「YUKIGUNI ゆきぐに」劇場鑑賞

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ドキュメンタリー映画「YUKIGUNI」 | 2019年 ポレポレ東中野、アップリンク渋谷ほか全国順次公開中

http://atsuginoeigakan-kiki.com/movies/yukiguni/

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古びない「美しさ」「愛おしさ」とは何か。 戦後日本が生んだ傑作カクテル「雪国」。その一杯のカクテルがもたらした奇跡の物語。

「雪国」は勿論いいカクテルでしょうけれど、九十歳越えてなお現役で店に立ち続けるってのが、まず度肝を抜くというか、そのお人柄を見るだけで87分があっという間に過ぎるというか、そんな映画です。山形といえば国際ドキュメンタリー映画祭で知られるお国柄ですので、山形県酒田市のこの素材が山形で映像記録にならなかったらウソだろ、ということで。

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いでは堂

若い頃はそれなりだったという主人公計一うじが、圭角がとれてまるくなってひょうひょうと生きてゆき、接客業をこなすさまを見るのが、とてもいいです。それだけでじゅうぶんな映画じゃいかな。ちっさな平底鍋というかフライパンであんかけタマゴ作って(カニタマなら芙蓉だがこれはたぶんただの中華風あんかけタマゴ焼きなので芙蓉)ラーメンドンブリでおいしく頂く開店前のシーンがいちばん好きです。天津飯とか天津麺にはしてない気がする。炭水化物抜きで、タマゴだけ食べてるんじゃいかな。

夜七時から十時半までの三時間半の営業ということで、よく見ると、昼の部の喫茶部を息子さんがやってるようで、映画はなんにも言わないけれど、映像は言葉以上に雄弁なので、親子二人揃って店に立つバースタイルでなく、昼は息子さん夜はお祖父さんで別々にやるかたちになるまでの経緯とか試行錯誤とか、今後とかについて、ただ見るだけなのに、さまざまに思いを馳せながら見ることになります。

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井山計一さん 大正15 年生まれ』 二十歳の時に終戦を迎える』 戦後の物が不足した時代に様々な仕事に従事、故郷の山形県では、いち早くプロのダンス教師として開業』 その後、仙台へバーテンダー修行へ』戦後直後の日本の酒場風景、混沌とした時代の中で腕を磨いた』 一九五九年壽屋サントリーの前進)主催の 全日本ホーム・カクテル・コンクールにて雪国を出品グランプリ受賞』 八十一年全国バーテンダー技能コンクールにて創作カクテル部門にて優勝』 九十二歳、現役bartenderとして故郷の酒田市にあるケルンでカクテルを作りつづけている』

✖前進 ◯前身

免許をとらなかったそうで、自転車に乗る場面があります。そういえば、台湾の外省人兵士のための老人ホーム「榮民之家」を描いた記録映画「老兵挽歌」にも、百歳を超えた老人がホーム内で自転車に乗る場面があります。申告の生年と実際に生まれた年が違うのかもと思いながら台湾のほうは見ましたが…

『老兵挽歌 〜異郷に生きる〜』劇場鑑賞 - Stantsiya_Iriya

健康法の、温泉と足つぼマッサージはいいな~と思いましたが、趣味のパチンコで、少し勝って、景品のお菓子は曽孫にあげる、という場面はフィクションな気がします。少し勝つパチンコなんて今あるのか。酒田にはまだ釘の台がある、わけでもないでしょうに。1円パチンコかな。

で、飲めないそうです。指でなめて味を決めるとか。切り絵画家で個人の成田一徹さんの思い出が登場し、成田一徹は、飲めるけれども、酒にはこだわらず、ジンリッキーハイボールくらいで、バーマンなど、店での会話を楽しみに来てたんだとか。

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BARは人なり。  ある評論家が残した格言』  この言葉を体現するように、井山計一さんのカクテルを飲み話を聞くために全国からカクテルファンが集う』 戦後日本が生んだスタンダードカクテルの金字塔と呼ばれる雪国の誕生秘話』 カクテルがもたらす奇跡のようなエピソードの数々』  カクテル誕生から60 年、激動の時代を得ても古びない“美しさ”愛おしさ”をめぐる珠玉の物語』

✖得ても ◯経ても

成田一徹さんは以前にも何かで読んでるのですが、検索してもいまいち曖昧です。下記のどれかのはず。

『今宵もウイスキー』 (新潮文庫)読了 - Stantsiya_Iriya

『銀座 名バーテンダー物語』 (中公文庫)読了 - Stantsiya_Iriya

『ススキノハードボイルドナイト』読了 - Stantsiya_Iriya

cocktailrecipe.suntory.co.jp

上記サントリー公式と、上の画像の雪国はやっぱ印象が違います。グリーン・チェリーでなく、ミントチェリーですし。砂糖も、グラスのふちの内側だと味が変わってしまうので、外側にだけくっつくよう、レモンは外側にだけ塗って外側にだけまぶすんだとか。んで、グラニュー糖そのまんまだと、もったりしたボタ雪みたいな感じなので、いっかいミキサーで粉砕して、さらさらのこなゆき、ささめ雪のイメージに仕上げるんだとか。

明治屋 ミントチェリー 170g

明治屋 ミントチェリー 170g

 

 BGMは下記のとおりズージャなのですが、これがほんと、合ってるというか、次々に創作カクテルを作り続ける計一うじの人生が、ジャズの即興性と非常にあうです。背が高いそうなのですが、まるで感じさせません。

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プチシャトー 1981年に第8回全国バーテンダー技能競技大会全国区の創作部門にて優勝したカクテル ボサノヴァ・デイジー 1980年に第一回サントリートロピカルカクテルコンテスト東北大会金賞を受賞した一杯 おばこ 今作の記念に作られたカクテル 「おばこ」とは出羽地方の方言で「若い女性」をさす言葉 青いリンゴ 野口五郎さんのヒット曲「青いリンゴ」にちなんで創作したカクテル グラスの底に沈む飴玉はまるで宝石 YUKIGUNIの、どこまでも酔いしれる魅力――劇中音楽はJAZZ

しかしこのサントリーの賞も「ノーメル賞」というくだらない駄洒落で、1959年ということは、開高健山口瞳か、どっちが飛ばした駄洒落でしょうかという。

ノーメル賞って何? - 創作酒に贈られる賞じゃないの。 - Yahoo!知恵袋

上記知恵袋は、ベストアンサー以外に注目。酒田の大火が出るのですが、郷土の大事件という以外、この映画での意味合い忘れました。ああそうか、その後現在の三階建てに店を建て直すのか。三階が住居で地階が店舗。入院した時以外は子ども世帯と同居せず、三階に上がって休む。市街の空撮は絶対ドローン。なにがなくとも、ドローン。最初ブルーレイかと思ったのですが、特にことわりがきはなく、公式で見ると「Blu-ray DCP」とあるので、2Kなのかな。

www2.nhk.or.jp

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Narration : 小林薫 (俳優) TVドラマにも数多く出演。アカデミー賞優秀主演男優賞俳優。『東京タワーお棺と僕と、時々、オトン』では同最優秀主演男優賞を受賞。

✖お棺 ◯オカン

小林薫は、昔『キツい奴ら』を見てたです。最近は深夜食堂だそうですが、あんま見てない。この映画は、東北振興でもあるので、秋田のにかほのバーと、仙台のバーも出ます。素晴らしい。やー仙台行きたいな。ベルマーレ戦近いはず。

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以上

【後報】

ある山形県人にこの店の話をしたところ、知らなかったのが口惜しかったようで、すぐさまスマホで検索して、「閉店してますよ」と冷たくぼそっと言われたのですが、後で自分で検索し直してみると、彼は、昼の部の閉店時間、もしくは二十二時半という割とバーにしては早い時間の閉店を、違う意味の閉店と勘違いしてることが分かりました。う~ん、やっぱり、誰にでも欠点はあるものですが、この程度で高級外車を乗り回している彼が結婚出来ないというのも、ツラい。まあ高級外車に乗っていても給料は私と同じという時点で、本人の将来性を忖度されているのかもしれませんが。忖度の用法まつがい。(2019/8/4)