スパイク・リーの映画に、「実話!」と書いてあるその原作の和訳です。
翻訳協力 金子志宗 デザイン STUDIO PT.(中澤耕平,中西要介)+寺脇裕子 カバーイラスト 大川久志 編集 坂口亮太 監修 丸屋九兵衛
巻末に監修者の「解説にかえて」があります。
私はこの人知りませんで、生年月日未公開なので、覆面ライターかと思ってましたら、普通に顔出ししてる人でした。
音楽に詳しい人なので、映画では1972年だが実際は1978年なので、音楽はだいぶ違うはずだ、と書いています。あと、服も違うはずと(本文に、ベルボトムとか出て来ますけど、おサイケは変わってなかったでしたか)作者の名前が黒人らしくないので潜入捜査に有利だったという点で、「クラレンス・ジョンソン」「ドゥエイン・ジョーンズ」「リロイ・カーター」だと KKK は反応しなかっただろう、と書いてますが、それらの名前が黒人っぽいのかどうか知りません。説明してケロ的な。
監修者はレイシズム研究家だそうで、しかし監修者が嫌韓なりすましをカッコつきで書いてる部分は、即見破られると思いました。潜入捜査は無理です。頁196、KKKのグランド・ウィザード(大魔法使い)という地位の、デイヴィッド・デュークという、のちにルイジアナ州から共和党で下院議員に当選する人物が、テレビで黒人教授と公開ディベートして、猫が鼠をいたぶるように冷静に冷笑しつつ相手を追い詰め、幾ら相手が実証してもそれを不確かなものにしてしまい、相手が面白いように動揺し、感情的になり、それがために言ってることより言ってる顔つきや声のトーンだけが印象に残り、それらの内容を一個一個微笑みながら打ち崩していくさまが、具体的にはなんにも書かれてないんですが、むかし私が見た、たかじんのそこまで言って委員会でざこば師匠が南京アトロシティーねたで、人格がぶっ壊されてゆくような感じだったんだろうなあと思いました。監修の人も、そういう場に出るんでしょうか。大変なことだ。
そういう激しいディベートの映画は、ホロコーストに関して、もう幾つも公開されてますが、未見です。
私は読んでいて、そんな大物が本場ルイジアナからコロラドに到着した時、出迎えのコロラドKKKメンバーと、まずデニーズで食事するのが面白かったです。アメリカにもデニーズあるんだ、と。そりゃあるか。検索したら、「日本と違ってジャンク」というまとめサイトがまず出ましたが、そうなのかな。
映画でも白人と黒人の英語の発音の違いについて語る個所がありますが、頁145、原作では、その特徴("are"が"are-uh"になる)は南部白人の喋り方にも共通するので、作者がワザと毎回その喋り方をして、相手に不信感を抱かせない電話ゲームをしてたとあります。これは映画にすると不自然だったのか、映画にはないです。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
監修者が不満をもらしていた、黒人扇動者(作者の言いかたをすると、公民権活動家ですので、それはそれでいい)の集会への潜入で、ドイツ白人の女性と知り合う場面も、映画にはないです。ないけれども、なんで監修者がこれ要らないと思うのか、分かりませんでした。マイノリティー集会に来る育ちのいいねんねのマジョリティーのお嬢さんがひっかけられるとか、陳腐ですが現実によくあると思うのですが。
頁39
このクラブには白人たちも少数いた。黒人になりたい「ワナビー」、またの名をウィガーズ(white niggers)だ。
原作では、ガンで逝去した作者の最初の妻とのその時代の話は、出ません。再婚した同級生の現在の妻を忖度したのか。映画だと、黒人大学の自治会リーダー(一戸建てに独居でマイカー持ち)と付き合うとなっていました。そのへんはまあ、深く考えなくていいと思います。
原作では、映画でもたびたび登場するプロパガンダ映画「国民の創世」が、映画より感情を抜いた形でとりあげられています。公開当時それなりに評価された映画で、完全なプロパガンダ映画ではないという位置づけ。で、その邦訳が、「国民」を「國民」と書いていて、なんちゅうか本中華と思いました。白人が真の白人になるために読む、「白人読本」という本も登場します。これは映画には出なかったかな。映画ではFBIに協力を断られてますが、原作では、軍に協力して名簿を閲覧させ、北米航空宇宙防衛司令部、ノーラッド"NORAD"に会員がいることが発覚し、そいつは僻地の閑職へ追いやられます。頁217。これは映画で、あったかな。FBIに断られるところ、半分寝てたので。
「國民の創世」以外に、原作では頁134映画「ミシシッピー・バーニング」が出ます。見たはずですが、思い出せない。ジョン・プアマンの「ミッシング」は思い出せるのに。
映画の主人公は署の求人貼紙見ていきなり応募しますが、原作では、大学生の時に実習生からキャリアをスタートさせています。コロラド州には、学生を続けながらトライする制度があるんだなと。その時の面接で、映画であったか覚えてないのですが、女たらしか聞かれる場面があります。ここは面白かった。もちろんメインの質問は、黒人と言えば犯罪者としか接していない警官👮社会で、黒人と言えばそういう連中しか思いつかない人々の視線や偏見に、耐えられうるか、です。もめごとをおこさなければかかわりがないので、善良な人たちとは知り合う機会がないという。
作者はドラッグを一切やったことがなくて、まあやったことがあったとしても、潜入捜査で誘われた場合、どう断わるかについて、本書は頁35で、受け取らずに「ありがとう、でも今はそういう気分じゃない」と言え、となっています。警察のマニュアル。で、コロラドといえば大麻合法化。よっぽどイリーガルな「ブツ」(笑)がまぜものヒドくて、治療に税金大量投入だったのかと勝手に推測します。
大麻解禁から5年、コロラドに生まれた新たなビジネス:朝日新聞GLOBE+
米デンバー市長、大麻税収50億円を発表 合法化へ団結呼びかけ | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
大麻完全合法化の米コロラド州、救急外来数急増 食用に警鐘 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
頁155に実際の潜入捜査官、チャックとデュークの写真が載ってますが、デュークはともかく、ほかの地元メンバーを見ると、チャックがいかに強力にメンバー勧誘されたか、如何にこういう人材がKKKはのどから手が出るほど欲しかったか、分かります。マッチョでハンサムな白人ナイスガイ。映画だとユダヤ人で、それとは関係なく、ちょっとすねた顔ですが、原作だと、満面のストライク白人。頁13、電話のやり取りの後、最初に逢う地元KKKの人間が、フー・マンチューひげのヒッピー風とKKK側から説明があり、眼鏡👓のちんちくり…の人とかもいて、映画もその辺は活写してますが、組織ってムズいなあと思いました。フー・マンチューのヒッピーの信条がそれか。以上