから来たペット―アメリカの「都市伝説」コレクション

車に関するホラーを集めた文春文庫『死のドライブ 』所収の、
下記作品の元ねたですよ、と、訳者あとがきにあったので借りました。

『高速道路で絶対に停車するな』ジェフリー・アーチャー
"Never Stop on the Motorway" by Jeffrey Archer

読書感想 2017-08-04『死のドライブ 』(文春文庫)
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170804/1501850272

すごいこった体裁の本なんですが、装幀やデザインの人の名前を、
見つけられませんでした。造本者……中垣信夫 というのがそうなのかな。

アメリカの都市伝説を集めて、さらに分析や、原型遡行を試みるシリーズの、
三作目とのことで、最初が『消えるヒッチハイカー』
二作目が『チョーキングドーベルマン』日本だとヒッチハイクが一般的でないので、
タクシーの濡れた乗客ということになりましょうか。

消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ (ブルンヴァンの「都市伝説」コレクション)

消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ (ブルンヴァンの「都市伝説」コレクション)

ドーベルマンに何があったの?―アメリカの「新しい」都市伝説 (ブルヴァンの「都市伝説」コレクション)

ドーベルマンに何があったの?―アメリカの「新しい」都市伝説 (ブルヴァンの「都市伝説」コレクション)

何がどう原型遡行かというと、車のバンパーに指だけ残して振り落とされる人、
というフォークロアの場合、英国や大陸の馬車のエピソードまで遡れることを、
頁68で書いています。というか前書で書いていると書いています。1579年が、
確認出来る最古のテクストだとか。
ジェフリー・アーチャーの話の元ネタは頁60ですが、これは、前々書に詳しい、
とのことで、なんで野村芳夫が、こっちの本を挙げてたのか、分かりません。
The Mexican Pet: More

The Mexican Pet: More "New" Urban Legends and Some Old Favorites

頁156の、こういった噂話の場合、往々にして実名の企業や商品への、
FUD攻撃にそのままなる1ケースとして(他のケースは猫肉バーガー、
ミミズバーガー、キャベッジ・ナントカ。キッズの死亡証明とお悔やみの手紙etc.)
地方デパートを舞台にした誘拐未遂のデマが紹介されていて、
女性が連れの小さい娘を店内で見失い、デパート職員が館内を封鎖して、
探し回ると、間一髪、二人の婦人が子どもの髪を刈って、
別の服を着せて、連れ出そうとトイレで隙を伺っているのを発見する、
という話なのですが、この話は、どこのデパート、どの地方に飛んでも、
必ず犯人は二人の婦人で、内々に処理されたのかどうしたのか、
彼女たちは表沙汰にならずに消えてしまう、というのがミソで、
単独犯でもなく三人以上の複数犯でもない、二人。しかも同性、
というところがなんか心に引っ掛かりを残しています。

東直己の俺シリーズで、飲みっぱなしで常時腹がゆるい、
主人公が、ススキノど真ん中でウォッシュレットトイレを常設させた、
相手も二人の老婦人ですし、池上永一のレキオスで、
ポーポー屋の屋台を引いてるのも二人の老女。
くさか里樹ヘルプマン排泄編に出てくる菜園農家も老女二人。
詳しく書きませんが、私が早朝盛んにお会いする、
ゴミ拾いボラの方も二人の婦人。自分の讀んだり見たりする範囲だけで、
こんなにいますし、老姉妹というか魔女姉妹みたいな人なら、
カツ丼頼む定食屋にもいます。こんなにいてインカ帝国
だから記憶に残るのか、なんなのか。

この本には、収録された伝説に題材をとった小説も紹介されており、
いっぱいあるんだと思う反面、とても全部は掌握しきれないんだろうな、
と思うのが、『死のドライブ』にはやっぱり、いわくつきの中古車の話があり、
本書にはそれの元ネタと思しき話も入っているのですが、
小説まで紹介し切れてはいなかったので。

『中古車』H・ラッセル・ウエイクフィールド
"Used Car" by H. Russell Wakefield
『わたしの車に誰が坐ってたの?』アントニア・フレイザー
"Who's Been Sitting in My Car?" by Antonia Fraser

話を戻すと、装幀者が書いてないのは、あちらの古雑誌から、
切り抜いたようなイラストがちりばめてあるので、二次創作云々、
ということで名前を出してないのかもしれません。以上