- 作者: 島地勝彦,開高健
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1993/01/20
- メディア: 文庫
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- 作者: 開高健,島地勝彦
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2015/06/11
- メディア: 単行本
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1989年初版。
「サントリークオーター」22〜31号初出。
装幀/江島 任
集英社文庫は1993年なのでそれほど手を入れてないと思いますが、「CCCメディアハウス」という出版社から2015年に出た「蘇生版」は、きわどいジョークに対してそれなりの手を打ってる気がしないでもないです。未読ですが。カルチュア・コンビニエンス・クラブ・メディアハウスと略さず書いてしまうと、クラブとハウスの位置関係が不自然だからcccで決め打ちにしてるんでしょうか。フィガロやニューズウィーク日本版を出してる会社なんですね。知らない私が物知らずなのか。
CCCメディアハウス Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/CCC%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9
頁145
※We know a swinging suburban housewife who says there 's as much difference between husbands and lovers at night and day.
随所にこういう大きな余白と筆記体で読めない英文と悪魔の絵があるのですが、読める単語だけ拾い読みしても、本文とまるで関係ないので、飾りだと思います。
開高健の対談相手の方は存じ上げませんでしたが、1989年当時は週プレのびんわん編集長ということで、編集長というとエラいわけですが、開高健より一回り年下ですし、すごく体育会系というか編集と作家の力関係はこうあるべきというか、滅私奉公にもみえるへりくだりの会話テクが素晴らしいです。どもるくせもしくは吃音者で、それも武器にしてますが(そのへんやり手)、Wikipediaにはそういうことは書いてないです。現在はバーマンでもあるとか。なんという…
島地勝彦 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E5%9C%B0%E5%8B%9D%E5%BD%A6
巻頭の著者紹介ページ。島地さんの顔はよく写ってるので紗をかけさせていただきましたが、開高健が、森田まさのりの漫画かとおもうくらい真っ黒な顔で、ペーパーバックのような粗い印刷を差し置いても、なぜこんな写真使ったんだろうと思いました。眼鏡もしてへんし。なのでここに載せます。
頁18、サイボーグ009のベトナム編に出てくる(ストーリー以外の雑文で)カエルとサソリの故事が登場します。それがインドシナなんだよ。
頁26
島地 写真家の立木義浩さんから教わったばっかりのやつですけどそれ一つやってみましょうか。彼がアメリカ南部に取材にいったとき仕入れてきてくれたんです。
これ、何だと思います?
開高 ほう、何や?
島地 ブラツク・ジョークですけどね、黒人を井戸の中に投げこんで、上から覗きこんでいるKKKの団員が三人――っていうんですよ。⑪
開高 うーん、相手を見てやらな危険なジョークやなあ。
島地 これはアメリカ南部の話ですけど、カリフォルニアの方へ行くと、井戸へ投げこまれるのが黒人じゃなくて、メキシコ人になるんです。
巻末にジョークのインデックスあり。しかし、登場順の索引なので、まず引けません。意味なし。
頁43、日本語には、セックスの用語から転用されてる言葉が、元の意味も知らず江湖に使われる例があるとして、「独りよがり」「本腰を入れる」「抜き差しならぬ」が挙げられています。もうこれらの用語は、エチな意味にとたらそのしとがエチデシよ、みたいな。そこから、チャコとかチャンコを方言で女性器の意味に使う地方の話になり、フランク永井「夜霧に消えたチャコ」とかチャンコ鍋の広告の話になります。「チャコの海岸通り」は出ません。
頁48、食材としての仔牛のホーデンの話になり、開高健によると、アングロサクソンは仔牛のホーデンをマウンテン・オイスター、山の牡蠣と呼んでるとか。
河出のアンソロジーに出てきた話の一次原本なので読もうと思いましたが、谷沢栄一の人間通になるための百冊にも入っていて、谷沢的には、親友開高健の著書では、このタイプのものが、かろうじて許容出来る範疇だったのだろうかと邪推したりしました。
2018-08-19『ほろ酔い天国』 (ごきげん文藝) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180819/1534693167
2018-09-06『人間通』 (新潮選書) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180906/1536239922
十番勝負各勝負の前振りと、下の段の用語注釈が、ボーツー先生坪内祐三と福田雅也のスパの酔っぱらい書評で同様の文章を担当した石丸元章そっくりでしたが、ライターの文章はなべて似てくるのだろうか、それとも、週プレの系譜とかあるのか、島地師匠からの系譜なのか、とか、いろいろ妄想しました。
2015-11-07『革命的飲酒主義宣言 ノンストップ時評50選!』 (SPA!BOOKS)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20151107/1446900783
頁173で、島地サンが編集者を志すもととなったのは、牧逸馬の世界怪奇事件簿だったそうです。丹下左膳の林不忘でもメリケン・ジャックの谷謙次でもなく牧逸馬、とのこと。
- 作者: 牧逸馬
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- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/12/09
- メディア: 文庫
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頁147
島地 (略)さっそくBLTにバラバラと薬をまぶして……。
開高 ちょっと待て。BLTって何や?
島地 ベーコン・レタス・トマトのサンドウィッチのことですけど、そのBLTに薬をまぶして食べた。(以下略)
頁191
開高 勤勉な農民は、春になると田畑にこやしを撒く。しかし、もっと勤勉な農民は冬涸れの最中に、田畑にこやしをやるんだな。これが、寒肥。
島地 みんなが炬燵に入って暖まるときに働いている。
開高 寒肥っていうのは、科学的にも正しいんだ。冬の間に撒いたこやしが有機分に分解して、燐やら窒素になる。これが春になって効いてくるんだな。
頁289。痛風談義。島地氏によると、痛風はサフランの根で簡単に治るとのことですが、検索するとサフランとは全く別のイヌサフランという植物で、現在は抽出した薬剤があって、イヌサフラン自体は猛毒で誤食による中毒死亡例も多い危険な植物とのことでした。それと広津和郎さんの痛風エピソード開陳。
イヌサフラン Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8C%E3%82%B5%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3
コルヒチン Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%92%E3%83%81%E3%83%B3
対談の文章では今はなき?インペリアルとか、いい酒ばっか飲んでるのですが、それが写真だと、頁118、サントリードライのサンゴー缶で、モルツならまだしもですが、1989年というと、アサヒに負けじと各社ドライを投入していた時期で、この巨頭対談の写真にもサントリードライを写りこませようという営業の必死な努力が見て取れると思いました。この後サントリーは、モルツが定着しつつあった自社ビールの販路を、すべてサントリードライに切り替えるという致命的な失策愚策をします。現場がいくら頑張っても、というか、なぜドライで勝負しようとしたのか。そもそも、アサヒのスーパードライ落合信彦が何故ウケたか、いまだに誰も解明できない。21世紀、誰かがドライビールに関するジョークをひとつ付け加えてくれれば、ヨシかなと思います。
以上、2018/9/14に追記して再編集しました。