『おたのしみ弁当 吉田健一未収録エッセイ』 (講談社文芸文庫) 読了

おいしいものの話かと思ったら、政治談議、文芸評論が多いです。
頁65や69の借金生活というか、前借生活のすすめは、
ご本人も親御さんのパワーを知悉しつつ素知らぬ顔で口をぬぐって、
書いてますので、まーこの人らしいなと思います。
親が宰相で貸さないわけないだろう、ただし、だからこっちも、
おかしなスジからは借りないし、ちゃんとキレイに清算する。
そこの責任はチャンと負ってますよん、みたいな。

頁36、戦中のラジオ放送、夜の十時半か十一時ごろに、一日の放送が終わる時、
「おやすみなさい」と言った後、ヘンデルハイドンの一節、
一分もない演奏が流れ、その音楽がとても美しく感じられた。
河上徹太郎も同じことを書いてゐる。というくだりはよかったです。

この人はこの人なので、マルクスの評伝の書評はかなり執拗でした。
党内のヘゲモニー争いとか、いろいろ。お父さんが新教に改宗してたとは、
知らなんだというか、どこかで聞いても忘れてました。

グレアム・グリーンリベリア旅行記は読んでみたいと思いました。

以上